TFAお題小説1 | ナノ





01.初恋気分(メガププ)



例えば一人で部屋にいる時や仲間達と何気無い談笑をしている時。
特定の誰かの顔が心の中に思い浮かぶなんて今までの自分には無いことだったからとても不思議だった。
どうしたらいいのかまるでわからない。
何故こんなに気になって仕方ないのか。お互い憎み憎まれる因縁めいた間柄なのに、湧き上がる感情は憎悪ではなく、もっと別の感情だった。
膝に座らせながら抱き締める小さな恋人は大きな恋人の逞しい腕に抱かれながら、自身も胸に頬を寄せオプティックの光を消している。
誰も訪れる者がいない秘密の場所で秘密の逢瀬。

「それが分からないからお前はここへ一人で来るのか?元エリートガードにしては随分と己の心に鈍いではないかぁ」
「…否定出来ないのが悔しいな。でもそんな風に言わなくてもいいだろう?それを言うならメガトロン、お前こそ物好きだ」
「物好きィ?何がだ?」
「破壊大帝ともあろうメガトロン様が、私みたいなつまらないオートボットに夢中になるなんて笑えない」
「…ほう?言うでないかい…まぁ確かに我は宇宙一の物好きかも知れぬわ…何故我はよりによって貴様に惚れてしまったのか知っているなら教えてくれ」
「ほら、やっぱり」
「教えてくれぬのかァ?」
「そう簡単に教えたくない」
「お前のどこがつまらぬ。なかなかに手強いぞ。まったくこれなら娼婦の方がやりやすいわ」
「…言ったな?」

クスクス笑う愛しくも生意気に挑発をするオプティマスを黙らせるように唇を塞ぐ。
一方のオプティマスは嫌がるでもなく微笑みながら受け入れた。最初は子供のようなお遊びの触れ合いから次第に啄ばむように貪り合うキスへと発展するのにそう時間はかからない。
燃え上がるような情熱的の…そんな、まるでどこかの恋唄のような気分は思った程悪くない。
ふわふわと甘ったるい菓子のようなこの感情はお互い初めてだから戸惑うばかりでつまづく事もあるけれど。
しかも二人の間に立ちはだかる壁はあまりにも高過ぎて見上げるのも馬鹿馬鹿しいぐらいだ。
その高さは何百万年分の途方も無い高さだけど。
それでも恋をしてはならないと一体誰が決めたのだ?
自由が最大の尊厳なら恋をするのも尊い自由。
高そうに見える壁だってこの力ですぐに壊して見せよう。
破壊大帝は最初に告白をした時に唖然とするオプティマスへ高らかにそう宣言した。
しかも花束を差し出しながら自信満々に。
オプティマスはしばらく花束とメガトロンを交互に見ていたが、やがてブフ!っと吹き出し腹を抱えて爆笑した。
笑われたメガトロンは顔を真っ赤にしながら一世一代の告白を笑うでないわァ!などと叫んだ。

「…あの時は本当に嬉しかったよ。まさかお前が…て。私なんか眼中に無いと思っていたから」
「オプティマス、お前はどうしても己を卑下したいようだが我は一度もつまらないなど思ったことは無いぞ?少しは自分に自信を持て。お前はどんな強敵が現れようとも立ち向かう勇猛果敢な戦士だが、あまりにも恋に臆病すぎる」
「ん…その通りだ。自分で自分がよく分からない。お前に愛されてこんなに幸せなのに…あはは。そんな深刻に考え過ぎるのも私の悪い癖だ」
「ならばいつまでも初恋のような初心さでいればよい。黙って我を受け入れ、身悶えろ。可愛いぞ?なぁオプティマス…」
「ば、バカだろうお前…照れるんだが…はああーーなんでいつもそんな恥ずかしい事を平気で………でも」
「んん?」
「好きだよ」
「………」
「…おーい急に固まるなメガトロン!」

爆笑しながらオプティマスは氷像の如く時を止めた恋人へ思いきり抱き付いた。

(終)

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