TFAお題小説4. | ナノ





巷で噂の軽い男(ウルマグとメガ様)



実に意外だったが、彼は今まで恋人がおらず当然恋人らしいデートもしたことが無いと言う。
あの破壊大帝がまさか独り身街道を爆進中だったとは。ウルトラマグナスは意外過ぎてむしろメガトロンを哀れにすら思った。

「えーと。だったら愛人とかはいなかったのか?」
「セフレは腐る程いたが、所詮性欲処理だけの間柄だったな。だがそれももう飽きた。今我が求めるのはロマンチックな恋がしたいのだ」
「ほう」

ふー…と、かったるそうに煙草の煙を吐き出すメガトロンを、同じく煙草を吸っているウルトラマグナスは心底呆れた表情で見ていた。
今時の宇宙征服を企む悪の親玉はロマンチックな恋がしたいのか。おかしいな。確か彼は冷酷なディセプティコンのはずだったが、あれは欺瞞だったのだろうか。

(ディセプティコンは欺瞞の民とも言われているけどなぁ…)

欺瞞。ウソ。冷酷な性格とは裏腹に、実は寂しがり屋だったとか?
実際にメガトロンと出会うまでは彼の本性など分かるはずもないのだから、ウルトラマグナスにとってはどうでもいい事実なのだけど。

「最近、日本のとあるバンドにハマっていてな」
「お前が?人間の歌を聞くなんて本当に意外だな。どんなバンドなんだ?」
「サザ◯オールスターズだ」
「あぁーー…彼らの歌なら私もよく聞くよ。いい歌だよな」
「そうか!そう思うだろう!特にマン◯ーのGスポットという歌が好きで、カラオケでよく歌うぞ」
「……………あっそ。若い連中の前で歌うなよ恥ずかしいから」
「あっそって貴様こそどうなのだ。いい加減伴侶を得ようと思わぬのか?」
「どこぞの誰かさんがクーデターを起こしたせいで何百万年も働き詰めだ。そんな暇など無かったよ。おかげで結婚適齢期を華麗に逃してしまった」
「あー…無駄に年喰っただけか」
「お互い様だ。だいたい誰のせいだと思っている?お前こそどうなのだ?いないのか?」
「我にそんな女がいると思うか?」
「いいや、まったく。いたらいたで凄まじくムカつくな」
「…破壊大帝が結婚したらいかんという法律など無いだろうが」
「確かに無いが、普通にリア充過ぎて殺意すら覚えるぞ。オートボット総司令官として全力で阻止してくれる」
「ふははは!怖いなおっさんの嫉妬とやらは!」
「黙れ」

ふはぁー……

腹の底から疲れを吐き出すように、煙を吐き出した。
もう少しで煙草が切れそうだ。予備を探して、残りがもう無いことに気付いて落胆する。

「どうした?」
「煙草が無い。メガトロン、ストックは無いか?」
「悪いが我ももうこの一本しかない。予備はネメシスだ。残念だったな」
「………はぁ」

ウルトラマグナスは酷く残念そうに排気した。日頃蓄積されたストレスを緩和出来る貴重な嗜好品だったのに。
戦時中の輸出制限のせいで、ウルトラマグナスですら簡単に煙草を手に入れることが出来ない。

(戦争などさっさと終わらせねばな)

隣で飄々と美味そうに煙草を吸うメガトロンを恨めしげに見た。
今、この場で諸悪の根源たるメガトロンを仕留めれば一切の憂いなど無くなるはずだが、仮にもオートボットの博愛精神を貫きたいウルトラマグナスは、卑怯な真似などしたくない。
…出来ない、のだ。
こんな奴でもかつては友だったのだから。
苛立ちを抑えつつ吸えなくなった煙草のカスを握り潰した。

「それで、何で恋人など欲しいと思ったのだ?」
「ん?あーー…だからな。サザ◯の歌を聞いている内にな。渚のメモリー的なロマンチックな甘酸っぱい思い出を我も味わいたいと思ったのよ。例えば星空の下で、波打ち際を恋人と手を繋いで歩く。いいだろ?」
「貴様にしてはささやかな望みだな。それぐらいならオールスパークなぞ必要ないだろう。さっさと伴侶を見つけてさっさと戦争終わらせないか?」
「たわけ。それが出来れば苦労せぬわ」
「破壊大帝の貴様が伴侶一人見つけられないとは。何とも情けない話だな」
「ふん。お互い様だ」
「……まあ確かに。時々何やってるんだろうなぁと思う時はあるがね」
「奇遇だな。我もだ」
「奇遇だね。ひょっとして私達は気が合うのかもな」

変わってしまったことはたくさんあるが、根本的な部分は何も変わっていないのかもしれない。
ククク…メガトロンとウルトラマグナスは可笑しそうに笑う。

「仕方ない。明日は最終決戦だが、その前に手ぇ繋いで波打ち際を歩くか」
「遠慮する。明日は貴様の軍と決戦だからそろそろ帰って準備するよ。じゃあ、ーーーーーまた明日」
「おう、また明日。死んでも恨むなよ?」
「それもお互い様だろう?」

どうせ戦争なのだ。後悔など今更。
ふっと苦笑しながらウルトラマグナスはかつての友の前から立ち去った。


(終)

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