TF 100題 | ナノ





0026:たっぷり甘やかしてあげる(ロクププ)



その男は邪な笑みを常に浮かべながら、常に何かを企んでいるような含みを交える口調でこちらに話し掛ける。
揶揄い。侮蔑。あるいは金の為に。己が追う獲物が果たして刈り取るに相応しいかどうかを、飄々と振る舞いつつもオプティックの奥底でギラギラと睨め付ける。
そんな男だからこそ警戒心はカケラでも持ち合わせて損は無いだろう。
この間、スィンドルに笑いながらそう忠告されたとロックダウンに言うと、オイルを飲んでいた手がぴたりと止まった。
「あの詐欺野郎にだけは言われたくねぇぜ」
「実に確信した口調で言われたが」
「あんの野郎…今度会ったら覚えてろ」
苦虫を噛み潰したような表情へ変化するロックダウンの空になったグラスに、まあまあと慰めるように追加のオイルを注いでやった。
ありがとよ、と軽く礼を言って一気に煽る。
グラスから口を離したロックダウンは、テーブルを挟んで座っているオプティマスを一瞥してからおい、と声を上げた。
「ん?何だ?」
「隣。座れよ」
「君の隣に?そのソファーは狭いし窮屈だろう?」
「問題ねぇよ。いいから隣来いよ、なんか物寂しいだろー?せっかく宅飲みに来たってのに」
「…絶対狭いと思うんだが…まあそこまで言うなら」
腰を上げてロックダウンに近付いたオプティマスは、見るからに狭い空きスペースへと腰を降ろそうとしたその時、突然腰を力強く掴まれた。
わあ!?っと驚いたのも束の間、軽々と持ち上げられたオプティマスはロックダウンの膝の上へと強引に座らされてしまった。
直ぐに見上げればニヤニヤと笑うロックダウンと視線が合う。
「ま、待ってくれ、さすがにこれは恥ずかしいから…!」
「何で。サイズ的にも膝抱っこが丁度いいぞ?相変わらず可愛い尻してんなぁアンタ」
「こ、こら!尻を触るな尻を!」
「その初心な反応もいいねぇ」
「ギャー!太もも撫でるなぁ!」
完全に酔っ払ったオヤジと化したロックダウンのセクハラが止まらない。
ブルブルと怒りに震えるが、拳を握り締めても殴ろうとしないのは好意の表れだからだろうか。
にしても、顎を掴まれて押し返されてはいるが、まあ可愛い抵抗だ。
「分かった分かった、もうセクハラは止めるから飲み直そうぜ」
「じゃあ、もう膝から降りてもいいか?」
「んー、ダメだ」
「…いい大人の癖に」
「俺からみりゃあアンタは生娘に見えるぜ?」
「バカなことを真顔で言うな!」
「悪かったって。ほれ、グラスを取りなよ。改めて乾杯しようぜ」
「ハァ…何に対しての乾杯なんだ?」
「俺とアンタの出会いに」
「………乾杯」
やはり、この男は酔っている。
半ば諦めの心境で渡されたグラスを手に取ると、ロックダウンのグラスにかち当てた。
カチンと鳴らされたグラスの音を聞いたロックダウンは上機嫌でオプティマスを傍に抱き寄せた。

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