TF 100題 | ナノ





0004:期待を込めた爆弾発言(センププ)



これは夢か?

それとも天国?

あのオプティマスが太陽のような笑顔でセンチネルを見つめながら早く、こっちだと手を振ってしきりに誘っている。
茫然としながら周りを見渡した。
青い空。白い雲。足が踏んでいる柔らかな茶色の粒子は確か海の浜辺にある砂によく似ていて…ん?

(いや待て。ひょっとしてここは地球か?俺は今セイバートロン星にいるはずだろ!?)

まさか瞬間移動でも会得したのか?いや待てひょっとしたら寝ボケて知らぬ間にスペースブリッジを起動してしまったのかもしれない。
いやいやいや待て。仮にそうだとしても何故オプティマスが笑顔で手招きなどしているのかが分からない。
頭を抱えるセンチネルは、ちらりとオプティマスの方へ振り返る。
彼は変わらず魅力的な微笑みをセンチネルだけに向けていた。思わずムラッと来る。
下心とやらはこんな非現実的な状況でも湧き上がるものらしい。センチネルは今すぐ駆け出したくなるが、残る理性でぐっと踏み止まった。
それを見たオプティマスは悲しそうな顔をする。

「何なんだこれ…おい、オプティマス?」
「センチネル、来てくれないのか?私はずっと君を待っていたのに…」

寂しそうに俯く。
微かに赤く染まる頬。うなじから滲み出る色気を見たセンチネルの理性の壁が、音を立ててヒビ割れる。

「えっ。ちょ、それはどういう」
「ほら早く…センチネル、来て…?」

ぷつん。

音を立てて理性は崩壊した。
センチネルは口の端からだらしなく涎オイルを垂らしながらデレ顏で砂を蹴って駆け出した。

(これは絶対誘ってんだろ!そーだなオプティマス!?くそ、この可愛い奴め!お望み通りヒィヒィ言わせてやるぜ!(はぁと))

幸福感に包まれながら、向かうは両手を広げて待っていてくれる愛しのオプティマスの下へ。
あと数メートルに迫った時、踏み下ろした右足が唐突に砂にめり込んだ。

ズボッ!!

「あ?」

右足が抜けねぇと不思議に思う暇も無く、センチネルの体が一瞬で消えた。気が付けば大量の砂や悲鳴と共に巨大な穴の中に落ちてしまっていた。
体中が痛いし頭から砂を被って気持ち悪いことこの上ない。ブチ切れる寸前でセンチネルは怒鳴った。

「いってぇぇ!?な、何なんだよこれは!?オプティマス、おい!」
「やーい引っ掛かった引っ掛かったー!」
「センチネルさんちょっと単純過ぎです!」
「でもおかげで大成功しました!」
「お前ら…バンブルビーと双子共か?な、何でお前らが!てか、これお前らの仕業だったのか!?この俺にこんな真似してタダで済むと思っているのか!?全員軍法会議に引きずり出してやる!」
「申し訳ありません、サー!」
「でもこれは仕方ないんです、サー!」
「何が仕方ないんだクソガキ共!?」
「いや、待ってくれセンチネル。ほらバンブルビー、あの看板を掲げてくれ」
「分かったよオプティマス!センチネル、これ見てー」
「ああ!?」

オプティマスに促されたバンブルビーが掲げた看板に何やら赤い文字が書かれている。
オプティックをズームしてよく見てみると、『ドッキリ大成功☆』
…何だそれは。ドッキリって何だ。この怒りを誰にぶつければいいのだ。
センチネルはオプティマスの方を見上げた。
オプティマスは苦笑しながらごめんな?と言いたげにウインクをする。

「それは可愛い。可愛いから許す。んなわけねーだろーが!誰が許すか!上司のお前が責任取りやがれー!」

絶叫したセンチネルは砂に埋れた体を勢いよく起こそうと跳ね起きた。



が、何故が視界がホワイトアウトする。


「せ、センチネル…!?」

そして、驚くようなオプティマスを床に押し倒している自分に気が付いた。
背後にはくたびれた固いソファ。蹴っ飛ばされた保護用シーツ。散らばったピースが集まるようにセンチネルはだんだん思い出し始めた。
そういえば、つい先日エリートガードの船で地球の文化を学ぶたいと物好きな研究者共の護衛で地球に訪れたのだった。
そして昨晩人間が作ったドッキリ番組とやらを皆で観ていて、オプティマス達は爆笑していたがセンチネルはあまりの馬鹿馬鹿しさに先に休むと言って抜けたのだった。

「センチネル?君、大丈夫か…?」
「何だ…さっきのはやっぱ夢か」
「夢?」
「何でもねーよ。気分悪りぃ夢を見ただけだっ」
「…だろうな。酷い顏だ」

オプティマスは苦笑しながら手を伸ばしてセンチネルの頬を撫でた。
その何気無い仕草にスパークが揺さぶられる。
なんだか馬鹿馬鹿しくなってきた。センチネルは疲れたように廃棄して、オプティマスを抱き締めながら床に寝転がる。
捕まれられたオプティマスは突然の行動に驚くが、すぐに全身から力を抜いた。
胸元に擦り寄ってオプティックを閉じる。

「なぁ、一体どんな夢を見たんだい?」
「んー…お前が俺を誘う夢」
「えっ…私が?」
「でもよ、バンブルビーと双子共に落とし穴に落とされちまった。ドッキリ大成功とかふざけやがって」
「それ、さっき皆で観ていたドッキリ番組じゃないか。そんな夢を見たのか?ははは…それは災難だったなぁ」
「あー思い出したら腹立つ!やっぱお前責任取りやがれ!元はと言えばお前が誘うから悪いんだろ!?」
「ちょ、バカ、夢の話だろ!?ふ、んんっ……!あ、待て、まって……あ、ぁ…!」

理不尽な八つ当たりに抗議するが、体はがっちりと絡め取られて逃げられそうにない。 彼は最後まで離さないだろう。
…こうなれば仕方ない。だがせめてもの抵抗だと、ニヤリと笑うセンチネルの頬を思いっきり引っ叩いた。


(終)

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