TFA短編 | ナノ

◯◯のど真ん中にハートマーク(センププ)

全てはオプティマスの叫び声から始まった。

「ああああああセンチネルちょっと待て待て待ってくれ!!そのベンチのペンキがまだ乾いてないんだ!!」
「……あ?」

慌てて走ってくるオプティマスの叫びが一瞬理解出来なかったセンチネルの腰は無常にもまだ塗りたてのベンチに下りてしまった。
遅かった。

ーーーベチョ。

「うぉわあああああ!?」

尻に気色の悪い感触がして全てを悟ったセンチネルは絶叫した。



こんなに怒った彼を見たのは久しぶりかもしれない。
長い顎を異常接近させ、カメラアイを釣り上げながらギャーギャー喚き散らすセンチネルにオプティマスは辟易しつつも一応謝っていた。

「だから何度もすまないと謝っているだろう…もうそろそろ勘弁してくれないか?」
「ああそうだなそろそろ勘弁……出来るわけねーだろ馬鹿野郎!ペンキ塗りたてなら立ち入り禁止の看板くらい立てとけ!!」
「それについては弁解の余地も無いな…私のミスだ、本当にすまないセンチネル」
「じゃあ!このデザインセンスもてめぇのミスだと思っていいんだな!?たかが椅子に何をラクガキしてんだよバッカじゃねーのか!?おら見てみろよ俺様のケツを!!」
「な、何がだい?」
「これだよ!」

怒鳴りながらくるりと180°回転したセンチネルはペンキが付いた部分をオプティマスに見せ付けた。
それを見たオプティマスは一瞬呆気に取られたが、すぐに腹を抱えて笑い出した。

「俺様の不幸を笑うんじゃねーよ万年お掃除プライムが!?」
「ぶ、くく!ははは!い、いやだってそれ、君のお尻にピンクのハートマークがくっきり写ってるを見たら誰だって…!あははは!」
「うるせー笑うな!!」

笑が止まらないオプティマスを恨みがましく睨むがあまり効果がない。
ハートマークを描いたのはサリだが、どうやら運悪くまだ乾ききっていないマークの上に座ってしまったらしい。
あのセンチネルの尻にピンクのハートマーク。事故とはいえ破壊力抜群のギャップにもう笑うしかない。
しかしいつまでも笑ったままでは彼の機嫌が急降下して今後付き合いづらくなるのは必然だろう。
それは避けたかった。
案の定センチネルは腕組みしながら足音も荒く床を踏み鳴らしている。

「で?この責任はどう取るつもりなんだオプティマス?」
「とりあえずラチェットにシンナーかリモネンを貰ってそれでハートマークを拭けばいい。待っててくれ、今貰ってくるから…」
「それは当然の処置だが、俺はお前に責任を取れと言ってんだよ。部下の不始末を上司が肩代わりするのは当然だろ?」
「サリは私の部下ではないんだが…」
「屁理屈こねるな!」

どうやらセンチネルは相当ご立腹らしい。
ううむ…とオプティマスは悩む。
確かに塗りたてのベンチを放置したのは此方に落ち度があるし、何も知らずに座ってしまったセンチネルは被害者の立場だ。
やはりここは部隊長である自分が責任を取るべきなのだろう。

「…分かった。だが責任と言っても私は何をすればいいんだ?」
「そうだなぁ……」

ニヤニヤしながら全身を舐めるように見つめられて思わず悪寒が走る。
なんとなく嫌な予感かするが逃げたくても逃げるわけにはいかない。

「…じゃ、命令な」
「命令?一体何をーー」
「お、おお俺にキスをしろ!!」
「……………」

硬直するオプティマス。
何をやらされるのかと思えばキスをしろ?
しかも初心な乙女よろしく機体をモジモジしているし正直気持ち悪い。
かなり、いや心の底から冷め切った顔で見下すオプティマスに脳天気なセンチネルは気付いていない。
彼は本気だ。
ええと…本当にどうしようか。
困り果てたオプティマスは一瞬「サリ、センチネルにお詫びのキスをしてくれないか?」と頼もうかと迷ったが、それは本気で犯罪になるのでオートボット精神として実行させるわけにはいかない。
ここでふとオプティマスはセンチネルの意図に気付く。

「センチネルそれはあれか。セクハラってやつじゃないのか?」
「あ、やっぱ外じゃ恥ずかしい?んじゃ今すぐラブホ行って泡の出る風呂にでも入るかァ?ピンクのローションでも用意してさぁー」
「〜〜っやるかそんなもん!!」

下心丸出しでニヤつくセンチネルの顔面に顔を真っ赤にしたオプティマスの拳がめり込んだ。

(終)

*一部加筆修正しました。
サリ←センチをちょっと見てみたい。


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