TFAお題小説2 | ナノ





愛し続けると約束を(メガププ)



頭を撫でる優しい感触がしてオプティマスはスリープモードから覚醒した。

「まだ寝ていて構わんぞ」
「いや…もう起きるよ」

微笑んでオプティマスは横たわっていた機体を起こした。
熱はだいぶ冷えたけれど、快楽の余韻がまだしっとりと機体に残っていてその気怠さが心地良い。
頭を撫でていた恋人の手は首筋を撫で背中から腰へと滑り下りる。
その意図的な動きに微かな甘い痺れを感じてオプティマスは小さく排気した。
その時、メガトロンの大きな手がいきなり小さな尻を鷲掴みにしてきた。

「うわひゃっ!?」

思わず奇妙な叫び声を上げたオプティマスだったが、そのまま掴み上げられてメガトロンの傍へ一気に引き寄せられた。
膝の上に乗せられしっかり抱擁される。
別に逃げるつもりはないのにこの男はいつもこうだ。でもこの拘束はとても温かくていつまでもこうしていたくなる。
機体から力を抜くと抱き締める腕に力が込もった。

(ああ、温かい)

逞しい胸元に頬を寄せながらオプティマスは幸せそうに笑う。
そんな時、ふとメガトロンの抑揚のない声が降ってきた。

「オプティマス、お前は我と共にいて幸せか?」
「えっ…」

一体どういう意味なのだろう。
驚いて見上げると、メガトロンは苦笑しながら安心させるように頬を撫でた。

「別に大した意味はない。ただお前の気持ちを知りたいだけだ」
「…もちろん幸せだよ。メガトロンと一緒にいつまでもこうしていたい」
「そうか…」
「なぁ、急にどうしたんだ?」
「意味はないと言っただろう」
「嘘だっ。何もないのにそんな事普通聞かないだろう?…まさか、私に飽きたとか、別れたい…とか?」
「そんな訳あるかっ勝手に話をややこしくするでないわぁ!!」
「な、お前…」

ちょっと疑っただけなのに…何も怒鳴らなくてもいいのでは?
一瞬呆気に取られるオプティマスだったが、段々と腹が立って来た。
よく考えれば何故怒鳴られなきゃならないのか。理不尽ではないか。
無言になり始めたオプティマスを見てはっと我に返ったメガトロンが慌てて不貞腐れる彼に口付けた。
軽く触れてすぐに離れた後も頬に額にこめかみに優しく愛撫される。

「んっ……ばか」
「オプティマス、我を見ろ…お前に飽きた訳ではない」
「は…じゃあ、何であんな事を」
「少し、不安だっただけだ。我と共にいるせいでお前がオートボット共に不利益な扱いをされていないかとな」
「それは…っ」

メガトロンに言われ、言葉に詰まるオプティマスは沈鬱な表情を浮かべた。
オプティマスがメガトロンと付き合っていると言う事実は今の処オプティマスの部下達とサリ、そして一部のエリートガードしか知らない。
…はずだったのだが、火の無い場所から煙は立たぬ。その通りにオートボット内部でじわじわと噂が拡がっているらしい。
総司令官であるウルトラマグナスにはメガトロン自らカミングアウトしたがー多少の殴り合い罵り合いがあったがーなんとか仲を認めて貰えた。
さらにはオプティマスに直接非難が向けられないようにあれこれ手を回してくれたのもあって特に目立った誹謗中傷は受けていない。
しかしメガトロンは気になる報告をショックウェーブから聞いていた。
その一部のエリートガード達からオプティマスが中傷されている、とー
しかも詳細を聞けばそのエリートガードの一人は昔オプティマスの同期だとかなんとか。
…気にならないと言えばはっきり言って嘘だ。

「どうなのだ?」
「うんまあ…でも、別にメガトロンが気にするような内容じゃないよ。私は平気だから」
「そんな泣きそうな顔で説得力のない嘘をつくな。…やはり何か言われているな?何を言われた」
「………」
「オプティマス?」
「私が…」

途中で言いかけて止まった。
怪訝に思いながら顔を覗き込むと、オプティマスの頬から透明な雫が零れ落ちている。
オプティマスは静かに泣いていた。

「メガトロンに洗脳されているんじゃないか、と。本当はスパイなんだろうと彼らが疑っているみたいなんだ」
「…なんだと。それをウルトラマグナスは知っているのか?」
「私だってもう子供じゃないんだ。だいたい普段からあんなによくしてくださるのに…これ以上総司令官の悩みの種を増やしたくない」

涙を拭いながらオプティマスは微笑んだ。
心の痛みを必死で我慢して、あくまでもウルトラマグナスやメガトロンに無用な心配を掛けたくないと笑っている。
誰がどう見ても無理をしているのは分かり切っているのに、このオートボットは何もかも自分一人で抱え込もうとする。

(お前と言う奴は…)

それが腹正しく、悔しい。
メガトロンはオプティマスを強く抱き締めた。

「メガトロン…」
「オプティマス、今度から何かあったらすぐ我に相談しろ。我が言うのも何だがこれは非常にデリケートな問題だ。だから一人で悩むな。まずは我に頼れ」
「でも、これは私が言われた事だ!メガトロンには関係ない、お前に迷惑掛けたくない」
「我が関係ない、だと!?」
「あっーーー」

激昂したメガトロンにオプティマスは絶句した。
しまった、さっきは失言だったと後悔したがもう遅い。
関係がないだなんて、そんなつもりが無くても誤解されるような言葉を言うつもりは無かったのに。
メガトロンは本気で怒っている。
あんなに心配してくれたのにー

(どうして私はこんな言い方しか出来ないのだろう…)

ただただ浅はかな自分に自己嫌悪する。

「すまない…」

オプティマスは絞り出すように謝った。
妙な所で素直だな…と、メガトロンは嘆息しながら目の前の青年の背中をゆっくり撫で下ろす。
青年。そうだ、オプティマスはまだ若い。
戦士としての資質は申し分無い程優秀だが、恋愛事情になるとまるで素人だ。
愛することも、愛されることも知らない。
その若さ故に傷付き、自分なりにメガトロンを守ろうとするのは嬉しいがやはり年長者としては守ってやりたくなると言うもの。

「本当は泣くほど辛い癖に強がるな。そのエリートガード共の話は我が直接ウルトラマグナスに話してやろう。だからしばらくは我の傍にいろ。いや、帰さん」
「え…メガトロン?」
「お前は確かに強い。だが我はさらに強い。だからオプティマス、お前を守らせろ」
「どうしてそこまで私を…」
「お前を愛しているからだ」

きっぱりとメガトロンは告げる。
いっそ清々しい程の直球過ぎる愛の告白だ。
無駄な飾りも思惑も無い、メガトロン自身の素直な想い。
しばらく呆然とするオプティマスは、やがてくしゃりと破顔した。
今度はオプティマスから腕を伸ばしてメガトロンを抱き締める。温かい。そうだ、いつもこの温かさに救われていた。
私は幸せだと、さっき確かにそう言わなかったか?

「オプティマスよ、もう一度聞くが…お前は幸せなのか?」
「私は、幸せだ。でもたぶん欲張りなんだ。たくさんの幸せや愛が欲しくて堪らない」

その為に何を言われようとも、ただ愛する者を信じているから、信じたい。

「私も…愛しているよ」
「我に何でも打ち明けると、愛し続けると誓うか?」
「うん…」
「約束だぞ」
「ああ…」

指を絡ませ、真っ直ぐ見つめ合う。
こんな激しい恋をまさか自分がするなんて思わなかった。
狂おしい程の想いに傷付く事もあるけれど、本当は周りから反対されればされる程燃え上がるなんて言えば、メガトロンは笑うだろうか。

「その機体に我の愛を刻み込んでやる」
「私だって離さないからな」
「それは楽しみだ」

じゃれ合いながら、やがてどちらからともなく唇を合わせた。
高なる欲情のままにオプティマスとメガトロンはベッドへ沈んだ。

(終)

7



目次 MAIN




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -