TFAお題小説2 | ナノ





二人きりの隔離空間(サウ×ププ)



サウンドウェーブ。元々はメガトロンによって創り出された音響兵器。オプティマスはメガトロンからそう聞かされていた。
サリよりも小さな、トランスフォーマーから見ればかなり小さな機体。無機質な鉄面皮ースタースクリームはそう評価しているーからは何の感情も読み取れない。
だから、同胞たるディセプティコン同士との交流も希薄なのだと噂で聞いているが、ここ最近オプティマスはそんな噂は間違っていると考えを改めている。

「オプティマスプライム」
「ん…?やあサウンドウェーブ。今夜も来たのかい?」
「…部屋に入っても」
「今は私一人だから構わないよ。遠慮せず入っておいで」
「わかった」

天井から微かに声がして、椅子に座って微睡んでいたオプティマスは微笑しながら声の主を招く。
その小さな来訪者は真夜中に現れる。
それも必ずオプティマスが自室で一人きりの時だけ、タイミングよくサウンドウェーブはやって来るのだ。小柄なサイズは、なるほど潜入に適しているらしく軽やかな一回転を披露しながらオプティマスの目の前に降り立った。
サウンドウェーブの周りを鳥の形状をした飛行ロボット、レーザービークがくるくると舞った後、天井の隙間から外へ引き返して行く。
そしてサウンドウェーブはスタスタとオプティマスに近付くと、さも当然と言わんばかりに膝の上に飛び乗った。
オプティマスは苦笑しつつ、サウンドウェーブの頭を撫でてやる。

「いつ見ても君は小さいな」
「好きでこんなサイズに創られた訳じゃないが、オプティマスプライムが小さいサイズが好きならボクも好きでいる」
「や、そんなつもりで言った訳じゃないが…」
「小さいボクは嫌いか?」
「嫌いじゃないさ!ただ、なんて言うか可愛らしいなぁって言うか。愛玩動物のような感覚がするんだよ。だからあんまり気にしないでくれ」
「ちょっと気に障る言い方だが、オプティマスプライムがそう言うなら納得してやる」
「あ、ははは…どうも」

少しご機嫌斜めらしいサウンドウェーブが、ぷんすか悪態をつきながらオプティマスにギュッとしがみ付いて来る。
ちょっと言い方がまずかったかなとオプティマスは反省する。
実を言うと彼は大型サイズにトランスフォーム出来るのだが、オプティマスと会う時はいつも小さなサイズでやって来るから慣れていたのかもしれない。
可愛いものは可愛いのだから本心で言っただけなのだ。早くサウンドウェーブの機嫌が治ってくれればいいのだが。
…ふとオプティマスはあることを思い出した。

「そうだ。サウンドウェーブ、私がサリから貰った音楽データがあるんだが聴いてみないか?」
「音楽データ?」

音楽と聞いて、しがみ付いていたサウンドウェーブが興味深そうに見上げて来る。

「人間が歌っているんだけど、私が聴いても素晴らしい歌だからきっと君も気に入ると思うんだ」
「どんな歌だ」
「遠い場所から恋人を想う恋人の…甘く切ない歌でー」

少しオプティマスの頬が熱くなる。
聞くだけなら簡単だけど、口にすればなんと恥ずかしいものか。
人間はよく素直に愛やら恋やらを歌えるものだ。
時々感心する。
そんなオプティマスを見上げるサウンドウェーブのコミカルなバイザーが、一瞬キラリと光った。
えっと疑問符を浮かべるオプティマスの顔を目指してサウンドウェーブはよじよじと這い上がって来た。
首元まで到達したサウンドウェーブは、驚くオプティマス口元に近付いたかと思うと何の前触れも無くキスをした。
余りにも小さな、軽く触れただけの可愛らしいキス。

「サ、えっ、え?」
「その歌が聞きたい。オプティマスが気に入ったならボクも気に入る。端末からコードを繋ぐぞ。いいか」
「あ、ああ…もちろん」

どこか得意げな雰囲気のサウンドウェーブに気圧されつつ、聴覚センサーからサウンドウェーブへコードをお互いに繋いだ。
そして流れ出したLOVESONG。
しばらく黙って聴いていたサウンドウェーブが、オプティマスに寄り添いながら呟いた。

「…興味深い歌だ。人間は下らないが歌の文化だけは好きだ。愛、愛か。ボクとお前で二人分のラブがいっぱいだ。ボクはオプティマスに会えて嬉しい。オプティマスプライムは」
「…私も同じ気持ちだよ」

オプティマスはサウンドウェーブに手を添えてそう応えた。
それは嘘偽りの無い気持ち。
思えば、恋の歌なんて聴くようになったのはきっと君に会えたからかな。
…なんて素直に言えないのが少し歯痒いが、悪くはない。
二人きりで優しく愛しい歌を聴きながら穏やかな時間は流れていく。
満ち足りた心地よさに機体を任せながら。

(終)

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