TFAラストエンゲージ | ナノ

ラストエンゲージ6(その頃のD軍)

ブラックアラクニアは不機嫌極まりなかった。
ネメシアに帰還した途端ショックウェーブに強引に連行され、連れて来られた場所は何故か薄暗い小部屋だった。有無を言わさず安物のパイプ椅子に座らされて、これまた汚い机に置かれたライトスタンドの光を向けられて眩しいし鬱陶しい。
しかも部屋の隅にはブリッツウィングとラグナッツまでいるではないか。ただでさえ狭い部屋が余計窮屈に映る。
ここら辺で苛々がピークに達する寸前、ふとブラックアラクニアは嫌な予感がしてポツリと呟く。

「…まさかアンタ達仮にも副官のあたしを輪姦しようなんて考えてないでしょうね…?」
「「「ンなことするかーーー(ッツ)!!??」」」

断固否定する野郎共にアラクニアはちょっとムカついた。

「あっそ!じゃあ何でわざわざあたしをここに連れて来たッシャ!」
「今のお前にはオートボットと裏取引した疑惑が浮上している。観念して洗いざらいブチまけろ」
「………はぁ!?ちょっと待ってよ、一体何の話!?あたしはそんなの知らないわよ!!」

器用に単眼を半眼にしながら問い詰めて来たショックウェーブ。一方のブラックアラクニアは身に覚えが無い疑惑に激怒して立ち上がると、ラグナッツが巨体を揺らして詰め寄って来た。

「シラを切るなッツ!お前がエリートガードの一人と面識があるのはショックウェーブが調査済みッツ!」
「面識のあるエリートガードって……センチネルのこと?あいつなら地球に居た時から会ってないわよ!」
「あの青顎じゃないデスヨー。ゼータプライムと言う評議会所属のエリートガードデース。心当たりは?」
「ゼータプライム……?………あっ」

首を傾げるアラクニアだったが、昔のメモリーを探っていく内に心当たりがあったらしく声を上げた。
キラリとショックウェーブの単眼が光る。

「やはり知っていたか」
「ま、まあ知ってるけど………けど、彼とはもう1000年前に終わったから関係ないわよ。そりゃあ最近会わないかって連絡はあったけど、今はオートボットと和解したんだから飲みに行くぐらいいいじゃないっ」
「テメェやっぱり会ってたんじゃねーかメーン!?この裏切者ー!!」
「何でアンタに裏切者呼ばわりされなきゃいけないのよ!?アンタに関係ないでしょーがっ!!」
「そーゆー問題じゃねー!!」

激怒して肩を掴んで揺さぶるホットヘッドの顎をアラクニアは押し返して抵抗する。
ぎゃあぎゃあ騒ぐ二機をラグナッツはキョトンとした顔で眺めていた。

「?何でホットヘッドはあそこまで怒ってるッツ?」
「100%嫉妬だろ。ブリッツウィングは三人格全員アラクニアに惚れてるからな」

サラッと言い張ったショックウェーブの言葉を聞いたアラクニアとブリッツウィングはしばし硬直する。

「はぁ…?アンタって実はそうだった訳?」
「はあぁぁ??別に違うしぃー!ボクは別にこんな蜘蛛女好きじゃないしぃー!何バカ言ってんの笑えないよぉアハハハハー!!」
「ほー?だったら俺の勘違いか。すまんなアラクニア。実は俺の方がお前に惚れていたんだ。そう言う訳で結婚してくれ」
「そんな嫌がらせ止めてくだサーイ!?」

思わずガバッとアラクニアを抱き締めたブリッツウィングだったが、直後に拳が顔面にめり込み崩れ落ちた。
完璧に決まった右ストレートにラグナッツは拍手する。ピクピクと床に這いつくばるブリッツウィングは、それでもアラクニアの足首を掴んで離さそうとしない。
案外、しぶとい。アラクニアは疲れたように排気した。

「…そう言えば何の話だったっけ?」
「ゼータプライムと会ったらしいが、俺はお前が奴と手を組んでディセプティコンを乗っ取ろうとしていると疑っている」
「だから、そんな話あたしは知らないわよ。ただ普通に飲み交わしただけッシャ。だいたいメガトロンが今だ健在なのにわざわざ危ない橋を渡る気は毛頭ないわ。どこぞの愚か者と一緒にしないで頂戴」
「ふむ…ならば本当に反乱を起こす気は無いと」
「…あんた、自分を差し置いてあたしが副官に選ばれた事をまだ根に持ってるでしょ?文句があるならメガトロンに言ってほしいわね。本当は自分が傍で働きたかったんでしょうに」
「メガトロン様の決められた事は絶対だ。俺如きが意見する必要などない」

(よく言うわ…)

忠実な部下のフリをして、本当はスタースクリームに取って代わりたかったであろうショックウェーブの心境がアラクニアにはよく分からない。
正直な話、副官に任命されたアラクニア自身も晴天の霹靂だったのだ。選ばれるならショックウェーブかブリッツウィングのどちらかと思い込んでいたのにあえてアラクニアが選ばれた理由とは、何だ?
アラクニアはショックウェーブのもう一つの姿を思い出した。かつてスパイとしてオートボットに潜り込んだ仮の姿、ロングアームプライム。
情報長官の地位に居るならば、なるほどアラクニアがゼータプライムと接触した事ぐらい容易く掴めるのかもしれない。

(迂闊な行動は控えるべきね)

舐めて掛かると倍返しになる相手だ。アラクニアはブラックリストにショックウェーブの名前を追加した。

「まあディセプティコンを乗っ取る云々は保留するとして、他に何か話さなかったか?例えば…メガトロン様が持っているオールスパークの在りかとか」

ピクリとアラクニアが反応する。
ショックウェーブは続けた。

「お前が行動するとしたらオールスパークしか思い浮かばない。ゼータプライムはオールスパークを奪えば、その体を元に戻してやると誘って来たんじゃないか?」
「本当にあんたには嘘が通用しないわね……そうよ。ゼータプライムはあたしにそう言って来たわ」
「当然断ったんだろうな?」
「もちろん誘いに乗る気は無いわよ。でも、話を聞いてみたら元に戻る方法が本当にあるらしくてね…私にとっては宿願なんだから、話だけは聞いて来たわ」

アラクニアは椅子に座り直して憂鬱な表情を浮かべた。

「でも、所詮無理な話よ。オールスパークの在りかはメガトロンしか知らないし…だいたいこれから和解しようって時に、無用な混乱は避けるべきだしね。あたしはあたしで元に戻る方法を見つけて見せるッシャ」
「…そんな決意がある癖にうっかりゼータプライムと接触したのはマズかったと思うぞ…」
「…何よそれ。どういうーーー」
「話の途中で悪いが邪魔するぞぉっ」
「め、メガトロン様ァッー!!」

ドシンドシンと金属音を鳴らして部屋に入って来たメガトロンを見たアラクニアは焦り始めた。
スタースクリームのようにお仕置きされるのではないか?などと危惧して身構えるが、メガトロンは乱暴するつもりは無いと手を横に振った。
予想外の事態に思わず気が抜けるアラクニアだったが、次の瞬間殺気の込もった赤いカメラアイで睨まれて動けなくなる。

「な、何なんですか?」
「…お前があの愚か者のように我に楯突く気はないのは分かっておるわ。だぁがぁ…ついさっきウルトラマグナスから連絡が来てなぁ…地球にいるはずのオプティマスプライムが何者かに拉致されたんだと。誰かは知らんが舐めた真似してくれちゃってぇ…許さんぞぉ…」
「…な、オプティマスが!?どうして、……まさか彼が……」
「アラクニア…ゼータプライムとはどんなオートボットか、我に詳しく話してみせぇい。貴様の元カレならショックウェーブより詳しい話が聞けるであろう?」
「うっ…は、はい………」

何で元カレの思い出なんか話さなくてはならないのだ。プライバシーの侵害も甚だしいと思ったが、今のメガトロンに逆らう勇気はアラクニアには無い。
それよりも、アラクニアはオプティマスの行方が気になった。とっくの昔に友人の縁を断ち切った相手など気にする必要なんて無いはずなのに…

(…割り来ってるつもりなんだけどね…)

…捨てきれない想いはまだ残っていた。



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