TFAラストエンゲージ | ナノ

ラストエンゲージ4(ジャズとブラーと長官)

戦争がついに終わる。

そうウルトラマグナス総司令官がオートボット全兵士達へ通達した後も若い兵士達の間にはなんだか実感が湧いて来ない。
そんな雰囲気がエリートガードの中にも伝わっている。

「う〜んなんだか今でも信じられないなぁ。いきなり戦争が終わりましたーだなんて。しかもメガトロンから停戦を言い出したんだろ?その理由がなんともまた信じられないね。そう思わないかいブラー?」
「だよねだよねだよね。あとあとこの件でオプティマスプライムが一気に有名人になってしまってしばらくセイバートロン星に帰れなくなっちゃったんだよねー。マスコミとかゴシップ記事も好き勝手な事ばっかり書いてて腹が立つよ!あの人はあの人はそんなんじゃないのに!」
「よく考えたらオプティマスも災難だよなぁ」

プンスカ怒りながら早口で喋るブラーにジャズは相槌を打つ。
現在エリートガード本部ではメガトロンとオプティマスに関する衝撃的な噂で持ちきりだった。
端末の司令官に過ぎなかった彼が今やオートボット中の有名人になってしまい、噂の真相を突き止めようとマスコミだのなんだのと彼の所在地を血眼になって探している現状に危機を感じたウルトラマグナスが、しばらく帰還しないようにオプティマスへ命じたらしい。
もちろん彼の部下も同様だ。
図らずも地球駐留部隊になりつつあるオプティマス達にジャズやブラーは同情的だった。
こんな事態になってはもはやエリートガード復帰は絶望的だろう。
有能で好意的な人物のオプティマスならいずれは同じエリートガードとして働けたかもしれないと期待していたのに残念である。

「ねぇねぇジャズ、このままオートボットとディセプティコンはどうなって行くのかなぁ?」
「…まあ、同じ屋根の下でいきなり全員共同生活にはならないだろうね。昨日まで敵同士だったし、まだまだ反発の声は上がるだろう。私は素晴らしい事だと思うけどね」

実際それはかなり難しい問題だろう。
かつてのグレートウォー戦役でオートボットが勝利した際、セイバートロン星から全てのディセプティコン達を放逐した事実や、これまでの彼らに対する差別的な階級制度の問題等を考慮しても、簡単に解決出来そうにない。
向こうも同様にこちら側を憎んでいるだろう。
そうやってお互いに殺し殺され、何百万年も蓄積された憎悪は減るどころか増えていく一方なのにそれを何とも思わない程麻痺してしまった感情が時々虚しい。
両者の溝はとことん深かった。
なのに、オプティマスはそんな闇をあっさりと晴らしてしまったのだ。
皆が興味を覚えるのは当然かもしれない。
ふとブラーはこの場にオプティマスをいつも気に掛けている男がいない事に気が付いた。

「あれ?そういえば今日はセンチネルは?」
「彼ならメガトロンと交渉した翌日からずっと寝込んでいるらしいですよ。クリフが呆れています」
「やぁロングアーム。本当、彼にも困ったもんだ。次期マグナス候補に選ばれたと言うのにオプティマスが攫われたからってフテ寝しなくてもいいのにねぇ」
「ええまったく。しかしいくら傷心だろうとこのままでは選定から外されてしまいますよ。とにかくジャズ、副官のあなたが彼を説得して連れて来てくれませんか?」

そうロングアームは丁寧に頼みながらも内心ではあの糞顎野郎仕事しやがれとひたすら罵倒しまくっていた。
あの日から丸三日。気絶したセンチネルはよほどショックだったのか有給まで使って寝込んでしまった。
まあ無理もないとロングアームも少しは同情する。密かにオプティマスに想いを寄せていたらしいセンチネルを気遣うつもりは更々ないがあれはあれで使い道はある。
しかしながら大量の愚痴メールを毎回毎回自分に送信するのだけは絶対に止めさせたい。いずれこっちが参ってしまうし何より鬱陶しくて堪らない。

「長官長官大丈夫ですか?なんだかすごくお疲れのようですが」
「ありがとうブラー。まあなんとかなりますよ」

疲れたように排気する上官を部下のブラーは心配そうに声を掛けた。
ロングアームは爽やかに笑い返すとブラーは嬉しそうに微笑む。
そんなほのぼのな光景を眺めるジャズはいいなぁ〜なんてちょっと羨ましかったり。

「おや?マグナス候補と言えば…センチネルの他にもう二人いたような。確か一人はえーとロディマスプライムだったかな?」
「ええ。ですが彼は候補を辞退したそうですよ。 若輩者の自分はまだまだマグナスに相応しくないと」
「ほー謙虚だねぇ」
「ロディマスプライムならアタシもアタシも何度かお会いしたけど、頼れるリーダーって感じですごく好人物ですよ!」
「へぇ〜随分褒めているじゃないですか。ひょっとしてブラーは彼のような細身で頼り甲斐のあるタイプが好みなんですか?なんだか妬けますね…」
「ええ!?いえいえいえあくまでロディマスプライムは憧れで、本命はもちろんもちろん長官ですからー!」

珍しくむすっとするロングアームに涙目のブラーが縋り付く。
はははとジャズが笑う。

「まあまあ。で、最後の一人がゼータプライムだったかな。ほら、元々は研究者だったけどグレートウォーでの功績が認められて最年少でエリートガードになったと評判の彼さ」
「…ウルトラマグナス総司令官にオメガ計画を発案した人物としても有名ですがね。彼がいたおかげでパーセプターやホイルジャックと共同開発しオメガスプリームが誕生したとか。ディセプティコンを壊滅に追い込み、さぞ手柄を立てられて満足でしょうね」

ロングアームは微かに表情を歪めながら辛辣な言葉を吐き捨てた。彼の正体を知っているブラーは気まずそうに俯く。
ジャズは不思議そうな顔をするが、特に気にしなかったようで先を続ける。

「そういえば彼も大のディセプティコン嫌いで有名だったね」
「ジャズ、貴方は彼に会った事があるのですか?」
「公式行事で顔は何度か見たことあるけど個人としての接触はまだだね。彼は評議会直属のエリートガードだから普段は本部に居ないんだよ。ま、評議会にかなり近い位置だから色々ときな臭い噂は聞くけど」
「アタシもアタシも聞いた事あるよ。強烈な選民思想とオートボット至上主義者なんだよね、彼は」
「もし彼がマグナスに選ばれたならまた戦争に逆戻りかも知れないよ。そう考えるなら当然オプティマスの事が気に入らないだろうな」
「実はその事でウルトラマグナス総司令官から話がありまして…ゼータプライムの今後の動向を監視するようにと命令されました。私個人にね」
「君に?また何故?」
「色々と多方面にネットワークを持っているんですよ。そこを見込まれたようです」
「さすが長官は長官はすごいなぁ!」

何やら感動しているブラーへ適当に愛想を振りまきながら、ロングアームは本来の主であるメガトロンから承った命令も思い返していた。
それはオプティマスプライムを反対派から守れと言う内容と、それと並行して内密に遂行する計画がもう一つある。
オプティマスの事は気に入らないとはいえ、敬愛する主の期待に必ず応えなければならない。
メガトロンが和解を望むならば、忠臣たるショックウェーブもメガトロンと同じ道を歩む決意に変わりはないのだ。
そう思っていたのに、自分の迂闊さを心底呪いたくなる事態が発生してしまう。

「長官長官!大変大変大変ですオプティマスがー!」
「彼が…いない?」

地球にいるはずのオプティマスプライムが突然行方不明になった。


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