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×××

「……じゃあ、書類は全部確認した。では、これで君も、佐土高校の一員だ。改めてよろしくね、佐渡くん」



佐土高校・生徒会室。生徒会役員三人と西風紀・府川の見守る中、副会長・真野善人は転校生に微笑みかける。そんな様子を見ながら、会長・阿久津航海は、転校してきた男に険しい視線を向ける。



阿久津も色々な人間を見てきたが、それでもこの目の前の男が『破格』というのはわかる。長くしなやかに伸びる手足、類い稀、と言って差し支えない美貌。水のように流れる金の髪、白く決め細やかな肌。それはこの学校のルックスヒエラルキーのトップにいるこの生徒会役員を前にしてもひけを取らない、――いや、それ以上と言ってもいい。それでいて放つオーラは華やか、としか言い様はなく、どんな人間もこの男の前には心を奪われてもおかしくはない。そして本人もそれをわかっているのか、髪、顔、指の先まですべてが洗練されて美しく、そして自信に満ち溢れている。……恐らく、この男が編入されれば噂は転校生の話題一色になるだろう。親衛隊はもちろん、熱狂的な信者まで現れるかもしれない。



――そう、こいつのためなら、どんな事でもしそうな奴らが、



そう思い至り、阿久津は嫌悪感に眉をしかめる。しかしそんな阿久津に気づかないのか、転校生、――佐渡は美しい笑みを向けてきた。



「ありがとう、これからよろしくね、阿久津会長、真野副会長」
「ああ、真野でいいよ、佐渡くん。君はS組編入だから、阿久津と僕もクラスメイトになるから。わからない事があったらなんでも聞いて」
「そう。なら、改めてよろしく、真野くん。阿久津くんもよろしく」



親しげに笑みを浮かべる真野に、佐渡も親しげに頷いた後、阿久津の方にも笑みを浮かべる。その笑みはどこまでも美しく、普通の人間ならばその笑みにたちどころに魅了されるだろう、――が、阿久津はその笑みを見るたび、どこか嫌悪感を感じてしまう。今まで感じた事のない妙な感覚に戸惑いつつ、阿久津は佐渡に頷いた。



「……、ああ、よろしく頼む」
「そうそう、せっかくだから生徒会の役員も紹介しておくよ。阿久津の右にいるのが会計の人見くん。左にいるのが書記の秋田くん。二人とも二年だからあまり関わりはないかもしれないけど、僕や阿久津がいない時は彼らに聞いてみて」
「「……」」



真野が話を振ると、つまらなそうな顔をした人見は少し眉を上げ、不安げな顔をしていた秋田は肩をびくり、と震わせる。そして秋田は阿久津の影に隠れてしまい、人見はそれを見やりつつニヤニヤしながら佐渡に手を差し出した。



「どーもぉ、佐土高会計・二年の人見遊馬でーす。まー、あんまりオレと関わる事はないと思うけどぉー、よろしくー、佐渡せんぱーい」
「よろしく」



どこか挑発的な笑みを浮かべる人見に対し、どこまでも涼やかに佐渡は笑みを浮かべる。そして阿久津の影に隠れてしまった秋田の方に佐渡は視線を向けたが、それに気づいた秋田は阿久津の後ろでますます縮こまってしまう。それを見た真野はすまなそうに佐渡に言った。



「ああ、ごめんね、秋田くんは人見知りなんだ。悪気はないから許してあげて」
「そう。……じゃあ、『改めて』よろしくね、秋田くん」
「!」
「え?」



佐渡がそう声をかけた途端、秋田はまた体を震わせ、真野は少し驚いた顔をする。それに構わず、佐渡は少し離れたところにいる府川に視線を向けた。


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