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最終更新2021/10/15(詳細はUPDATE)

その男、最強につき

「…ふぅん、随分舐めた真似・してくれるじゃねぇか」

唇を指で拭いながら、酷く愉快げな口調で。

「この俺様に」

苛立ちを、隠そうとも・せず。



「何様だ、テメー」










猫相手に。


「ラァ! そのチーズケーキは俺様のだっつってんだろ! お前はフルーツタルトの方! パイン喰え」
「にゃー」

放課後、通い慣れたスクールゾーンに子猫とダンボール。顔に似合わず可愛い物が好きで好きでたまらない俺は当然、保護。うちに連れて帰る訳には、でも可哀相、と迷う事5分。


『どーしたんスか?』

授業の後には甘いものを食おう委員会会長、正式には手の掛かる後輩に見つかり現在に至る。

「うまうま」
「んにゃん」
「あまあま」
「んにゃん」

奴はケーキ屋で仕入れたケーキ12個を抱えていて。朝、女子から山程貰っていた菓子はどうしたと聞けば、昼食後のデザートとしてとうに食べたと言う。

何と言う食欲か。

半ば感動しながら猫とケーキ食べ比べ中の男を見遣り、

「せぇんぱぁい」
「ん? 何だ」

唇の端にチョコレートを付けた男がケーキのカップをずいっと掲げてくる。
甘そうだ。

「チョコミントムースれす!」
「そうか」
「美味しいれす!」
「そうか」

幸せそうに5個目に手を伸ばす男に痙る笑みを浮かべ、猫に目を向ければ3個目のケーキに一心不乱。

「せぇんぱぁい」
「ん? 何だ」
「フルーツタルトにトマトが入ってます!」
「そうか」
「美味しいれす!」

緑茶片手に、眺めているだけで夕食が必要ない程の満腹感を覚えた俺は。事実腹が痛んで立ち上がる事が出来ず、

「うまうま」
「んにゃん」
「あまあま」
「んにゃん」
「せぇんぱぁい」
「ん? どうした」
「えへへ、レアチーズタルト食べます?」

悪いが自分は特に甘党と言う訳でもなく、どちらかと言えば塩辛い方が嬉しい日本人気質。
家族の誕生日以外にケーキを買った事もない。早い話が西洋菓子に興味はなく、胃がもたれるあの生クリームの味を思い出すと緑茶と煎餅が欲しくなるのだ。


「ちーっとも甘くなくて、美味しいれすよ」

なのに。
頬にクリーム付けた阿呆顔…ではなく、犯罪的に愛らしい顔がにへらと笑っている。


非常事態だ、折角今夜は焼肉にしようと思っていたのに。
このままではキャベツの千切りすら食えない。つまり、作れない。皆に飯とふりかけだけの食事をさせる訳には行かず、



なのに。


「…やっぱり、食べたくないれすか?」

しょんぼり言うその顔は常に犯罪レベルの愛らしさ。
男と言う哀れな生き物故に簡単に混乱し、正常判断が出来なくなるのだ。判っているのに策はない。


「みゃー」

ああ、遂には猫まで見上げてくる始末。
許してくれ、家族達。今日は握り飯と味噌汁がディナーだ。



「………甘」
「美味しいれすか?」

そう、首を傾げる男の唇に生クリームが付いていて。
ああ、犯罪的愛らしさ。

思わず口付けて、愛らしいものを貪る事に没頭した。
何が満腹だ。見事に俺は、





飢えた男。


  PCサイトのものを改編。先輩後輩。

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*めいん#
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