つまらない番組だった。
割と著名な筈の芸人共が微塵も面白くないギャグを交えつつ私的に全く興味のないどうでもいい身の上話を自慢気に繰り広げているような、完全に視聴者の眠気を誘っているとしか思えない退屈なバラエティ番組。妙に癪に触る派手な色のテロップに嫌気がさしてチャンネルをMHKに回した。報道番組でも見ていた方がよっぽどタメになると思ったのだ。しかし結局、四角い画面に映されるのはこれまた退屈な映像ばかりであった。動物園のパンダがどうだのとかいうどうでもいいニュースを聞き流してソファに身を投げ出し、独りの寂しさを紛らわすようにかんぴょう巻きを貪った。

今日は承太郎の帰りがいつも以上に遅い。画面に映された時刻表示は既に10時を指していた。奴はいったいいつまで私を待たせるつもりなのだ。痺れをきらしていると案の定ガツンと強烈な眠気が襲ってきて、いざ睡魔と格闘を試みるも空調の効いた暖かい部屋はただただ私の睡眠欲を促進させるばかりで。私はものの数分で眠りについてしまった。



***



首筋が妙に生暖かい。目を開けば至近距離にはいつの間に帰っていたのか、承太郎の顔が。彼は私が座るソファの横から首筋に腕を回して子供のように抱きついていた。ぱちり、と目が合うと、無駄にうるうるした承太郎の瞳がすがるように私を見つめる。

「……ただいま」

「遅いぞ。何時間待ったと思っている」

「悪かった………」

数秒間うつむいて瞳を右往左往させ何事かを逡巡した後、彼は意を決したように私の瞳を見つめた。

「なあ……DIO…………シよう」

「んふぁ…あ。断る。見れば分かるだろう。私は今すごく眠いのだ、もう寝る。私を待たせた罰だと思え」

やはりか。絶対にそう言うと思っていた。本当はそこまで眠くなかったが、このまま承太郎にヤらせてやるなんていくらなんでも虫がよすぎるではないか。俗悪なバラエティ番組を見させられて不快極まりない気分になった私の気持ちを考えろ。

「…お願いだから……シよう…?」

「…ふん…色仕掛けしたって無駄だぞ…絶対にやらないからな」

何の含みも感じさせない口調ではっきりと言い放ってやると、悔しさに顔を歪めて心なしか目に涙を溜め始めた承太郎。すると彼は何を思ったか急に私の膝の上に乗っかってきた。そしてぎゅう、と。上半身に心地よい圧迫。嫉妬するくらいに白くてすべらかな若い素肌が私の頬にすり寄ってくる。こんなに甘えてくる彼を見るのは初めてで。しようと思えばいつでもキスすることが可能な零距離で発せられる妙に艶めかしい彼の息遣いが私の煩悩を更に増長させた。承太郎の可憐な誘惑に心が揺れなかったと言えば嘘になる。というか、こんなことをされて興奮を覚えない人間など居るわけがないのだ。そもそも人ですらないこのDIOでさえも、彼の高すぎる誘惑スキルには刃向かうことができないのだから。
早くも機能が鈍り始めた頭脳を無理矢理に働かせて悶々と思考を巡らせている今もなお、様々な謎効果が総力をあげて私の股間を持ち上げようとしている。手を出すべきか我慢すべきか取り合えず迷っているフリをしようとしたところで、恐るべき変化球が突如私を襲う。

「ん、ぁ………はっ」

「んなっ…!承太郎…貴様ァ…」

この馬鹿、私の股間に自分のものを擦り付けて勝手に自慰行為を嗜んでいやがった。道理でさっきから下半身がむずむずしていた訳である。

「っは………ぅ…ん」

一瞬で理性が消し飛んだ。つくづく単純な己のヤる気スイッチのシステムが怨めしい。
帽子なんてどこか向こうの方に放り投げて承太郎の髪の毛を掴み、私の肩口に埋まっていた顔を無理矢理此方に向けさせて舌をねじこんだ。苦しそうな声を漏らしていたのも最初だけで、ちょっとしつこく歯列をなぞってやればすぐにもう我慢できない、という風に舌を絡めてくる承太郎。角度を変えながら餓鬼のように二人して夢中になってキスをする。薄く血液が透けた目元は欲を孕んだ赤色に染まっていた。突然に彼の目尻がふにゃりと下がって、塞がれた彼の口元からふふ、と微かな笑い声が漏れた。首を横に振られたので唇を離してやると、しばらくはぁはぁと荒い息を吐いた承太郎がまたもや私にぎゅうと抱きついてきた。最高に幸せですと言わんばかりに私の首筋に鼻を寄せてくすくすと笑う承太郎の姿は高校生とは思えないほどにあどけなくて、普段なら絶対に見せない、ガムシロップとミルクを大量に投入したホットコーヒーのように甘ったるい彼の大好きアピールは正直腰に毒であった。

「DIO……だいすき…」

「…ふん…あたりまえだ…わたしも承太郎がすきだぞ…?」

「すき?……おれはでぃおのことだいだいだいすきなのに…」

「だいだいだいだいだいだいだいだいだいだいすきだ」

「ふふっ………おれも」

さあ驚け。これが私達のデフォである。調子に乗って幸せを過剰摂取し過ぎた結果がこれである。
1分1秒過ぎ行くのが勿体無いくらいに甘くて、暖かくて、あまりにも心地好い時の流れだった。二人してなんの違和感も感じずに幼稚園生並のキャッチボールをしている様がなんだかとても阿呆らしくて。今すぐ世界の中心で「ビバ性春ッ!」とか何か適当な台詞を叫びたいような晴れ晴れとした気分だった。心がムズムズして口元が自然に緩んで、今ならもう何だって出来てしまいそうな感じなのだ、ああ誰にも分からんだろうこの気持ちは。ここまでくればもう顔のニヤけを隠す必要などない。お互いに馬鹿だなあなんて言って小さく笑いあって、熱に浮かされた体をぴったりとくっつけあって、きゅっと小さくなった彼の瞳を捕らえてしまえばもう、承太郎は私だけのものだ。骨張った鎖骨にひとつキスを落として、そのままわざとらしくべろりと首筋を舐め上げれば、たったそれだけの刺激に、ゃ、んっ、と腰をくねらせて頬を染めてしまう愛らしい承太郎の全てが私を溶かした。
ちうちう、と赤子のようにして互いに代わる代わる頬やら首やらを吸っていたらすっかり赤い跡だらけになってしまった。一番見られちゃいけないところだろうがなんだろうが関係無い。子供が初めて買って貰ったおもちゃになんとなく愉快な気分で拙いながらも自分の名前を書き記すように、もっと沢山のキスマークを承太郎の身体中に散りばめて、もう誰も勘違い出来ないように、彼が私の所有物だということを目に見える形で示したいと思った。

「でぃお……はやく…おれのなか、ぐちゃぐちゃってして」

「…言ったな承太郎……もうどうなっても知らんぞ?」

「うん……」

控えめそうに頷いてはいるが、真っ赤に染まったその顔には色濃く期待が浮かんでいる。これ以上は私も承太郎も我慢できそうにない。据え膳食わぬは男の恥、私は迷いもなく彼を裸にひん剥いた。口の中に指を突っ込めば、まるでフェラでもするかのようにねっとりと絡んでくる承太郎の舌。くちゃりと口内をかき回してやると可愛い声を上げ、涙をたっぷりと溜めた上目で此方を見上げてくる承太郎は確信犯だろうか。いや、そんなわけがない。快楽に溺れた彼は猫を被った仕草でいちいち私を誘惑している暇などないはずなのだ。つまり承太郎の行動は全てが「素」なのだ。もう直視できないほどの承太郎大天使っぷりに首ったけである。

ふと先走りを垂らして苦しそうにしている彼の雄が視界に入った。ちょっとした出来心で亀頭をぐりっと抉って強めの刺激を与えてみれば、口端から液体を垂らして可愛い喘ぎをあげながら私の衣服を弱く掴む彼の一挙手一投足がピンポイントで私の心に訴えかけた。でぃおがだいすき、でぃおがすきですきで辛い、と。彼がわざわざ言葉を発しなくとも私には全て伝わっているのだ。無論、承太郎の厭らしい蕾が、私の指を今か今かと待ちわびてひくひくと疼いていることだって知っている。彼を食べ頃になるまでとろとろに溶かしたのは私自身に他ならない。私には彼の期待に応える義務がある。そして、残さず綺麗に彼を戴いてしまえる権利があるのだ。
充分に濡れた指を承太郎の口内から抜く。彼の唾液を絡めた指をアナルに近付け、つんつんと刺激してみると面白いように体をくねらせる承太郎。そのまま奥まで一気に指を挿入する。

「うっあ、はぁああ……!」

「ほら、何処に指が欲しいのだ?自分で動いてみろ」

「…ふっ、…あ、ああんっ!…ここ、んっ…ぜんりつせん…」

「前立腺がいいのか…ふふ、婬乱だなぁ承太郎は」

「ひぅ、あんっ…だって……ひもちいっ、あっ!」

承太郎の前立腺は私のおかげでだいぶ開発されているため、指がほんの少しかすめただけでも相当の快感を拾う。況んやこりこりと指の腹でそこを刺激してやればもう大変である。承太郎は欲にまみれた涙を流しながらあんあんと切ない喘ぎをあげて狂ったように感じいってしまうのだ。
もう堪らない、これだから承太郎とのセックスはやめられない。

「やぁんっ、あっ、りおぉ…ぅん!やっ、そこばっか…あっ!ふっ、やらぁ……」

「気持ちよくて堪らないだろう?」

「んあっ!…ふ、くりくりって…くりってされるのきもちっ…ふっ、やん、そこっ!もっと、もっと!」

このDIOの手によって承太郎がこんなにも善がり、感じていると思うと興奮しすぎて承太郎よりも先に此方がどうにかなってしまいそうだった。希望通りに前立腺を重点的に狙って刺激を与えれば、腰をがくがくと震わせて強烈な快感に流される承太郎。眉を寄せ、口をだらしなく開き、頬を紅潮させながらあられもない台詞を叫ぶ彼の姿は私の心を粉々に撃ち抜いた。
ラストスパートに陰嚢をぐりぐりと容赦なく押し込むと徐々に中が痙攣してきて、しまいにはきゅうっ、ときつく穴が絞まった。

「ああぁああッ!…あぁん、おかしくなりゅ、あん……やらっ、りおぉ…きもちいのとまんないっ、うあんっ!」

「もうイってしまったか…くくっ…女のようにドライでイく気分はどうだ承太郎よ?」

「はぅ、りお…見ないれぇ……うん、っあ…やら、きもひい…ぅあ、おれ、あ…ずっとイってる…あぁん」

限界まで熟れた果物のようにとろんとした顔で弱々しく微笑み、時折びくっ、びくっ、と体を痙攣させている承太郎から発せられる色気といったらもう、そこらのAV女優なんざ比じゃあない。こんなにも18禁な高校生を私は彼以外に見たことがなかった。この表情…いったいどこで教わって来たんだか。

「うゅ…えっ、や、やら、やらぁっ…りおっ!まだイってるっ…のにっ、あん!そこっ、らめっ…そんなはげしく…あああんっ!」

「本当に気持ち良さそうな顔をするなお前は…」

「あんんっ、やめっ…くふっ…もっ、むりらからぁ!」

「無理なわけないだろう?こんなにも私の指をきゅうきゅうと締め付けておいて。そんなことをほざいても説得力皆無だぞ」

「あんっ…りおっ…ひどっ、い…あっ!ふぅん、こえっ、とまんなっ、あああんっ!」

私の首に腕を回した承太郎はすがるようにやめて、やめてと訴え続けているが、私の台詞だぞそれは。これ以上その破簾恥な顔と声で私の気をふれさせないでほしい。一度吹っ飛んでしまったら最後。私のインテリジェンスは、ヘンゼルとグレーテルの様にパンくずを落として道標でも残しておかない限り金輪際二度と戻ってくる事がないような気がするのだ。

「んっ、も、しつこい…あんんっ!…もうっ、だいじょおっ…ぶ、だからぁっ…はぁんっ、ちゃんとっ、解れたぁ…からっ!」

「はぁ?何が大丈夫なのだ?」

「うゃっ…ああもっ、いやら…!あんっ、ふあ…ぁ」

と、ここで思わぬ良案が浮かんだ。
そんなにいやいやと私の指を拒絶するのだったらいっそのこと本当に指を抜いてやったらどうなのだろう。そしてその時、彼は一体どんな可愛い反応を見せてくれるのだろうか。ううむ、考えれば考える程気になってしまう。

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