救われる黒猫




 源吉の家に居候し始めて早二ヶ月。二週間前からだろうか、生活の仕方が変わってきた気がする。
 最初は風呂の回数が減った、毎日入っていたのに今では二日に一回のペースだ。源吉なんかもっと酷い、四日に一回になってる。加齢臭が半端ないからせめて二日に一回にしてくれと頼んだらキレられた。
 次に携帯が止まった。止まったと言うよりか止められたが適切だろう。
 その次は電気・ガス・水道という綺麗な3テンポで止められた。
 最終的に飯が食えなくなった。正確には買えない、だ。
 その状態が三日目に突入したところだった。俺は三日ぐらい飯食わなくても大したことはないのだが、問題は…。

「は…腹減った…」

 今にも衰弱死しそうな源吉だ、こいつは俺の倍は食いやがるから。財布の中身は御丁寧に札ではなくレシートと請求書がつまっていた。
 ため息を吐き、源吉に言葉をかけた。

「源吉、金ないなら俺がバイ…」
「あかんっ!!最近の祇園は荒れとるさかいに外にはだせられるかアホ!!」

 良い提案をしようとしたが、言い切ることは出来なかった。こいつの俺に対する必要以上の無駄な心配が遮ったから。コレのせいで俺はどうすることもできないんだ。
 再びため息を吐いた。二ヶ月前は百万ほどあったのだ。それが…


二ヶ月前、三条駅一階の喫茶店


「で、今回の情報料なんだけどお…」

 CHU-RINは注文したショートケーキの苺を右手で摘まむと、ソレを厭らしく舌でなぞり口に含んだ。と同時に人差し指に付いた生クリームも嘗め取った。
 その光景を源吉と共に痛い目で見ていた俺達の様子が面白かったのか、ニヤけた顔が更にニヤけていく。
 きしょい。そう思ったとき源吉の目の前にずい、とCHU-RINの左手がきた。軽く握られた拳がゆっくりと開きパーの状態になる。それに源吉は困惑してCHU-RINの左手を凝視していると、次に右手が左手のところまでやってきた。右手も軽く握られた状態から二本指が生えてきた。

「7…?」

 俺が声を発すると、源吉の表情が真っ青になっていった。ソレをみたCHU-RINはにぃと笑い、

「70万はザラでしょお?」

と随分と楽しそうに言い放った。
 その金額に抵抗した源吉だったが結局CHU-RINには勝てず70万を支払い、残った30万で生活しようとしたが…、大の男二人が生活するには無理で現在に至ると言うわけだ。

「はあ…」

 今回三回目になるであろうため息を吐き窓を見れば綺麗なオレンジ色に染まっていた。源吉はとうとう体力が尽きたのか煩いイビキが部屋に木霊し始める。その時、玄関のドアが開き誰かが入ってきた。誰だと睨み付けるようにそいつを見ていたら。

「ぴんぽーん、お届けものでぇす」

 CHU-RINだ。両手にコンビニの袋をたんまり持ってきやがった。今日盛大のため息を吐いてやる。
 そして俺の横で爆睡してる源吉のデコを力一杯しばいてやった。

「あーりゃりゃりゃ。やっぱりこぉなってたんだあ。携帯かけても通じないし、数日間電気もついてないし、ガスメーターも動いてなかったもんね」

 そう言いながら靴を脱ぎずかずかと部屋まで入ってきた。袋をテーブルの横に置くと冷蔵庫の中身を確認したり、風呂を見たりとなにやら物色し始めた。
 なにそのストーカー染みた行動は。俺が真の変態の前で固まっていると漸く起きた源吉。目が覚めると同時にコンビニの袋を漁り、ツナマヨにがっついた。

「んぐ…CHU-RIN!!…ぐっむ…助かったで!!」
「食うか話すかどっちかにしろ源吉」

 呆れたように源吉を見やると、お前も食えと海老マヨを渡される。え、マヨ関係しかおにぎりないのか。
 疑問に思いつつ袋を漁ってみるもマヨしかなかった。もう一つの袋を漁ると唐揚げ特盛弁当があったのでそれに手を伸ばした。おお、温かい。
 餓死寸前のところを救われたのは良いが、その偉大なる救世主が今俺の前でAVを眺めてる変態なのだから世の中変わってる。

「…唐揚げうま。」
「チャーシューマヨうま。」
「人妻エロっ。」








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