フクシア
中学に進学して、バスケ部に入って
やたら強いやつらと一緒になって
上級生を押しのけて1年全員でレギュラーになって
ま、さすがオレ?ってかんじ
あいつらのコピーはさすがにできねぇけど
今んとこ、負ける気がしねぇし
そんなことを思いながら授業をサボった
そろそろ春から夏に変わるから、教室なんかにいると暑い
保健室で涼みながら昼寝でも、って思って
校内にいくつかある保健室で、授業中は人気のない部室近くの保健室
こんな時間では保健教諭も不在のときがあるって、サボり仲間から聞いたことのあるそこに行ってみることにした
…んだけどよ
「あ…?」
「え?」
保健室なのに、真面目に教科書なんか開いて勉強してる、こいつに出逢った
=== フクシア ===
「んだよ、先客かよ」
「あの、先生ならいま不在だから怪我とかでしたらほかの保健室の方が良いですよ…?」
「あ?あー…いや、別にそーいうんじゃねーから、サボリに来ただけだし」
「そうなんですね、ベッドでしたら今誰もいないですよ」
「…」
「?」
サボりに来た、って正直に言ってんのにこの対応
こいつもサボりか?って思ったけど、勉強してるっぽいし、なんなんだ?
だいたい、せっかく一人で気楽に寝ようと思ってんのに、誰かいたら気が散るじゃねぇか
「……ハァ、やめたやめた、なんっか寝る気削がれたわ」
「じゃぁ授業行った方がいいですよ?」
「今更戻ったとこで変わりゃしねーって…、で?アンタ、こんなとこで真面目にベンキョーしてなにしてんだ?」
寝る気は削がれた、が、こんなとこで真面目に勉強してるこいつに、少なからず興味を持った
暇つぶしにはちょーどいい
「アンタじゃないですよ、白藤雪姫です、1年です」
「あァ?じゃぁタメじゃねぇか、敬語なんていらねーよ、」
「そうなんですね、でも、あなたの自己紹介をまだ聞いていないので、初対面の人に敬語を使わないのはどうかなって」
見るからに真面目ちゃんってやつだなこりゃ…
完全俺の苦手なタイプ
ま、もう二度と会うこともないだろうけど…
「灰崎祥吾、1年バスケ部」
「灰崎祥吾くん…うん、じゃぁ祥ちゃんだね!よろしく!」
「あァっ?」
なんだこいつ、いきなりあだ名なんかつけてきやがった…!
しかも敬語なくなったとたんなんだ、この満面の笑みは
わけわかんねぇ…ペース崩される
「ダメだった…?祥ちゃん、いいと思うんだけどな…」
「は…いや、」
さっきの満面の笑みはどこへやら、俺が嫌がったのが伝わったのか急にシュンってなりやがった
なんだこいつ、マジ!
「いや、じゃ…ねぇけど…」
何言ってんだ、俺は
「ホントッ?よかったー!あ、私のことは雪姫で良いよ!」
「あー…おぅ」
キラキラした目で喜んで
コロコロ表情の変わる変な奴
それがこいつの第一印象だった
= * = * = * =
「ほぉ…んで、その幼馴染ってのもバスケが好きで、この学校にってか」
「んーそれはひとつの口実で、実際はこういう保健室とか、医療設備?が一番しっかりしてる学校で一番近いとこっていう条件でここになったんだけど」
なんでこんなとこにいるのかっていう質問に、律儀に説明しだした雪姫
話を聞けば、病気でまともに小学校すら行ったことなくて
病院で出逢った幼馴染ってやつのおかげで外に出れるようになって
保健室通いだが、学校に通えるようになった、と
俺の足りない頭じゃ難しいとこはイマイチよくわかんなかったけど
だいたいはそんな感じらしい
「まぁ、てっちゃんは下手っぴだから3軍止まりですねって言ってたけど、でもすっごいたくさん練習してるんだー」
「はぁん、随分とそのオサナナジミのテッチャンってやつのこと気になってんだな」
「だって、私にはてっちゃんと、別の中学に行っちゃったもうひとりの幼馴染しか友達いないし、気になるのは当然だよ!」
「―――…、」
からかってやるつもりで言ったのに、笑顔でそんなこと言ってきやがった
しかも、友達が2人しかいねぇとか…
病人ってのは、そんなに寂しい人生送ってんのかよ
しかも、それで十分幸せって顔しやがって…
なんだ、これ
なんでか知んねぇけど、すんげぇムカつく
「んじゃ、俺は中学で出来た友達1号ってやつか?」
「っ…え?」
「…っ!」
な、何言ってんだ俺!馬鹿か?!
何が友達だよ、ガキじゃあるまいし…って
なんでそんなきょとん顔してんだこいつ、ックソ!ハズッ!
「っんでもねぇよ!」
「友達、」
「あ?」
「友達…なってくれるの?」
「っ…、?!」
な、んだよ!
なんだよ!その嬉しそうな顔!
不覚にも、可愛いなんて、思っちまったじゃねぇ…か、ああああああックソ!マジ調子狂う!!
「か…」
「か?」
「勝手にしろ…!!」
勢いよく立ち上がって、保健室から飛び出した
運悪くチャイムが鳴って、授業終わりの部活メンツに会っちまった
多分、いま、俺…
顔真っ赤だ
>>to be...?
▽フクシア
アカバネ科、落葉低木
季節は6〜9月
原産地は中央、南アメリカ、ニュージーランド
花の色:白、桃、紅、紅紫
花言葉;信じた愛、恋の予感、交友、信頼、センスの良さ、上品な趣味、暖かい心
あとがき
またもやお久しぶりです…orz
灰崎くんでした
全然灰崎くんのキャラつかめてません
だって!あれしか!出てないじゃない!
これでも本誌で灰崎くんが出てからずっと考えてたものです_(:3 」∠)_
すでに単行本でも灰崎くんの出番は終わってしまいましたね(´_ゝ`)
主人公の名前あんまり出てきてないし…
次は!多分!
緑間…との、出会いかも?
ここまで読んで下さりありがとうございました!
2013.1.7.
倉紗仁望 拝
- 3 -
[*前] | [次#]