再臨の時

[heroine side]

目の前いっぱいに光が漏れだした。その輝きに目が眩む。次の瞬間、私は地面に足を付けていた。身体のどこにも異常は見当たらない。消えかかっていたのが嘘のよう。目の前を見据える。四大を連れた、凛々しく立つ精霊の主の背中が見えた。

拘束から解かれていたジュードやアルヴィンは久しい仲間へと一歩、また一歩と足を進める。

「ミ……ラ……」

ミラはジュードの口に人差し指を当てる。その光景に胸に鈍い痛みを覚えた。ルドガーが複雑な表情で「大丈夫か」と私に向かって言う。「大丈夫」。そう返した私の表情ははたして本当に大丈夫だったのだろうか。

「やっとお出ましだね、ミラ=マクスウェル!」

リドウの声を耳にミラは『ミラ』の剣を持っていたエルに近づいた。エルは戸惑った様子で顔を上げる。

「その剣を貸してもらえるか?」

困惑に包まれた表情でその剣を差し出したエルにありがとうと言うミラ。そしてその剣をリドウに向けた。私も今はリドウのことだけを考えよう。静かに構えれば、合わせるようにルドガーも双剣を構えた。

「相応の礼をさせてもらおう」

四大をリドウに向けて放つ。だけどリドウは飄々とした動きででかわしてしまった。彼は、寝起き悪いんだ、と大して気にもとめない様子で反撃にかかっる。ミラ一人に任せるわけにもいかない。ルドガーとリンクして応戦状態へうつる。面白くなってきたと笑いながら向かってくるリドウに対してエルが悲痛な声をあげた。

「おもしろくなんてないよ、ばかぁ!」

ミラが前線に突っ込み、背後から強襲するジュード。二人の攻撃を避けたところをアルヴィンが斬り込んだ。先ほどとは違う、三人の一体感。一筋の涙が頬を伝った。
反撃の隙を与えないように私もルドガーも皆の攻撃の隙を狙って戦う。が、うまく決まらない。皆のようにリズムを合わせることができない。

(私…役に立ってない……)

「なにボケッとしているんだい、偽物?」

目の前にメスの切っ先が。私はとっさに腕を構えることしかできなかった。ぐんっと腰に腕をまわされ思いきり引っ張られる感触。リドウからの攻撃は頬を掠めるだけにおわった。彼から十分な距離をとったことを確認し、顔をあげると恐い顔をしたルドガーが私を見おろしていた。ありがとうと言おうとした時、頬が突然熱をもつ。熱くて、痛い。パシンという音を耳に、私は目を丸くした。そして、殴られた部分を押さえて、息を吐いた。

「……ごめん、」

「こないだの仕返し」

「こないだって……」

私がルドガーに手を出すことなんて……と首を傾げて思い出したのは以前のオーディン戦のこと。ルドガーってば大人げない。と思うことのできる私はまだ戦えるようだ。人をおちょくるような笑みを見せたルドガーに「ルドガーって意外と根に持つタイプなんだね」って言えば「あの時のパンチは忘れるはずないだろ」って殴られたであろう自分の頬を慰めていた。

「……ありがとう、目が覚めた」

「お互い様だな」

ピンっとリンクを繋ぎ直す。戦っている皆に続くよう拳を振り上げた。皆の呼吸に合わせるように。皆と共にこの場を収束させるように。

「この拳はみんなを守るために!」

右手に力を溜める。どこからか暖かいなにかが私の右手を包み込んだ。皆の一斉攻撃に一瞬の隙がうまれる。その瞬間に、打ち込む!

「クリティカルブレード!!」

骸殻を纏っている彼に確実にダメージを与えた。お腹を押さえた彼にもう一撃と、拳を握りしめるがその瞬間目眩が自分を襲う。

「………っ、」

リドウはその隙にと言わんばかりに距離をとる。
顔を歪ませて笑う彼はこの調子で道標集めよろしく頼むよと余裕をかましていた。

「逃がすか……!」

「それ、逃げられるフラグだぜ?」

彼の言葉を耳にした瞬間、煙幕が目の前に広がっていき煙が晴れた頃には勿論リドウはそこから姿を消していた。離れていた人質はリドウがいなくなったことによりそれぞれ動き出した。眼鏡をかけた穏やかな表情の女性が一歩前に出て私たちを一瞥する。入ってきたときに声をあげたこの人がマルシア首相だ。


「ありがとう、クランスピア社のエージェントね?」



未来へ繋がる
(よろめく私の体を支えてくれたときのルドガーの顔が強ばっていた)

2015.2/3



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