ルダー




信じらんないッ!!

馬鹿!! もう知らないッ!!





だいっきらい!!!!









大凡思いつく限りの罵倒を並べて、部屋を飛び出す。

二人で借りたマンションなのに、ここのところ何故だか

秋山がいると、とても狭く感じる。



とぼとぼと行く宛もなく神室町を歩き回れば

季節は折しも早い冬支度を始めている。



何故かセットしたはずのアラームが鳴らなかったことから始まり、

通勤電車の中で痴漢に遭ったり、定期がうっかり切れていたり。

嫌いな上司にグサリと刺さるイヤミを言われたり、

昼食は苦手なお局様の機嫌をとって、悪口に同調。

上手くセットできなかった前髪は、気に入らない形に曲がってしまって

今月は残業していない日がないのではないかと思う程忙しいのに

全くひとつも達成感を感じない。



そんなイライラを抱えたまま帰宅すると、秋山が既に帰宅していた。

なまえの嫌いなタレントが出ているテレビ番組をつけていることに対してか

ガラスのテーブルの上に、直にグラスを置いていることに対してか

靴を揃えないことに対してか、洗面所の電気がつけっぱなしだったことに対してか。



なまえのイライラは今日最高潮を迎えた。



そして。



「どしたの、なまえちゃん。そんな怖い顔して。」



この一言で、完全に頭に血が上ってしまった。

どうしてこんな男と付き合ってるんだろう。



情けなくて泣きそうになりながら、相変わらずなまえの脚は

フラフラとどこへ行くでもなく神室町をあっちへ行ったりこっちへ行ったり。

さっきバッティングセンターが見えたと思ったのに、もうすぐドンキホーテにたどり着く。



こんな日はお酒を飲んで酔っ払ってしまいたいところだけれど

一人で飲むのも興醒めだし、どうせなら誰かに愚痴のひとつでも聞いて欲しい。

なまえは着信履歴を何度かスクロールし、今一番会いたい番号に電話をかけた。






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