花は、ズケズケものを言う割に心根が優しい。

もうすぐ神室町の駅に着く頃だと行っていた花を無理やり引き戻し

たった数分前に通ったであろう天下一通りの適当なバーに入る。



「・・・で?社長は何て?」



半泣きになりながら事の顛末を訴えると、なかなか冷たい表情で返事が帰ってきた。

呆れているような、そんな顔。



「知らない。追いかけても来ないし。」



ふぅんと呟いて、グラスを傾ける花。

花は秋山となまえの関係を勿論知っているし、こうしてよくなまえと飲みに行く。

どちらも神室町から離れた出身のせいか、自然と意気投合した仲だ。



「・・・私のことなんて好きじゃないんだ。」



うーんだかあーだか、歯切れの悪い返事で返す花に少しイラッとする。

更年期なのだろうかと少し酔った頭で考えてしまう。



「ま、社長には社長の思う所があるんでしょ。」



あまりに何の意味もないオチに次の会話が続かず

お互いちびちび舐めるように飲んでいたグラスを一気に空けてしまう。

今日は疲れのせいか、いやに酔いが回るのが早いような気がする。



なまえは薄らと膜が張ったように回転の鈍る頭で

何をあんなに怒っていたのだろうか、思い出そうとしていた。



秋山のことは好きだ。

たぶん、好いている。だって恋人だし。

なのにどうしてあの男はあんなに無神経なのだろう。

気の利いた言葉のひとつも掛けてくれないのだろう。

『年上の男性』なのに、全然素敵に扱ってくれない。

ムカつく。

いらいらいらいら。



「・・・ねぇ、花ぁ。」



なまえ同様、アルコールで少しぽわんとした花が

しぶしぶながらなまえの突然のおねだりをきいてくれたのは

やっぱり彼女が優しいからだと、少しいらいらが消えていった。









prev next









「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -