Split
平日で明日も朝早いというのに何をしているのだろう。
寝静まったマンションの一室で、煌々と照明を付けてなまえはスポンジを片手に風呂掃除に没頭していた。
さっきまではベランダに面した窓ガラスをピカピカに磨き上げていて
その前はキッチンのシンク周りを擦り続けていた。
お陰で家中は大晦日の大掃除を終えた後のように清潔になっている。
「なぁー、ほんま悪かったって。」
浴室でソープラックの隙間ひとつひとつを丁寧に磨き上げるなまえの背中に
もう何度目かわからない謝罪を繰り返す真島。
取り憑かれたように掃除を続けるなまえは振り向きもしない。
「別に怒ってないですし。謝ることじゃないです。」
少しも手を休めることなく浴室中を磨き上げたなまえが
シャワーで泡を流しながら言う声に抑揚はない。
「もー、機嫌直しぃや。」
「怒ってないですって。マジで。」
タオルで足を拭きながら、あとどこを掃除しようかと考える。
年に何度かなまえはこうして掃除に没頭して、家中を磨き上げる。
そういう時は大体悩んでいる時か、心を落ち着けようと試みている時だ。
「また買うたらええやん。買うたるし。」
「別にいいです。」
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