注: 花ちゃんと女子会をしたょッ☆彡 的なノリです。
  龍如メンバーをコケにしています。
  心の広い方のみどうぞ。





















子会をするよ






BGM代わりに古い映画をつけて、シャンパンと洒落たツマミを用意した。

お気に入りの、ゴールドのラインが入ったシャンパングラスは4脚。

男友達が来た時は絶対に出さない、この時の為のとっておきのグラス。

ふかふかの大きなソファには、いつの間にか勝手に定位置が決まっていた。



「とりあえず、今年も一年お疲れ様でした。」



カチン、と静かにグラスを合わせてグラスに口を付けると

フルーティーなアルコールの味が広がってとても気分が良くなる。

なまえの部屋で行われる女性だけの忘年会は、もう何年も恒例になっている。



「薫、いつまでこっちにいるの。」

「年内には戻るかなぁ。」



多忙な狭山は律儀にも、年末年始には墓参りに日本へ戻って来る。

泊まればいいのにとのなまえの申し出を断る、彼女なりにこの街には思う所があるようだ。



「あんた相変わらず忙しいね。」

「片瀬に言われたないわ。」



シャンパングラスを一番に飲み干したのは片瀬だった。

確かに、あの厳しい峯の元で働く彼女も忙しくないとは言えないだろう。

空いたグラスに、手酌でシャンパンを注いでいた。



「スケジュール合わせるの、いつも大変なんだけど。」

「ごめんね、色々やらせちゃって。」



会場がなまえの家ということもあって、いつも幹事はなまえの役目だ。

まぁ皆気を遣ってか、色々美味しいものを持ってきてくれるのはありがたい。

なんせ金には困らない、バリキャリの独身女性の集まりだ。

特に花が毎回厳選して持ち寄ってくれるお持たせは絶品だ。




「今年も美味しい!花、やっぱ天才。」



今年の彼女のお持たせは、珍しい食感のチーズケーキだった。

なんでも予約が1年待ちとかで、去年の忘年会が終わった次の週に今年のお持たせを聞かされた時から

なまえを始め、他の2人もワクワクしながらこの日を待ったものだ。



「あと社長から、これも。」



そう言って花は細長い紙袋から、素敵な濃緑のボトルを取りだした。



「テタンジェ…!」



店で出すシャンパンを、お土産代わりに譲ってくれたという秋山の懐の深さにいたく感動する。

まぁ懐が深いと思うのはこの日だけで、いつも事務所で花に怒られている姿を見ると

やっぱり男は働き者が良いなと思ってしまうのだけれど。



「毎年そろそろ誰か結婚しても良いんじゃないかって思うのよね。」



片瀬がまた手酌でシャンパンを注いでいる。

彼女はいつも最初の1時間はハイペースで、それからちびちび熱燗に移行するのだ。

あと少ししたらキッチンへつけに行こう。



「結婚どころか、恋人も居てへんやないの。」

「薫には桐生さんが居るでしょう。」



桐生、と名前を出した花に狭山が困ったような顔を向ける。

いつの間にか彼らの恋愛は終わっていたし、国外へ行ってしまった狭山からも

堅気になった桐生からも、進展したという情報はなかった。



「うーん…、ヨリ戻す気ィもないしなぁ…」

「そっかぁ、まぁ、生活あるからねぇ…。」



今は堅気とはいえ東城会四代目の男と、刑事の女がくっつくわけにはいかないのだろう。

なんだかしんみりしてしまったので、もう一本シャンパンを開けた。



「なまえはどうなん、浮いた話、ないの。」

「私?私もないよ。」



突如話題を振られて、当たり前の様に返してしまった。

なんだか自分に悔しくなって、つまみのオリーブを2つ食べた。



「なぁに言ってんの、散々言い寄られてる癖に。」



片瀬が笑いながらなまえを冷やかす。

不幸にも、東城会に縁のあるこの女4人の情報網は侮れない。

なまえのことを峯が気に入っていると言い張って片瀬は譲らない。



「堅気じゃないとイヤとか、そんな感じ?」

「いやぁ、別にそこはもうどうでも良くなったっていうか…」



そりゃあ最初は怖かった。

あんまり関わり合いになりたくないとも思っていたし。

けれどもあんまり長く付き合いすぎて、あれ、実は悪いひとじゃないんじゃない?なんて

一般人としての感覚がマヒしてきているのに、薄々気付いている。



「どんな男なら良いのよ。」

「えー?んー、男気はあった方が良いよね。」

「まぁ、あの人たち男気『だけ』はあるからね。」



うんうん、と一同が頷く。

そりゃあ性格がカッコいいに越したことはない。



「あとは…うーん、賢い人は素敵だよね。」

「あ、今何人か振り落とされたね。」



学生の様に馬鹿騒ぎをする年齢はとっくに越したし、正直この歳になると

理解が悪い人とおしゃべりをするのはストレスになる。

頭の回転が速いに越したことはない。

片瀬の言う『何人か』に誰が含まれているのかは深く突っ込まないでおこう。



「あと当たり前だけど優しさね、大事。」

「会長残念。」

「今ので一気に絞られてきたわ。」



短い相槌を打つ片瀬がケタケタ笑っている。

そろそろ本当に熱燗をつけに行かなければ。

会長可哀想と連呼する片瀬の日頃のストレスが伺える。



「欲を言えばお金はあった方が良いと思う。」

「うわぁ、お兄ちゃん哀れ。」



狭山が龍司をお兄ちゃんと呼ぶようになったのはここ数年だ。

年に一度の墓参りには一緒に行っていると聞いて、心が暖かくなった。

最初の頃こそ、龍司から『久々に会う妹との接し方がわからない』なんて相談が来ていたけれど

最近は会えば『あいつは年々キツくなっている』と零される。



「男気があって優しくて、頭が良くてお金持ち?」

「そんな人居れへんって。」



別に高望みをしている訳では無いと思う。

誰しもが恋人に求める、それなりの条件だと思うのだけれどやっぱり欲をかいているのだろうか。

狭山となまえ、片瀬がお酒を片手に『だよねぇ』なんて笑うのを

花がぽつりと遮った。



「社長、とか…?」



男気があって、優しくて、頭が良くて、お金持ち。

全ての条件を満たしているといえば、そうなのだけれど。



「なんか違う、っていうか…」

「うん、優し過ぎるというか、優しいっちゃ優しいんだけど…」

「なんていうか、こう…」



胡散臭いんだよね。とハモッてしまった声に

花の声が混じっていたのは気のせいということにしておこう。



「六代目は?」

「イヤ。峯さんに殺されそう。」

「真島さんは?」

「命がいくつあっても足りないから、賢者の石が手に入ったら考える。」

「谷村君は?」

「優しさ。これ大事ですよ。」



だよねぇ、と笑いながら机を見渡せば

順調におつまみとお酒が減ってきている。

外はとても寒いし、戦わなければならない現実が彼女たちの細い肩に圧し掛かる。

洒落たグラスと美味しいツマミ、ゴージャスなお酒とイイ男の品評会。

恋人と過ごすロマンチックな夜も良いけれど

これはこれで、案外得難い幸せのひとつだったりする。















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