不思議の国だよ。
最近本当に働き過ぎたのかも知れない。
それか、呑み過ぎたのかも知れない。
だってこんなこと本当にあり得ない。
品田に、うさ耳が生えている。
「ちょ、ちょ、辰雄、え、なんで」
気が付くとなまえは一面に芝生の生えた、広い敷地に座っていた。
代々木公園にもこんな所はなかった気がする。
都内とは思えない静けさの中で、うさ耳の生えた品田は急いでいるようだった。
「あ、なまえちゃん!ごめんね、俺、急いでるんだ!」
言うなり、品田は一目散に駆け出した。
うさ耳をはためかせながら。
「辰雄待って!正気?捕まるよ!」
なまえは一生懸命追いかけたけれど、品田はどんどん遠退いて行った。
犯罪スレスレのうさ耳を目印に走り、息が切れた頃にふと品田が視界から消えた。
見失ったかと足を止めて、きょろきょろと見まわす。
「えー…、あいつホントやばいって…うわぁ!!」
何時の間にやら、大きな穴の間近に来ていたようだ。
芝生に足を取られて穴の中へ滑り落ちる。
服が汚れる、と思ったのも束の間、穴はどこまでもどこまでも奥へと続いていた。
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