これホントやばいんじゃね、と思った頃に尻餅をついて地面に着いた。
小さな空間になった終着地点には小さな明かりがついていて、そしてとても小さなドアが付いていた。
「辰雄ー?え、ちょっと、誰かぁー??」
救助を求めようと声を張り上げても、地上は遠く明かりすら見えなかった。
ドアは小さすぎて通れる気はしないし、なまえの体力と根性では地上まで這い上がれる気もしなかった。
「なまえお姉ちゃん、どうしたの?」
足元で声がしてふと見下ろす。
聞き慣れた声は、最近少し大人びた気もするけれど昔のままだ。
「遥ちゃん!大きくなって…え、小さくない?」
足元の遥は満面の笑みを湛えているが、身長は10cm程度に見受けられた。
なまえは遥を潰さないよう慎重に屈んで、彼女を掌に乗せた。
「なまえお姉ちゃんこそ、どうしてそんなに大きいの?」
「いや、遥ちゃんが異常に小さいんだよ。」
頭の上に?を浮かべる、遥は腕組みをして考えて居る。
本当に天使かと思った。
「やっぱり、なまえお姉ちゃんが大き過ぎるんだと思うよ。ほら、これを飲んで。」
そう言うと遥は何処からともなくレッドブルの缶を取り出した。
何、翼を与えて地上に戻してやろうって魂胆かな。
「ありがとう。とりあえず飲んでみるね。」
「うん。あ、でもその前に下におろしてくれる?」
遥に言われるまま彼女を床の上にそっと置いた。
なまえが缶に口をつけたのと、遥が危ないからと呟いたのはほとんど同時だった。
「うわ、うわ、うわうわうわ。」
一口飲むと、なまえの身体はどんどん小さくなって行った。
翼を与える所の騒ぎじゃないじゃん。
「ちょっと、縮んだんだけど!遥ちゃーん!」
大声で呼んでみても、遥はもう見当たらなかった。
元々昇れるとも思えなかったけれど、地上まで戻るのはもう完全に不可能だったし
ちらりとドアを見遣ればちょうど通れそうな大きさになっていた。
仕方がない、あのドアをくぐるしかないようだ。
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