年越しをするよ。
年内にやっておきたい仕事も粗方終わって、忘年会なんかもなんとかやり過ごした。
そろそろ仕事収めの寒い日に、マンションへたどり着くと
エントランスで大吾が寒そうに立っていた。
「どうしたの。珍しいね、ひとり。」
「ちょっと相談したいんだ、いいか。」
お茶でも飲んでいくかと問うと、大吾は寒そうに身体を縮めたまま頷いた。
冷え切った部屋の暖房を入れ、温かいコーヒーを二人分淹れる。
お客様用のマグカップは柄の揃っていないものがいくつかあるけれど
どれが彼のものだか、もう決まってしまっていた。
「なまえさ、峯のtwitter見てるか。」
熱いコーヒーに息を吹きかけながら首を横に振ると、大吾が携帯を取りだした。
最近は忙しさにかまけて、まともに友人からのLINEすら見ていない。
大吾がスライドさせる指の先を追うと、なんだか見覚えのあるアイコンだった。
ファンキー且つ禍々しいアイコンは『全物件買収してしまってやることがない』とか
『唯一の敵は銀次』とか呟いていた。
「…峯くん、そんな桃鉄やりたかったのかな。」
いつか彼が提案した桃鉄を、3人揃ってにべもなく却下したことを思い出す。
そういえば峯は拗ねた時、目線を0.5度程下に下げる。
「年末、徹夜で桃鉄だね…。」
なまえが呟いて大吾と顔を見合わせると、彼は少し救われたような
それでいて面倒臭いと顔に書いてあるような、微妙な顔をしていた。
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