その日の内に峯と品田に連絡を取り、空いている日にちを確保した。

大吾の予定は確認するまでもない、峯が全部把握してくれている。

せっかくのイベントに4人では盛り上がりに欠けるということで

秋山と花を招待して、とある土曜の夕方6時に北千住で落ち合った。

花の着付けは、なまえが担当した。



「やぁやぁ、お待たせしましたぁ。」

「おぉ、良いねなまえちゃん。浴衣だ。」



集合時間を3分過ぎてしまった、目的地には既に皆揃っていた。

全員浴衣着用とのお触れを出していたのに、品田は甚兵衛だった。



「辰雄、それ浴衣じゃないよ。」

「わかってるよ。でもこっちの方が動きやすいんだもん。」



なまえが突っ込むと、品田は悪びれもせず、如何に甚兵衛が動きやすいかを屈伸して表現していた。

別に動くことは想定していないはずの今日、内容を知らないのは大吾だけだ。



「峯くんも浴衣似合うね。」

「あぁ、どうも。」

「大吾はなんか、着慣れてる感出てるね。」

「まぁ、そうだな。」



仕事柄、自分で着付けだってできてしまう大吾にしてみたら

浴衣なんて心もとない、格の低い衣装で別にイベント性なんて感じないのかもしれない。

それでも、全員が浴衣で揃えばそれなりに雰囲気は出るものだ。

なまえは満足そうな目線を峯に投げかけると、彼もほんの少し笑ったような気がした。



「どうしたんだ、今日は。」



峯に言われるがまま浴衣を着せられ、言われるがまま東東京まで拉致された大吾は

これから何が起こるかを知らない唯一の人間だ。

まぁまぁと宥めすかしながら、総勢6名でだらだらと夕暮れの下街を歩いた。

時折指をさす人がある、あれはきっと怖いからだとか、いつものような理由ではなくて

あんまりにも風流な一向を羨んでいるのだと思いたい。

徒歩数分で着いた目的の場所に来ると、大吾は目を見開いて驚いた。



「じゃーん、屋形船でーす。」

「おぉ…!」



海、プール、フェス、花火大会、BBQ等々。

夏のイベントは楽しそうで、それでいて面倒臭そうで、腰が重い。

峯や品田と相談した結果、大吾が喜びそうな夏の風物詩といえば

隅田川の屋形船で川下りじゃないか、と出した結論は当たりだったようだ。



「ささ、行きましょ行きましょ。」

「ほら、早く。」



花となまえが大吾の両手を掴んでそそくさと屋形船に乗りこんだ。

両手に花だねぇ、と秋山が下駄を鳴らしながらついてくる。

女性の着付けは何かと手間や時間がかかる、昼過ぎから集合して着付けた二人は

実はお腹がぺこぺこなのだ。



「俺、船酔いしそう。」

「コラそこ盛り下がること言わない。」



品田がちょっと青褪めた顔で乗りこむのを、なまえが振り返りざまに叱責した。

浴衣の一向の中で甚兵衛姿の彼は、ともすると寝起きのヤンキーのようにも見えた。













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