さん








「炯至くん?」

ひょっこり顔を出した男に、黒子は不思議そうにいった。炯至と呼ばれた男も、そんな様子の黒子ににっこり笑って持っていた紙袋を渡す。


「よかったー!間に合った!てっちゃんお昼ご飯買いに行くトコだったんでしょ?」

「はい、」

「はいコレ。玄関に忘れてたから!」

「そうだったんですか・・・ありがとうございます、炯至くん」

いえいえ、てっちゃんの為ならお安い御用ですよ、なんてぽわぽわと、まるでそこからマイナスイオンが出ているかのように黒子と男は話す。

その様子にびっくりしたのは桃井や赤司も含めキセキの世代全員だった。


「なぁ、あれ誰?」

「知らないしー、黒ちんとられたー」

「誰もとってないのだよ。」

「なんかテツくんに似てない?」

「あー、なんかわかるっス!なんだろ、雰囲気?」

「ふぅん、じゃあテツヤの親類かな?」

赤司がそういうと、え、と驚いたように赤司の顔を見てそれから件の男をみた。

確かにそう言われてみると、薄い色素は黒子の関係者だと納得がいく。黒子の水色な色素よりも薄くむしろそれは白に近い。顔はそう似てないが、各パーツ・・・特に眼が黒子よりも少しばかりたれ目だが印象深い澄んだ水色は同じだ。


「そういえばてっちゃんの部活見に来るのは初めてだね」

「・・・そうでしたっけ、」

「うん。で、ええと、監督さんか顧問の先生に挨拶しときたいんだけど・・・大丈夫?」

一応身内だし、ほら、今後の為にもね

なんていったが、生憎と今日は2人とも来ていなかった。普通、監督も顧問もいない状態での練習は何かあった時のために禁止されているが、そこは何様俺様赤司様である。その絶対的な信頼によって、滞りなく部活は進められていた。

ーそんな事を部外者の炯至くんに言って通じるはずもないですし・・・ここは赤司くんにアドリブで頑張ってもらいましょう

黒子はそう決意すると、部長である赤司を紹介しようと声をかける。


「赤司くん、ちょっといいですか?」

「なんだい?」

「あ、部活中にごめんね。監督さんか顧問の先生に挨拶しときたいんだけどダメかな」

申し訳なさげにいってくる男に対して、赤司は黒子をちろりと盗み見た。男の後ろ手にいた黒子はすみません、とジェスチャーで返した。何となく察した赤司は男に判らないように黒子に対して頷いた。


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