番外編 | ナノ


幼い頃のちいさなあやまち。


きっかけはなんだったのか。
それは素直になれなかった自分が犯した友だちを傷つける行為。

ただ悔しくて悔しくて悔しくて、哀しくて・・・

小学生な自分が憎かった。














「やーい!オマエ#白神#からてっちゃんなんて呼ばれてんのかよー!だっせー!」


はじまりは男の子のひとこと。

小学3年の春のしばらくたったその日。
人もまばらな放課後の教室。
黒子は担任の先生に呼び出された同じクラスの炯至を待っているときだった。


「え、?」


最初、黒子は自分に言われている事だとは気がつかなかった。炯至と出逢ってからは、炯至と2人1セットの様な扱いになっていた。なぜなら、影が薄い黒子を見つけるのはいくら大人といえど至難の業ではなかったからだ。幼児という小ささも加わって、毎回遠足やイベントの度に消えては炯至に見つけられるというものを繰り返し、保育園の先生は早々にギブアップした。

そこから、黒子の世話係というか発見係というか。とりあえず炯至と黒子は何をするにしても一緒にいた。別にそれがイヤ、というわけではなくむしろ黒子はそれを喜んだ。
つまりは、いまだに影が薄い黒子は自分に話しかけられていることだと気づかなかったのだ。



「え、じゃねぇし。オマエだよ黒子!ちゃん付けとかマジオンナじゃねぇの?」

「わかるー!黒子て女子みたいだよな!」

「え、え??」


こないだまで同じクラスだった永野がいきなりそう絡んできたので驚いた。同じく、隣にいた原が永野に同意する。



「だから黒子ちゃんはこっちくんなよな!」

「オマエ女子だろ!女子と遊んでろよ」


黒子はよくわからなかった。
つまり、どうして永野に絡まれているのか?どうしててっちゃん、と言うあだ名が女の子っぽいのか。どうして、そのように言われなくてはいけないのか

てっちゃんとは黒子にとって大切なあだ名だ。

保育園に通っていたあの日、炯至がつけてくれた大切な呼び名だ。自分を見つけてくれた名前なのに、どうして・・・


ぐるぐる思考が定まらない。
そうこうしているうち、永野と原は何も反応がない黒子に飽きたのか、行こーぜ、と学校を後にした。








「てっちゃん!遅れてごめーんね(笑」

「・・・っ!」


いつの間に時間はすぎて。
ばたばたと職員室から急いで来たのか、炯至が勢いよくばん!と教室の扉をあけた。
ホントごめんね、まさやん先生が離さなくってさ!と謝ってくる炯至に、黒子はびく、とワンテンポ反応が遅れた。

黒子に気づくのが遅れて炯至がびくつくのは多々あるが、炯至に黒子が気づかなかったことはない。たったそれだけの反応で、炯至は黒子に何かしらあったのだと気づく。


「てっちゃん・・・?どうしたの?えと、待たせちゃってごめんね、怖かった?」

ふるふる。
泣きそうだ。
黒子はその顔を見られたくなくて、炯至に抱き着く。


「寂しかった?」

ふるふる。
こうなるとこの幼なじみは案外頑固だ。
3歳からの付き合いで、炯至はさとる。

絶対になにかあった。

自分のいない、先生に呼びたされているとき。

炯至の眼が鋭くなる。
だが、抱きついて顔を隠している黒子はそれに気づかなかった。あくまでも、黒子を怖がらせないように。声色は優しく黒子にいう。


「てっちゃん、言ってくれないと・・・わかんないよ?」


それでも黒子は抱きついたまま口を割らない。


「・・・いきなり泣くなんて、何か・・・あったね?」


びくり。
黒子は炯至の不機嫌さをその声色から感じ取ったのか、先ほどよりも身体を強ばらせる。
炯至はそれに気づき、ふ、と肩の力を抜く。


「うん、わかった。聴かないどく」


炯至は脅えてしまった黒子に、両手で頬を包み込み上を向かせ、ちゅ、と瞼にキスを落として頭を撫でる。もちろん、怖がらせちゃってごめんね、と一言も忘れず。

だがその裏で今はね、なんて炯至が思っていることはつゆ知らず。



それから、何日かたった日の帰り。
その日は黒子が1人で職員室に行ったときのこと。たまたま司書の先生と新しく入る本の事で少し長話しをしていた。


「せんせー!永野くんと原くんと#白神#くんがケンカしてる!はやくきて!」

「え?!」

ばたばたと何人かの女子児童が慌てて職員室に来たかと思うと、ノックするヒマもなくそう告げた。

#白神#炯至という人物は、ここでは優等生という括りにはいる。成績は上の中といったところで性格も先生受けよく。友だちも多く社交性もあるので、信頼にたる人物として認識されている。以前聞いたことがあるが、炯至いわく、そうしときゃなんかあったとき都合がいいんだよ、と。黒子からしたら嘘くさいことこの上ないが、事実そうである。

その人物がケンカ。

職員室がざわついたのはその理由があったからだ。


(炯至くん!?)


そんな炯至と幼なじみをやっている黒子なおのこと驚いた。

何かあったときて、なにやってんですか!

と。黒子は焦りながらも、きちんと司書の先生に断りをいれて炯至がいるであろう教室まで急いだ。



「永野てめぇ!まだ言うかこのクソ野郎!」

「#白神#こそしつけぇんだよ!」

「やめなさい!2人とも!!」


現場はなかなかに荒れていた。
黒子が教室についたとき、帰り際だったはずが結構な人数の人が野次馬になっていた。職員室に駆け込んだときに永野と原と#白神#と言っていたが、そのうちの1人の原は気絶していた。どうやら炯至にやられたようだ。
マウントをとっていた炯至は教師から抑えられている。永野もやり返そうとしたが、同じように教師からとめられた。

当事者の2人は指導室いきとなったが、原だけは炯至にやられKOされていたので保健室行きになった。

黒子はなにがどうなっているのかさっぱりだった。

とりあえず炯至くんに話を聞かないと・・・

そう思い、炯至のランドセルと自分の分を取りに人が散っていく教室に入った。
ランドセルを手に取り炯至の元へ行こうとすると、黒子、と。先ほど炯至と永野を連れていった教師が黒子を呼び止める。


「はい、」

「永野がこの問題は黒子との問題だからって言ってるが、なにか知ってるか?」

「え?」

「なんか知ってるなら指導室についてきてくれ。#白神#はお前を関わらせたくないみたいだが・・・」


それをきいて、黒子は何日か前の放課後のことを思い出した。









「どうしてケンカなんかしたの?」

互いの担任もよばれ、それぞれに話をきいている。永野の担任の女教師も同じようにきいた。

炯至はというと、知らぬ存ぜぬで黙秘権を行使中だ。

こんこん、

その時、指導室のドアがなった。
失礼します、といって入ってきたのは、先ほど炯至を止めた教師と黒子テツヤだった。


「なんで、てっちゃんが・・・!」

永野は反応がないが、炯至はガタン、と立ち上がった。大凡を理解したのか炯至は永野を睨む。


「永野から今回のケンカは黒子が関わっているそうだからな。事情をきくついでに来てもらった。」


その言葉をきいて、炯至は苦い顔でち、と舌打ちをする。幸い、舌打ちは誰にも聞こえなかったのかお咎めはない。黒子をつれてきた教師は、炯至をみて、お前が言わないと黒子から聴く。無言の応酬でそう語っていた。



「・・・ソイツらがてっちゃんのこと女の子だっつって仲間はずれにしてバカにしてた。」


やっぱりか、黒子はそう思った。
永野は炯至のセリフに息を詰まらせながら反論するが、担任教師から是非を問われ伏し目がちにはい、と肯定した。



「だって黒子がいけねぇんだ!せっかくオレらが遊び誘ったのに#白神##白神#いうから!」

「それとてっちゃんいじめんのなんの関係があんだよ!」

「炯至くん落ち着いてください」


どうやって炯至が数日前の黒子と永野たちのことを知ったのか。原を気絶するまでケンカしたのか、とか。永野のほうが体格がいいのに負けていることとか。気になることやツッコミたいところが多数存在するが、つまり今回のケンカの原因というのは、1番に永野→黒子な嫉妬故の犯行だったのだ。じつにくだらなくも小学生らしいものだった。








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