柔軟が思いのほか皆硬かった。
あそこまで柔い俺もどうかと思うけど、あそこまで硬い皆……というか繋心もどうかと思う。
「うーし、じゃあ次!フライングー!」
「「「「うぃっす!!!!!!!!」」」」
大地さんの合図で繋心はお役目御免。
お疲れさまー
「白瀧はフライングの仕方わかる?」
「スガさん。えーと、フライングはやったことないッスけど、理論的には。レシーブとかスパイクを取った後、手→胸の順で床につけるヤツですよね」
「うん、そう。あ、後サポーターあると痛くないけど、持ってる?」
「あ、はい、持ってます」
じゃあ着けてきた方がいいよ、俺待ってるから、とスガさんが言ってくれたのですみませんと断って急いで取りに行く。このサポーター忘れるのどうにかしなきゃだなー。
「すみません、スガさん、お待たせしました」
「大丈夫ー。まだ大地たちも1周目だし。あ、白瀧のサポーターってロンサポだー」
「祖父と先生がバレー部入部祝いだー、なんて言って買ってくれました。俺サポーターってしたこと無かったんでありがたいっスねー」
そういう俺にいいじいちゃんと先生じゃん!となんとなく2人を誉められると誇らしくなる。
閑話休題。
んでフライング。
スガさんに声をかけられて思い返してみるが、じいちゃんと一繋さんとの特訓ではそこまで行ってなかったことを思い出した。
「じゃあ教えるから真似してな」
「ウィッス」
走っても届かないというボールに向かって、飛び込んでレシーブをするのがフライングレシーブ。
ボールに向かって走り、それでも取れそうになければ、ボールに向かってジャンプして、レシーブをして、着地。
レシーブは普通の両手を組んだ形、もしくは片手。
レシーブをした後に地面につく順番は、 まずは手。んで、次に胸、腹、足。フライングはえびぞりみたいな格好になるから、足が一番上になる。
だから、手の次は必ず胸をつく。足からついてしまうのは、飛んでいないので「フライング」じゃない。
低い姿勢から入って軽く手をついたら胸で受けてそのまま滑らせる感じ。脚は高く蹴り上げてつかないようにすること、といわれスガさんがやってみる。
「だいたいこんな感じ。
顔はボール見てあげといたがいいかな」
じゃないとあんな感じになるよ、
と指を差していたのはちょうど反対側にいた翔陽で、まさにそのタイミングで顎をキュキュッと擦っていた。
……うわぁ、
「了解デース」
その姿に思わずスガさんに敬礼。
走り込んできてからの起き上がりっていうのかな、あの中では、西谷先輩が1番動きが滑らかだった。
「んじゃ回周遅れになっても嫌だし、やるか」
「ういっす」
少し助走をつけて手を出して付き、胸から腹、で脚。手は胴体を前に送り出すような。
「こんな感じーかなぁ、スガさん?」
起き上がりまでは行けなかった。ちぇ、
けどおれの出来にスガさんが呆然としていた。
「え、白瀧バレー経験者だっけ……?」
「え?いえ、まったく。」
「だよなぁ、」
何か思案顔のスガさんを引っ張って、とりあえずフライング練習をする。
2、3回顎を打ちそうになったけど打ってないと言い張っておこ。
「シロー!頑張れー!」
「おー、がんばるー」
既にフライングを終えた翔陽から励まされ、何とか3周無事にフライング練習をすることが出来た。
よかったー顎擦れてなーい
「シロー!フライング練習お疲れーぃ!」
「うぇーい、おつー」
若干あせが出てきた俺に翔陽はそう言ってとハイタッチを求めてきたのでうぇーい。と言ってタッチ。
「はい、大和。ちゃんと汗も拭いてね」
「あざっす。潔子さんも、あんま無理しないようにして下さいね」
わざわざスクイズボトルとタオルを持ってきてくれた潔子さんにお礼を言って水分補給。
俺に付いてくれたスガさんは、ただいま大地さんと繋心とお話中。
「つーか!シロのサポーターかっけぇよな!」
「そー?ありがとー」
「ロンサポ?自分で選んだの?」
蛍の言葉を否定する。
「んーん。これじいちゃんと先生からのプレゼント。バレー部入部祝いだーっつって」
「ロンサポ!かっけぇよなー!」
ついついあの時を思い出してニヤける。
ちょっと、だいぶ顔がヤバいことになってるよ、と蛍に言われてぐっと口角をあげる。
「でも白瀧、フライング練習うまかったよね」
「山口も思った?!俺も!見てて思った!あんましアゴぶつけてないし!」
ああ、翔陽は顎削ってるもんなぁ
「ああ、日向はアゴ削ってるもんね」
ぷふーと笑う蛍と思考がモロ被り。
「いや、でも何回かブツけそうになってたしね。言う程のモンじゃないけどなぁ」
3年生はもちろん、西谷先輩とか超うまいじゃんといえばそれはそうだよと言われてしまった。
それもそうか。
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