味覚音痴2人
それは合宿初日のお昼のことだった。
食堂に集まり、皆でお昼ご飯を食べていた時、全員がいると思っていたのに、二人足りないことに気がついたのだ。

「いないのは…青学の不二と?」
「………美麗がいねェな」
「珍しい組み合わせっスね。どこ行ったんだろ?」

桃城を含め、みんなが美麗と不二の姿を捜そうとした。その時、厨房の方から何やら話し声が聞こえることに、気づく。疑問に思いながら厨房へ行ってみると、そこには探していた二人が並んでいた。

『それハバネロ?』
「そうだよ。」
『へぇ』
「もうすぐ出来るよ。」

二人はハバネロを使ったサンドイッチを作っている最中だったのだ。厨房にはツーンと鼻に来る臭いが充満している。


「…はい、出来た。」
『わー…美味しそう!……あら、みんなそこでなにしてるの?』

二人は跡部達がいる事に気付き、どうしたの?と首を傾げる。

「……それはこっちのセリフだ。何してやがんだ。」
「サンドイッチ作ってたんだ。皆も食べるかい?美味しいよ。」

ニッコリ笑ってサンドイッチが乗ったお皿を掲げてみせる不二。その手の中にあるサンドイッチは、とても赤い。目をひん剥く跡部達。青学メンバーは青ざめた顔で「うわぁ…」と呟いている。

「……なんでサンドイッチがこんなに赤いんだよぃ。」

丸井は青ざめた顔でサンドイッチを見つめた。
不二と美麗はきょとんとした表情で言った。

『「え?普通じゃない?」』
「普通ゥゥゥ!!?」

『え、普通でしょ?おかしいんじゃない皆。』
「おかしいのはお前らの味覚だ。」
『そんな事ないわよ。食べてみて美味しいから!ほら!』

真っ赤なサンドイッチを無理矢理跡部に食わせる美麗。思わず食べてしまった跡部はボフォァァ!!と口から火を吹き、水、水ゥゥゥ!!と悲痛な声で叫ぶ。そして、樺地が差し出した水を一気に飲み干した。

「…火炎放射や…生で見てしもた……ハッ!わかったでぇ!アイツは怪獣やな!火を吹く怪獣や!恐ろしいやっちゃなぁ!」

跡部を指さしそう信じ込む金ちゃん。恐ろしやぁ…と後ずさる。普段の跡部だったら怒るであろう発言なのに、何も言わない。というか言えない。
口の中がヒリヒリし過ぎて喋る事が困難な状態なのだ。跡部はどこから取り出したのかわからないが、紙に文字を書いて訴えた。

《それは食いもんじゃねェ!兵器だ!悪魔の兵器だ!》
『兵器ぃ?何馬鹿な事言ってんのよ。ただのサンドイッチじゃない。ねぇ周助?』
「うん。サンドイッチだよね。ただの。」


そう言い真っ赤なサンドイッチをかじる二人。
もぐもぐと涼しい顔をして食べている美麗と不二に、周りは固まる。美味しいねぇ。うん。なんて微笑みながら会話する二人を見て思う。

(この二人味覚おかしい!!)

新事実を発見した日だった。
ちなみに、跡部が喋れるようになった時1番に言った言葉は「そんなもんがサンドイッチとか絶対認めねェ!お前ら病院行け!!」だった。
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