ボウリング大会
「よし、皆集まったな!」

とあるボウリング場を貸し切りにした状態で、跡部が先頭に立ちながら声を上げる。
ボウリング場には氷帝のほかに、青学、立海のレギュラー陣が集結していた。なぜ集まったのか、理由は単なる“息抜き”だそうだ。美麗は部屋でまだ爆睡中だったはずなのに、目が覚めたらいつの間にかここにいたため話についていけず、不機嫌な表情で跡部を睨む。

『わけわかんないわ。どういう事?なんで皆いるの?』
「だからここにいる奴ら全員でボウリング大会だ。最初にそう言っただろ」
『はぁ?』

知らない聞いてない。
そう呟く彼女の恰好は、寝ているところを無理矢理連れてこられたため、パジャマなままだった。

『付き合ってらんない。おやすみ。』

ボウリングよりも睡眠を取った美麗は、椅子にゴロンと横になり再び寝ようとした。が、それは跡部が挑発することによって阻止された。

「逃げんのかよ?」
『……』
「まさかお前が逃げるなんてな…情けねェ。」
『は?逃げてなんかないわよなめんなよ』

眠気も吹っ飛び、闘志を燃やす美麗。簡単な挑発に乗ってしまう、案外扱いやすい一面もあるのが雪比奈美麗という女だ。

「ルールを説明する前に…美麗、着替えろ。」
『服なんてないわよ。アンタが無理矢理連行したせいで。』
「樺地!」
「ウス」


跡部は樺地から紙袋を受け取ると、それを美麗に渡した。目を丸くさせて紙袋の中を覗いてみると、そこには自分の服が一色揃っていた。下着までご丁寧に入っている。

『…アンタまさか私のタンス勝手に開けた?』
「開けた。」
『サイッテー!!』
「仕方ねーだろーが。」
『だからって女の子のタンス開けるかフツー!!この変態!』
「持って来てやっただけありがたく思え!」
『頼んでないわよ!だいたいあんたなんで私の今日のパンツの柄知ってるの!!みたの!?最低かよ!』
「それは俺じゃねぇ!用意したのはお前の母親だ!」

あらぬ勘違いをされ、跡部はさすがに焦る。
弁解をしたところで「どうでもいいから、早くしない?」と、リョーマが呆れたようにが二人に話しかけたおかげで言い争いは中断され、美麗は着替えるため一旦手洗い場へ向かった。そして戻って来たところでボウリング大会のルール説明が始まる。

チームは青学チーム。立海チーム。氷帝チーム。となっている。各チーム一人二回づつ投げ、合計点数で勝敗を決める。

「なお、ゲーム中にガーターを出した者には罰としてこの乾特製“青酢”を飲んでもらう。」
「「「げぇ!?」」」

乾が嬉々として、そんな発言を落とす。

青学チームが“青酢”と聞き一気に青ざめる中、立海、氷帝はなんなのかさっぱりわからず、首を傾げる。

『何なの?青酢って。』
「乾先輩の作るドリンクは死の領域なんスよ!あの青酢も絶対ヤバい!気をつけて下さい美麗先輩」

桃城は青ざめながら忠告をするが、乾汁がなんなのかさえわからない美麗は頭にハテナマークを浮かべた。どういう事?と跡部に聞いてみるが、そのうちわかるだろ。と言うだけ。跡部自身も、あまり知らないのだ。

「それから1番点数が低いチームには罰ゲームとして同じく青酢を飲んでもらおうか。」

乾の眼鏡がキランと怪しく光った。


そして、恐怖のボウリング大会が幕を開けた。


一人目。
青学チームからは海堂。
立海チームからはジャッカル。
氷帝チームからはジロー。

まずは海堂が投げる。が、投げようとした時足が滑りボールを落としてしまう。落ちたボールはコロコロとゆっくりと転がり、ガーターに。次こそは!と気合いを入れて投げ、何とかスペアを出した。
ホッと一息つく海堂だったが、ポンポンと肩を叩かれる。振り向くとニヤッと笑った乾が青酢の入った小さなカップを片手に海堂を見下ろしていた。タラリ、と冷や汗が流れる海堂。

「言い忘れていたが、一回でもガーターを出した者は青酢いきだよ。」
「………っ」

海堂は震える手でカップを受け取ると、一気に青酢を飲み干した。途端に叫びながらパタリと倒れた。

「「「………」」」

シーンと静まり返るボウリング場。
カタカタと震える者が続出だ。

『……青酢って恐ろしい!』

美麗もようやく青酢の怖さを知った。
絶対飲みたくない!と誰もが強く思い、死ぬ気でボールを投げた。が、なかなかうまくいかず、次々と青酢の餌食になっていき、断末魔がボウリング場に響き渡っていく。

あの不二ですら気絶する程だ。かなりヤバイものに違いない。皆死に物狂いでボールを投げる。

『若ー!頑張れー!』

氷帝チームから日吉。
青学チームから手塚。
立海チームから仁王。

三人は真剣な表情でボールを投げた。

が…

「「「ぐぁあああああ!!!」」」


あっけなくご臨終。
若ィィィィ!!と美麗が嘆く。


現在脱落した者は青学チームから海堂、不二、河村、大石、手塚、菊丸。
立海チームからジャッカル、丸井、赤也、真田、、柳生、仁王。
氷帝チームからジロー、宍戸、向日、樺地、鳳、日吉。(忍足)ちなみに、忍足がいないのは美麗に始まる前に人数合わせのため殴り飛ばしたからである。


残ったメンバーは
青学チーム、桃城、リョーマ。
立海チーム、柳、幸村。
氷帝チーム、跡部、美麗。
計六人。


いよいよラストゲームとなった。
負けるものか、と、六人はメラメラと燃える。
桃城とリョーマはガーターなしで終わり、柳と幸村はストライクと完璧に決めてきた。


『景吾、ストライク出せ。』
「あぁ。」

華麗なフォームで、一球目はストライクを決めた。

「…ハッ!」

二球目もストライクを決めるべく勢いよくボールを投げた。が、ボールが手から抜けなくなり、跡部は一度宙に浮いた後、すっ転び、ボールを手にはめたまま真っ直ぐスイーと滑って行く。

「あ゙!?ああ゙あぁあぁー……!」

ピンを全部倒し、そのまま跡部はボールと共に消えて行った。

「「「「……」」」」

その場に、なんとも言えない空気が漂った。

『……景吾、さようなら。アンタのことは忘れないわ…』

彼女の声が静かに響く。
そんな中、ボールと一緒に跡部が帰って来た。

『あ、なんだ生きてたの?しぶといわね……』
「…フン、俺様がこんな事で死ぬわけねーだろうが。」

跡部は自分が出したスコアを見て、フッ…さすが俺だな。と笑った。

『何カッコつけてんの?言っとくけど全然カッコよくないから。ダサいわよ。すごく。』
「ストライク出したじゃねーか!」
『そういう事じゃないわよ!こけたじゃない派手に!滑って消えたし!』
「でもあれでちゃんとストライク出たからいいだろ!」
『アンタはあれで満足なの!?』
「満足だ!」
『じゃあ次私が投げる時アンタを使わせてもらうわね。』
「いいぜ。」
『いいの!?』
「跡部どうしたの?さっきの転倒で頭やられた?」


幸村が心配そうに言う。

『もう一回やったら元に戻るんじゃない?』
「あぁ…成る程」
「ふむ…やってみる価値はあるな。」


そしてついに美麗の番がやってきた。
美麗はボール(という名の)跡部を持つ。その異様な光景に、脱落したメンバーですら目を丸くさせている。

『てやァァ!!』

美麗は力いっぱい跡部を投げる。シュー!と勢いよく滑っていく跡部。そして見事ストライクを出す。跡部は「見たか##NAME1##ー!」と叫びながら消えて行った。

「…よく考えたらおかしいよね。これ。」

幸村が呟いた言葉に、柳も頷いた。


結局、跡部ボールは認められず氷帝が反則負け。
最初に乾汁の餌食となった者ももう一回飲むハメに。

『…最悪!景吾使うんじゃなかったぁぁ!』

すでに美麗以外は青酢を飲んでおり、屍と化して足元に転がっていた。周りは固唾を飲んで見守っている。

「あぁそうだ。ちなみに青酢の効果は運動時の疲労回復、風邪の予防、美肌効果の三つがある。」
『美肌効果!?』

美肌という素敵な単語に美麗の目が輝く。
美肌になるの!?と食いつく美麗に、乾は確実にだ。と肯定。その瞬間、美麗は躊躇う事なく飲んだ。

『すっぱァァァァァ!!!』

あまりのすっぱさに叫ぶ美麗だが、なんとか持ちこたえる。おー!と周りからは拍手が上がる。


『び、美肌のためよ…美肌の、ため……』

ぶつぶつとぼやく美麗だったが、しかし耐え切れず、ふっと意識をなくし倒れた。

こうして、恐怖のボウリング大会は終わった。


翌日、いつの間にか自分の部屋にいた美麗は鏡で肌を確認。ツルツルになっている自分の肌に感動したという。


あとがき〜
跡部景吾のキャラ崩壊もいいところですね。
ごめんなさいでも、久しぶりに読み返しても面白い(自分でいう)

修正済みです。

管理人:天音
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