■ 今

私とマッシュとシャドウとインターセプターの三人と一匹で組まれたパーティーは、順調に広原を進み、魔物を吹っ飛ばしていた。
小さく可愛い猫形の魔物もあっさり切り伏せるシャドウに文句を言いながら着いてしまった帝国軍陣地。
宿営地ともあって、至る所にテントが張ってあり兵の数も、魔導アーマーの数も見た感じ多い。
メンテナンス中らしいものも合わせたら、相手にするには中々に辛い量だ。
だが、テントの数が多く、資材もそれなりに積まれている為、体格のいい男が二人いてもそれなりに進めるだろう。

「これが帝国の陣地……。かなり兵士が多いぞ…」
「量だけは無駄に多いよね。帝国軍って。その癖歩兵は弱い」
「魔導アーマーに頼りきってる部分があるから、その分驕る奴が多いんだろうな」
「……兵士の話でも聞いて情報を集めろ」

マッシュと帝国兵談義をしていれば遠回しに咎めてくるシャドウ。
何だかんだで一番真剣なのはシャドウだと思う。
忍ぶのはこの中で一番なシャドウに続く私達。
大概の者が今はいらない情報を話しているのだが(それを盗み聞いてる私達)、肝心なドマとの戦況を話す奴がいない。
勝ったも同然だと思っているのか将又興味も湧かない戦争なのか。
どちらにしても得る物はないんじゃないかと口を開きかけた時、右側からシャドウに口を塞がれた。

左側からだったら多分、殴り掛かってたよ。

「おい、知ってるか?」
「ああ、あの話か?」
「しーっ…。声が大きいぞ。ケフカにでも見つかったら大変だぞ」

辺りを見渡していない事を確認した兵は私達が聞いている事などつゆしらず再び話し始めた。
ケフカがレオ将軍を軍から追い出して自分が将軍になろうと企んでる。
そんなことを言っていたのだが、下っ端の兵士にもケフカの評判はよくないらしい。
その後現れた本人に軽く媚びを売り、消えた途端悪口が飛び交った。
切り替えが凄いな。
スプリット(従業員)といい勝負だな。

もう少し聞きたかったが二人は上司に連れてかれてしまい、仕方なく場所移動しようと陰から出ようとした瞬間、橋を渡り見えた人影に再び身を潜める。
その人影は私が脱走する前、帝国に居たときに度々見掛けてたレオ将軍と兵士だった。

「あ、レオ将軍だ」
「知ってるのか?」
「ん、んー……分別のある人ってだけね。逆にケフカは死ねばいい」

何度か殺され掛けたし、私の腕切り落としたのケフカだし。
拗ねた表情でもしていたのか、苦笑しながら私の頭を撫でてくるマッシュ。
そのまま鷲掴みにはしないでね。

一度はテントに入った将軍だったが直ぐに出てきて川の近くにいたケフカに一言言い残し、僕達に気付くことなく陣地を去って行った。
ケフカまだいたのか……

川を毒に変えると呟いていたケフカが近くにいた兵士から無理やり瓶を奪い取り、橋から流す為か僕達の隣を通り過ぎようとした時、マッシュが飛び出した。

阻止しようとするのはいいけど、事前に言ってほしいよ。

「そうは行かないぞ!!」
「けっ、うるさいヤツめ。痛い目にあわしてやる!」
「(誰だ!とかにはならないんだな……)誰を痛い目にあわすって?」
「おやおや?アレースさんではありませんかぁ。左腕と脚と目の調子はいかがなもので?」
「お前を芋虫にしたら不具合なくなりそうだよ」
(芋虫にするってのは手足千切って声も出せないように舌も抜くことね。)

あー……遠目だったら大丈夫だったけど、近くでこの白塗りのピエロ顔を見たら駄目だった。
生身の右手だったら感電して焼け焦げる程、電圧を上げたサンダガを左手に溜めてケフカの足下に投げる。
昔から馬鹿みたいに高かった私の魔力を知っているケフカは、その場で地団駄を踏んで逃げ出す。
ちゃんと侵入者だと叫びながら。

逃げるケフカ。
何故、あいつは走れているのだろうか。

片腕を無くした時のあのなんとも言えない激情とフラッシュバックが私を支配し、周りの音どころか景色までがブレて違う景色と重なる。

退路の確保の為に制御できない魔法を使って兵士ごと焦土と化し、大切なものを奪って逃げたケフカの背中に、盾となる兵士ごとサンダガをお見舞いさせてやる。

あれ?これは夢か現か、どっち?


「アレース!クソッ、急にどうしたんだ」
「恐らく、ケフカと関係があるようだが?」

逃げ出したケフカを追って一人で行ってしまったアレースを追う途中、帝国兵と一緒くたに焼かれそうになったりして四苦八苦したのに、何処からともなく湧いて出て来る兵士の所為でアレースにはあまり近付けれなかった。
アレースが魔法を使えることは何となくわかっていたから驚きはしないのだが、ここまで凄いものだとは……

アレースの炎とケフカの氷がぶつかり合って蒸気となり、辺りを白く濁らせる。
急に視界が悪くなり、周囲が混乱状態に陥ったのをチャンスとアレースがいた方向へある程度進んだ所で、視界が良くなってきたのだが、見えたのは最悪な状況だった。

俺達とアレースの間、つまり彼女の背後に回り込んだケフカが兵士から奪っていたあの瓶を振り上げている。
俺がいる場所からでは間に合わない。

「アレース!」

呼ばれたことに反応したアレースだが、振り返りきる前にあの瓶で殴られた。
割れる瓶。
中に入っていた液体が彼女に降り掛かり、ワイシャツをどす黒く染め上げる。
よろけるアレースが苦痛の悲鳴を発して川に落ちる瞬間、俺は周りにいた兵士を吹っ飛ばしていた。

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