Hunting Festival
ひと狩り行こうぜ!


狩猟祭出場者集合時間まで残り5分を切ったのに、私はまだ家にいた。
なんでかって?
荒らされたリビングを丸一日掛けて片付けて、寝過ごしたんだよ。
いくらエアキャブを使っても5分では行けはしない……
どうするか。

と、喉をグルグル言わせながら肩に顔を擦り付けてくるシュトラール。
何が言いたいのか訳がわからないけど、取り敢えず一番早く行ける近道(屋根の上)を走るしかないよね。
屋根の上に登った瞬間、何者かの鉤爪が肩に食い込んだ。
それで、



なんか、空飛んでます。

風に靡かれる様子は、端からみたらハンガーに掛かった洗濯物、もしくは十字架に磔の刑にされた人間だろう。
それか餌として拐われた犠牲者とか?

大きく成長したシュトラールは私+α(武器三点)を軽々と持ち上げて行き場がわかっているかのように飛んで行く。
目立って仕方ないが、近道できているのだから文句は言うまい。

あっという間に城まで着いたシュトラールは、一つの部屋を目指して上へ上へと急上昇を始めるが、こいつ、何で集合部屋知ってんの?
落ちたら確実に死ぬな……、って高さまで上がったシュトラールは、器用に尻尾で窓を(叩き)開け、その中に私を放り投げ入れた。
やられるのはわかっていたから、そのまま受け身を取りつつ転がり入る。
顔を上げたら唖然とするダガー達が……って当たり前だよな。

「お主……どうやってここまで登ってきたのじゃ?」
「登ってきた訳じゃないよ、お姉さん。飼い竜に拉致られてきた」
「グルル……」
「シュトラール!いつの間にそんなに大きくなられたのですか!?」
「色々あってね」

窓から頭だけを入れて大人しくダガーに撫でられてるシュトラールだけど、これ、外から見たら室内物色してる野良竜だよなぁ……
スタイナーは腰抜かしちゃってるし、振り向いた先に竜がいたことに驚いたネズミ族の朱の帽子が似合うお姉さんは槍構えてるし、やっぱりちょっと街では飼えないサイズだよね。
大公が言ってたように大きさが自由に変えれればいいのだが、世の中そううまくはいかないよね。

「でも、あんまり大きくなりすぎると野生の魔物と間違われて攻撃されるのがオチだぜ?」
「!!」
「でも成長は自由に止めれるもんじゃないっしょ」
「あの、小さくなれるみたいですが……」
「「え?」」

振り向いた先にはちょこんとダガーの腕の中に収まってるシュトラールと腰が治ったらしいスタイナーが。
あ、スタイナー、指出して甘噛みされてる。

時間制限があるのか、はたまた自らの意思でサイズを変われるのかは知らないが、どうやらクリスタルが関係しているのは確からしい。
では、ブランクに渡したクリスタルに触れさせてみたらどうなるのだろうか。
大きくなった時の2倍になるとかは止めてほしい。
グナイがどのくらいのサイズだったかは私が身長的に小さかったこともあって、余裕で乗れたってぐらいにしか覚えてないが、街に来ると流石に大騒ぎになったのだけは覚えてる。
一生頭に乗れるサイズでいてくれとは言わないけど、あまり大きくなってくれるのも困るなぁ……

「では、揃った所で、狩猟祭のルールをご説明しましょう」

あ、すんません。
待たせてましたね。

ルールは去年と変わってないらしい。
タイムリミットは12分、その間、エアキャブでの移動は自由。
バトルに負けたら即、リタイア。
優勝者には『望みの品』とハンターの称号が与えられる。

毎年、ブランクに出場禁止令出されてたから出れなかったんだけど、今年は理由が理由だからね。
知られたら怒られるだろうけど知ったこっちゃないさ。

「『望みの品』はもうお決まりですか?」
「ああ、俺はやっぱギルだぜ!」
「私はアクセサリにしようか」
「自分は大公の間にまだ浮いてるだろう飛空石で」
「ビビ選手は何にしますか?」
「え、えっ!僕も出るの!?」

自分が出場者だとは知らなかったらしいビビがわたわたしてるところにジタンが笑いながら近付いて行った。

「お前ならいい線行くと思って俺がエントリーしといてやったんだ」
「……黒魔法があればどうってことないんじゃない?」

言わなくても何となく勝手にエントリーした犯人はわかってたけど、本当にやってたとは……
人の都合をあまり考えないところはボスに似たんだろうか。
呆れてたのは私だけじゃなくネズミ族のお姉さんもだった。

「どうなされますか?」
「あっ、じゃあ僕はカードを……」
「わかりました、ギル、アクセサリ、飛空石にカードですね。それそろお時間です」
「ジタン選手は劇場区、フライヤ選手とディレーネ選手は工場区、ビビ選手は商業区へ向かってください」

ネズミ族のお姉さんはフライヤと言うらしい。
一番遠い商業区行きに乗るビビを先頭にジタン、フライヤ、私と続いてエアキャブ乗り場まで歩く。
エアキャブが来るまでの間、ちゃんと自己紹介しあって互いにジタンと知り合った経路なんかを話して結構親しくなれた。
5年前から消息不明となった恋人を探して、3年前にジタンと一緒に旅をしてたんだって。
そういえば3年前にジタンがいなくなってた時期があったな……
私以上にフラフラしてる奴はいない、ってボスを含め全員が心配はしてなかった覚えがある。

帰って来た時に全員から拳固一発ずつくらってたけど。

「そういえばリンドブルムへ来る途中、あの竜によく似た竜がこれを落として行ったんじゃが、これが何か、お主知らぬか?」
「……ワーオ」

フライヤの懐から出て来たのはこれまた見覚えのある実家の壁の飾り、否、刻印の入ったクリスタル。
死の天使ザルエラと刻まれたそれは昔、夜に見た時に不気味だと何度か泣いて最後には母さんの秘密基地に持って行かれたんだったけか。
何で不気味だと思ったのか、何で泣いたのかは覚えていない。
ただ、戦った時に死の宣告されたとか母さん笑ってたっけ。
父さんは顰めっ面になってたけど。

「これはエフが持つべきものみたいじゃな」
「え?なんで?」
「思い入れがあるみたいに目許が笑っていたぞ」
「……そっか。ありがとう」
「うむ」

ポスリと手の中に収まるクリスタル。
そっか、私、笑っていたのか。

故郷を思い出して笑えていたのか……

チョークバッグにそれを仕舞い、ライフルと共に背負った村正の鞘に軽く触れる。
なんだか最近、両親から物もらう機会が増えたなぁ……


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