Hunting Festival
威力は低いが、急所は外さない


工場区は戦場と化していた。

遠慮はするなとフライヤに言われ遠距離用に左手に銃、右手に村正を携えて真剣に狩りまくった結果、祭りだからと軽い気持ちでやっていた(らしい)フライヤのやる気に火を付けてしまったらしく、私達によって大半の飛んでるトリックスパローは打(撃)ち落とされ、気迫に怖じ気付いたムーは容赦なく斬られ、向かって来たファングは薙ぎ倒され、全滅していた。

同じ工場区にいた選手達は、大体が私達の気迫にやられたのか泡を噴いて倒れてるか、早急にリタイアしていった。
さっきから流れる放送が私かフライヤの名前しか出さないところも含めて、なんか申し訳無い……

昔、ガリフ族の方達に習った魔物を寄せ集める指笛を駆使してここら一帯に魔物がいなくなったのを確認してから次の区へ移動する。
次の狙いは劇場区。
エアキャブに乗ってしまうと移動中に魔物が倒せない為、少々時間が掛かっても屋根の上を伝って行く。
大抵のトリックスパローは屋根に止まってたり高い位置にいるからね。
塵も積れば山となるって言うし、どれだけ点数低くても殺っとく分だけ得をするってね。

エアキャブ乗り場の前で挟み撃ちにされてたジタンをさも助けたかのように獲物を横取りしつつ、指笛を吹いて魔物を集める。

「エフ!ちょっとは手加減しろって!」
「女同士の戦いに巻き込まれたくなかったら文句言わずに数こなしなよ」
「女同士の戦い?!」

村正を収め、空いた片手にライフルを持って下の劇場広場にいるファングを、もう片手の銃で目の前にいるムーを同時に撃ち殺す。
若干蒼褪めてるジタンはこの際無視しよう。

眉間に穴の開いたムーを餌にトリックスパローを誘き出してる間にジタンはいなくなってた。

『現在のトップはフライヤ選手の189点です』
「あ?負けてんじゃん」

劇場区の奥へ行く為にアジト前を横切ろうとした瞬間、そのアジトから飛び出して来たムーを銃と交換して持った村正で斬り伏せる。
と、同時にトップがフライヤから私に変わった。

グオォオォォ──……‥・

これまでに掛かった時間は工場区で3分、移動で2分、劇場区で4分の計9分、残りはあと3分。
建物が多く、道幅が広い代わりに広場のあまりない工場区や、道幅はそこまで広くない代わりに即興公演できるような広場がある劇場区と違い、道幅も広く路地も多い、そのうえ広場も多い商業区でどんな戦法を取ればいいかが大きな鍵となるが、

オォオォォ──……‥・

「あの声の主だけは倒したいねぇ」




「ディレーネ殿の太刀筋、どこかの流儀でしょうか?」
「見てわかるものなの?」
「はい。構え方や繰り出し方に違いが出て来るものでありますが……」
「どうかしました?」
「いえ、何でもありませぬ!(あれだけ綺麗で無駄のない型は珍しいのである)」

言葉を濁してビビの応援に戻ってしまったスタイナー。
流儀の違いは詳しくはわからなくても、スタイナーやベアトリクスの力強い一刀と、エフの流れるような一刀が違うのだけはわかる。
えっと……横に振る時は力をあまり入れてなくて、振り降ろした時だけ力をいれる……みたいな?
うーん、うまく言葉に言い表せないわ。
ただ、エフが場慣れしているのだけはわかる。
魔物を見付けた時の目が一瞬、射殺せるくらい鋭くなって、魔物が完全に倒れる前にはもう次の魔物を探してるの。
武器の持ち替かえも、銃のリロードもほんの数秒で終わらせてしまうし、見てる限り全ての魔物を一撃で倒してる。
ビビを追い掛けてたファングなんて見ないで撃ち合てちゃったし、反対に持ったライフルでは屋根の上にいたトリックスパローを撃ち落としちゃってた。

グオォオォォン!
わあぁあぁ!
きゃあぁぁあ!


と、噴水のある広場から聞こえてくる子供達の悲鳴に反応して走るエフ。
上から見ている私達には悲鳴の原因が見えたのだけど……なにあれ!?
朱色の巨体をしていて顎にも大きな牙?角?を持つ魔物が子供達を追い詰めてる!
瞬間的にエフが背中のライフルと銃を持ち替えて脚を狙って撃ったのだけど、蹄に当たってしまったらしく、注意を引くことはできたけど全くダメージにはならなかったみたい。

「ぬおぉあぁああぁ!ディレーネ殿!お逃げくだされ!」
「エフ!踏み潰されちゃダメよ!」

距離があって私達には気付かないと思っていたのに、余裕そうに手を振ってくるエフ。
前!前向いて!
魔物来てる!

突進してきた魔物を見ないでエフが撃った先は魔物の目だった。
片目を見えなくされて暴れ狂う魔物の下をエフは潜って(怖っ!)子供達の方へ寄り、子供達を両腕に抱えてそのまま合成屋に放り込む。
エフは片手に刀を持っただけで魔物よりも高く飛び上がり、何をするのかと思ったらそのまま大きな魔物に飛び乗ってしまった!
確かに!確かにそれだったら踏み潰されはしないけど振り落とされたら危ないじゃない!

襟首に刀を突き刺すエフ。
丁度そこにジタンとフライヤが来たんだけど、暴れ狂う相手に手出しができないみたい。

ジタンと何かを話した後、フライヤが高く飛び上がり、ジタンは見えなくなった片目側から魔物の後ろに回り込んで尻尾に掴まる。

背中まで登って、襟首にいるエフに話し掛けたジタンだったけど、途端にエフの纏ってる気配が呆れた感じになった。

……何を言ったの、ジタン?

「エフ、最後は俺が仕留める。デートが掛かってるからな!」
「……狩ったモン勝ちだろ」


さっきのエフの何十倍も高く跳んだフライヤが槍と一緒に降り落ちる、が、根元から牙?角?が折れるだけで終わってしまう。
それでも倒れるまではいかないけど、それなりのダメージを与えられたらしく足下が覚束ない魔物。
チャンスとばかりにジタンが盗賊刀を振り上げたのと、エフが両手で柄を握ったのは同時だった。

「「くらえっ!/バイオ!」」

痙攣して泡を吹きながら倒れる魔物。
倒れきる前に飛び降りた二人は、また同時にスピーカーが設置してある方角を見ている。
あまり気にしていなかったエフも流石にこんな大物、逃す訳にはいかないものね。

『』


[ 23/34 ]

[prev][back][next]




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -