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 8月6日。

 大会も4日目になった。朝、あまりすっきりした目覚めではなかったがそんなこと忘れてスーツ、ウイッグでビシッときめた。そしてスピードシューティングの新人戦を軍用の座席で徳守秋速としてみていたのだが、一高選手の凄いこと。特に北山雫選手の魔法に目が釘付けになった。

「柳さん、あれ私でもできるかな」
「魔法式を書き出してサポートを受ければ可能だろう」
「もう書いてあるよ」

 おいおい…。隣に座る柳は苦笑してそれを受け取った。そしてパラパラと見て、

「仕組みが理解できたならどうにかなる、自分で組んでみろ」
「ういっす」
「分からないところは古式についてなら教えてやるから」

まさかの課題へと変化した。ちなみに、なぜ隣に柳さんがいるって?そりゃあ、魔除けのためだよ!
 そんなことはさておき、簡略化のヒントを得るべく、お昼になって着替え次第早速動く。意識下で座標を九校戦学生テントへと合わせ、自身のBS魔法を展開する。そうして目的の人物の後ろに見事ピンポイントで着地した彼女は、

「まゆみせーんぱい!!」

一高生徒会長、七草真由美を襲撃した。長い髪は相変わらず美しい。小柄だが整ったバランスの体は相変わらず柔らかくて本当に神様ありがとう、とか思ったのは内緒である。

「ひゃっ!ーー明澄ちゃんじゃない!久しぶり」

 不意に背後から抱きつかれた真由美は、顔を確認すると周囲をキョロキョロ見る。そして誰もいないことを確認すると一安心したのかこちらを見て笑う。

「一高のテントに忍び込むって何してくれてるのよもう」
「誰もいないからセーフですよね」
「そういう問題ではないと思うけど…」

 ちょっと場所変えましょ?という提案を受け、明澄は予め取っておいたわけでもない部屋に真由美と瞬間移動した。真由美は一瞬の移動で目をパチクリさせながら、それでも状況を素早く把握していつも通りになる。

「こんな部屋に忍び込むなんて…これ、高級士官用の会議室でしょ?」
「見た目はそうですね。でも私に瞬間移動で入らせる時点でダメでしょ」
「あなたの干渉能力が高すぎるだけよ。十師族泣かせの干渉力を持つくせに」
「まあ確かに瞬間移動ならそれくらいはあるかもしれないです」

 まあ紅茶飲みながら、ね?とどこからかティーセットを転送して手元に持ってきた明澄に真由美は苦笑いしながら席に着く。彼女はやっぱりどこからか魔法瓶を取り出すとロックを解いてお湯をポットに注ぐ。そしてティーパックに入れた茶葉を投入して蒸らす。

「まあそんなわけで真由美先輩、お久しぶりです」
「元気そうで何よりね。高校生活はどう?」
「魔法が使えない以外はとっても楽しいです。無駄も多いですがまあそこは目をつむりましょう」

 案の定どこかもわからないところから明澄はお茶菓子を皿ごと転送してテーブルに置く。今日のおやつはラスクだ。いただきまーす、と真由美先輩がそれに手を伸ばして食べ始める。うん、美人。

「真由美先輩、一高のスピードシューティング選手の、えっと、北山選手のあの魔法ってなんて言うんですか?」
「『能動空中機雷』よ。構造は読めた?」
「あんまりはっきりとはわからないですが…エリア全域を指定範囲にして、幾つかの震源を作っておく。そこにクレーが入ると振動で割れるっていう感じですか」
「上出来。よくわかってるじゃない」
「正解でしたかー。『能動空中機雷』…私の魔法でも参考になりそうだわ」
「そんな連続でテレポートさせてどうするのよ、明澄ちゃん」

「考えてみてくださいよ。空中じゃなくても、陸上でそれが使えたら、味方をあっちゃこっちゃ移動させるの楽になる気がしませんか?」
「随時変わる敵の位置に合わせて、迎撃させるってこと?」
「奇襲に使ってもいいかと。ーーつまり、戦略の幅は広がります」
「…確かに」

 戦場全域を対象に指定、ある意味でボードゲームの盤面として捉える。兵士や無人武装は駒。それをストラテジーゲームのように操作できれば、急に現れた敵にも即座に迎撃部隊を送れるだろう。…あれ?結構便利じゃない?サイオンの量と脳のキャパに合わせるとそんな広いエリアは指定できないけど局地戦とかならいけそうな気がするよね。仮名は『能動瞬間移動迎撃システム』とかでいいかな。

「日本全域は無理だけど…桜木町くらいならなんとかなるようになるかなぁ」
「………それだけでも充分よ?」

 真由美先輩がドン引きしているのが分かる。しかしだよ、戦略級魔法師としては不足する回答なわけで…エリアが広げられるよう工夫が必要になりそうだ。
 そこまで言うと、真由美先輩はお手上げといわんばかりに両手を挙げた。どこかおかしいのだろうか。

彼女の思考は斜め上


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