03
根気強さ……その土台にあるものが、『一目惚れした男の子への気持ちを確かめたかったから』だとしても、校長は笑っていてくれるだろうか。
「自分で言うのもなんだが、この高校は偏差値もかなり高い故、秀才ばかりだ。君のように編入してくる者も少なくはないが……」
「分かっています。俺みたいに、無謀とも思えるぐらい偏差値が違う高校から来る人はいないってことですよね?」
そう尋ねると、滝澤校長は苦笑して小さく頷いた。
この点に関しても、自覚は十分にある。この高校に編入したいと両親に伝えた時も、「アンタなんか無理に決まってるでしょ」と鼻で笑われたのだから。
無謀なのは、重々承知の上だった。それでも、彼への気持ちを確かめたいという気持ちの方が大きかったのだから、仕方がない。
「まあ、なにはともあれ、無事に合格してくれて良かった。あれだけ熱心に編入試験の申込をしてきたものだから、受かってくれればいいなとずっと思っていた」
滝澤校長は、すっと右手を差し出すと、にこりと笑って続けた。
「合格おめでとう。これから、ここでの高校生活を存分に楽しんでくれ」
俺は「はいっ」と力強く返してから、その手を握った。