13
最初は母も、ただ驚いているだけたった。
しかし、僕に謝る気配がないことを察したのか、態度を一変させた。
「アンタ……ずっとそんな風に思ってたの……?」
殺意すら浮かんでいるような鬼の形相で、母は僕を睨み付けてくる。
初めて見た、母の表情。
恐怖心が芽生えたのは、疑いようのない事実だ。
しかし、それ以上に、どす黒い感情が胸の奥底から湧き上がってくるのが分かった。
――何だろう、これは。
妙に冷静になりつつある僕とは対照的に、母は感情を爆発させた。
「私だって、アンタなんか産まなきゃ良かったと思ってるんだよ……!」
母の言葉が、胸に突き刺さった。
しかしそれと同時に、ぷつりと何かが切れたような音が聞こえた。
「もう、うるさいな。黙らないと殺すよ」
僕の、声だった。
しかし、それは冷酷で軽くて、感情など一切なかったように思う。
一瞬、僕のものかどうか疑いたくなったほど。
しかし効果は抜群だったようで、母は唇を震わせているだけで、それ以上は何も言ってこなかった。
そのまま母は、リビングへと足早に向かっていった。
不思議と、罪悪感は生まれなかった。
ただ、何かを失ってしまったように、ぽっかりと、胸の中に穴ができたような気がした。
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