12
「ずっと思ってた。どうしてあなたは、そうやって人を責めるんだ? いつもいつもそうだ」
――違う。おかしい。
僕は一体、何を言っている?
「なんでもかんでも、人のせいにして楽しいか? そもそも、父と別居したのだって、姉が出て行ったのだって、人を責めてばかりいるお前が悪いんじゃないか」
――違う、違う、違う。
僕が本当に言いたいのは、こんな汚いことじゃない。
母を心の底から安心させてあげられるような、綺麗な言葉だ。
――さぁ、もう一度、深呼吸をして。
「僕は、母さんなんてほんとは嫌いなんだ。顔を見ると吐き気がする。ほおっておいてくれないか?」
ダメだ、コントロールできない。
これは、確かに僕の体だ。
ただ、操縦席にいるのは、紛れもない別人。
そうでなければ、こんな汚い言葉を母に浴びせるわけがない。
≪ ≫
【トップへ】 【しおりを挟む】
[home]