今日は、エイプリルフールでも何でもない日であるはず。

祝日ですらない。

ましてや、土曜日だったり日曜日だったりするわけでもない。


「何ですと?」


聞き返せば、


「面白ぇ」


と、薄ら笑いを浮かべた黒鋼がはぐらかした。


「もう黒鋼の言うことなんて信じないからね!」


ぷい、とそっぽを向く。

その瞬間に、またあたしのことを笑っているような気配を背中で感じ取ったから、何も言わずに彼のあぐらをかく膝をぺしんと叩いてやった。

無論、威力など無に等しいのだけれど。


「痛くねー」

「…分かってますよー、だ」


朝からこうなのだ。

あたしをからかっては笑う。

いつもより密に触れ合っている感じこそすれど、感じ悪いことこの上ない。


「何が面白いわけ」

「その、膨れっ面」


彼の意地悪の裏には愛情があることは分かってる。

真に受けてしまって、割り切れないあたしが悪いということも。

でも。


「やっぱりあんたが悪い」

「あ?」


悪いよ。

だって、何でも鵜呑みにしてしまうあたしに、冗談なんか通用しないこと、知ってるのに。


「何が悪ーんだよ」

「いろいろ」

「色々ぉ?」


その色々だって、理解してるでしょ。


「……はぁ」


やりきれなくなって、ごろんと床に横になる。


「切実な悩みだよ」


本当に。


「ほぉ」


ほぉ、じゃなくてさ。

それでいて、あたしが寝転がるそばから同じように仰向けに寝そべった彼を、憎みきれない。


「雅、なぁ」

「…知らないっ」

「もうちょい、傍に来い」


大袈裟に寝返り、再び背中を向けようとした拍子に。

不意打ちともとれるその言葉に驚き、照れ、顔を赤らめ目を点にして黒鋼のほうを向けば、また微かに笑う彼がいたり。


「本当、面白いな、お前」





「俺の言葉は信じないんだろ?」





不敵な笑みを浮かべながら。

それはからかっているのか、本気なのか、それとも双方の意味を含んでいるのか、教えてよ。

いじわる、



(了)


※お題配布元…確かに恋だった 様

 


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