テス→ノイ→ネル前提
歪む世界
彼を呼び捨てにしなくなったのはいつからだったか。テスラは懲りもせずにネリエルと戦うノイトラに視線をやった。
ノイトラの刃がネリエルを襲う。しかしネリエルはそれをひらりと交わし、ノイトラから距離を置いた。途端に彼女のセロが放たれる。ノイトラは身をかわしたが避けきれず、ほぼまともにそれを食らった。
――これで何敗目だ。
とりあえず今まで全敗だ。
「大丈夫ですか」
ネリエルが去った後に、起き上がるノイトラに手を差し伸べた。
「うるせー!」
途端に八つ当たりの一撃がテスラの顔面を襲う。ボロボロのくせに効果は絶大だ。テスラの体は吹っ飛び、崩れた白い壁にぶち当たった。額が割れたようで血が滴っている。
――いい加減、諦めてくれないだろうか。
彼女を腹立たしく思う理由が、『メスだから』だと彼は答えた。ならば何故、ハリベルには喧嘩を売らないのか。
――矛盾している。
だがそれはお互い様だ。テスラは自ら嘲笑った。
ノイトラに勝って彼女への興味を断ってほしい。負けて敵わないと諦めてほしい。
どちらもあり得ないと気づいているのだけれども。それでも願ってしまう。
「帰るぞ、テスラ」
「……はい」
同じ場所に帰ることは彼女にはできない。戦う以外に側にいることは、自分にしかできない。
「何してんだ。早く来い」
「……はい」
今はこうして自分が来るのを待ってくれる、それだけでいい。
時々、優越感と嫉妬が入り乱れて狂いそうになるが、それでもこの人の側にいたいのだ。
テスラは唇を綻ばせてノイトラの後を追った。
《終》