いざよふ

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※居酒屋パロ・企画提出



馴れ合いをスパイスに

「合コンしよう!」
 道場での練習が終わるなり、近藤が土方に告げた第一声がそれだった。
「とうとう頭でも沸いたのか」
「いやいやいや! 真剣だからね! 本気だからね!」
 土方は稽古で流れた汗を拭いながら、これ見よがしに大きなため息を吐いた。
 ここ最近、浮かない顔ばかり浮かべていたからずいぶんと心配していたのだ。しかしそれもなんだか馬鹿らしくなってきた。
「だいたい女の方はどうすんだよ」
 普段ならここで尋常でないほど落ち込むパターンなのだが、今日は逆に爛々と輝かせ、待ってましたとばかりに食いついてきた。
「聞いて驚け! なんとお妙さんとその友人だ」
 土方の着替えの手が止まった。素直に驚いた。あの殴られてばかりの近藤が。これは友人として手助けせざるを得ない。
「いやー、実はな。総悟が店から何から全部セッティングしてくれたんだ。俺に男の方のメンバーを頼まれた」
「おいコラちょっと待て。総悟はまだ未成年じゃねェか!」
「大丈夫だ! 酒は呑ませないし、遅くなる前には返す」
「そういう問題じゃねェェェ!」
 というか何故、総悟が主催してるんだ。
 土方は思わず頭を抱えた。
「で、あとは誰が来るんだ」
「伊東さん」
 何故よりにもよってそいつなのだ。嬉々として話す近藤に突っ込む気力もすっかり消え失せ、土方はその場にしゃがみこんだ。
「オレ、パスしてもいいか」
「ええええ! どうしたトシ! 具合でも悪いのか!?」
「ああ。主にアンタのせいでな」
 伊東とはソリが合わない。出来れば関わりたくない奴No.2だ。
「ったく、よく伊東もOKしたな」
「トシも呼ぶって言ったら、たまにはいいかと快諾してくれた」
 ということは、向こうは土方が来ることを知っていた訳か。これでこちらが断れば、まるで逃げたみたいではないか。
「分かった。行くよ」
 渋々引き受けると、近藤は子どものようにに無邪気に笑った。
「よし! じゃあ前に道場連中で打ち上げした所あったろ。あそこに6時だ!」
「げ、あそこか」
「なんだ、嫌なのか。総悟があそこの飯気に入って予約してくれたんだが」
 嫌、というわけではない。飯も酒も申し分ない。だが、一つ難点があるのだ。
「嫌っつうか、なんか苦手なんだよ」
 近藤の言う店の飲み屋のの店主。彼は土方の関わりたくないヤツNo.1だ。
 銀髪天パの彼とは前回、あわや殴り合いの喧嘩にまで発展しかけた。酔っていたとはいえひどい醜態を晒している。
 それを思い出して再び渋面を浮かべた土方に、近藤は内緒話でもするように耳元で声を潜めた。
「でもよ、トシ。お前こないだ、新しい刺激が欲しいって言ってただろう」
 確かに言った。大学へ行き、バイトの帰りに近藤の道場へと向かう単調な生活。そこに変化を求めていたのは確かだ。
 しかも、近藤の揃えたメンバーで行えば、何かしら起こるのは間違いないのだ。
 気に食わない連中ばかりだが、楽しくないのかと問われれば楽しいと答えざるをえない。
「たまにはハメ外すのもいいかもな」
 好奇心、猫を殺すという言葉が頭をよぎったが、あえて無視した。
「じゃあ遅刻するなよ。俺はお妙さんを迎えに行ってからそっち向かうから」
「合コン始まるまでに死ぬなよ、近藤さん」
 あとで後悔するほどハメを外したって良いじゃないか。
 若者には若さを謳歌する権利があるのだ。
《終》



居酒屋パロ企画の『よっぱらいのはなうた』に提出させて頂きました。素敵な設定をぜひ見に行ってみて下さい。 
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