いざよふ

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2010.09〜12

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 ジャンルごっちゃ煮



09.17
オリジナル
 4月2日。俺の誕生日。今日だけは先輩と同い年になれる。
 先輩の誕生日は4月1日。俺より1日先に生まれた。たったそれだけなのに、やたら先輩風吹かせてくる。それが嫌でたまらない。
 最近、彼氏が出来たそうですね。同じ学年の人だとか。あんまり嬉しそうに話さないで下さい。相手の男を殴りたくなるから。
 こんなに好きなのに、いつまで経っても俺は子ども扱いですか。中学から数えて4年。ずっと先輩だけを見てきたのに。
 浮かない気持ちを抱えたまま、夕日に照らされたげた箱へと向かう。春休み半ば、部活以外の生徒は見当たらない。当然、先輩も。
「あれ? まだ残ってたの?」
「それはこっちの台詞」
 何故。その言葉が頭の中をぐるぐる回る。だって今は春休みで、今日は部活があって、先輩は休みで、会えないはずなのに。
 ああ、心臓の音がうるさい。
「いやぁ、春休みの課題、学校に忘れちゃってて」
 照れたように笑った顔が夕日に照らされて、いつもより綺麗に見えた。
「ばっかじゃねェの」
「こら! 年上には敬語!」
「……今は、同い年だし」
 なんて馬鹿らしい自己主張なのだろうか。俺はまともに先輩の顔を見られず、視線を斜め下に背けた。
「あ、そっか。今日、誕生日だったね。ねェ、なんか欲しいものある?」
 ちらりと様子を窺うと、そこには無邪気な笑顔があった。辺りがオレンジ色に染まっている。
「じゃあ、今からの先輩の時間を、俺にちょうだい」
 先輩は驚いたように目を見張った。
「日付が変わるまでの時間、先輩と一緒にいたい」
 心臓がバクバク言って、顔が火を吹きそうなほど熱い。
 少し沈黙が続いたあと、先輩はあろうことか吹き出した。
「まーたそういうこと言う。もう、ふざけないの」
 ちゃかす先輩の言葉を、俺も「バレたか」と笑って誤魔化した。
 先輩が俺の言葉をからかいにしたのは、多分ワザとだ。冗談にしたいと言われたような気がした。だから笑った。
 こんなことしたってきっと、先輩は俺を男として見ることはない。
 たった1日の差が遠い。あと1日、先輩が生まれてくるのが遅ければ、同じ学年になれたのに。
「ほら、行くよ」
 いつの間にか靴を履き替えていた先輩を、こちらも急いで履き替えて追いかける。
 校門の方へと歩く先輩は、いたずらっぽくこちらを見て、早くおいでと俺を急かした。
 俺の家は校門を出て右。先輩は左。これでお別れだ。
 先輩の姿が夕日の中に溶けて眩しい。触れたい。そう思ったら止まらなくなった。
 俺は思い切ってその背中に腕を伸ばし、止めた。伸ばした手を強く握り、そのままポケットに押し込む。
 代わりにありったけの思いを込めて叫んだ。
「先輩!」
「なあに?」
 ああ、やっぱり綺麗だ。夕日の中で微笑む姿に、僕は見蕩れた。
「さよなら」
「――うん、また今度」
 そう言って去っていく背中を、俺は小さく手を振って見送った。
 さようなら、さようなら。
 俺の、初恋の人。


先輩に用意したプレゼントは、まだ僕の部屋にある




09.26
BASARAでアニメ二期最終回ネタ
 我にとって大切な物は日輪と、安芸と毛利家。其れ以外は必要無い。安芸の繁栄には毛利が、毛利の繁栄には安芸が必要だ。此の二つを引き離して考える事等は出来ぬ。
 兵も民も駒でしか無い。此の安芸が実り豊かな國で有り続ける為の。
 民は畠を耕し、兵は國の為に捨て駒と成る。当たり前では無いか。其処に何の不満が有ろうか。
 我も所詮は駒なのだ。安芸と毛利を護る為の。其の為なら如何様な事も成して見せる。口汚く罵られ様が蔑まれ様が、其れが我の生きる道なのだ。
 其れなのに、嗚呼、何故。
 策は成らず、若虎が咆哮を上げる。
 我は死ぬのか。日輪の光よりも熱く滾る此の熱に抱かれて。
 今は未だ死ねぬのだ。安芸を、毛利を守らねば。我が居なくなった後の策を、未だ立ててはおらぬ。
 不意に、西海に住む鬼の顔が浮かんだ。奴との決着も着けず仕舞いだ。策を弄し、其の命果てたと思って居たが、生きて居ると云う知らせを聞いたのは昨日の事だ。
 未練無く生きて来たつもりだったが、未練だらけだ。嗚呼、せめて願いが叶うのならば

 誰か、我の名を呼んで呉れ。





11.20
土ミツ
 終わった恋なのだと、思っていた。
 自分から拒絶して終わらせた恋。彼女が幸せであるように。そう願って手折った。
 あれから数年。彼女への思いはとっくに忘れていたはずだった。なのに。
 あの日、偶然ミツバと鉢合わせた瞬間、気づいてしまった。終わってなどいないのだと。
 動けなかった。まるでスローモーションのように、目の前で彼女が倒れて行ったというのに。
 彼女と目が合った瞬間、背中に電流のような物が駆け抜けた。
 まだこんなにも、彼女に恋い焦がれている。
「ミツバ……」
 万事屋と総悟に抱えられて、彼女は屋敷の中へと入っていく。
 ああ、やめてくれ。あの男はお前を愛してなどいない。
 叫び出したくなる衝動を抑えながら、土方は山崎へと合図を送り三人の後に続いて門をくぐった。
 今なら自然に蔵場の屋敷へと潜入できる。
 そう考えた瞬間、あの時に彼女の手を取らなくて良かったと思えた。
 利と情なら利を取る。そんな男なのだ、真選組の副長とは。
 嗚呼だからせめて、精一杯のエゴで祈らせて欲しい。
 君の未来に幸多からんことを。





12.30
パトリオット工場ネタ
 社会なんて下らないモノだらけだ。パトリオット工場の見学を終えた少年は思う。前回見学した警察も、結局は自分の問いに明確な答えを与えてくれることはなかった。何故なら彼らの中に明確な答えがないからだ。
 そんな適当に働いて金を貰うなんて、本当に下らない社会だ。ならばそんなものに頼らず生きるのが賢い生き方ではないだろうか。
 そう思っていた。数分前までは。
 パトリオット工場からの帰り際に友人たちと社会の下らなさについて熱く議論を交わしていた時だった。突然、爆発音が聞こえた。
「伏せろ!」
 そんなことを言われてもとっさに動けるはずがない。体が吹き飛ばされるかと思うほどの突風。思わず両腕で顔を庇う。何か堅い物が頬を掠めていった。切れたらしくジンジンと鈍く痛む。
「無事か? ガキども」
 声の主はまだ幼さを残した栗色の髪の青年だった。制服から察するに真選組だ。
「とっとと失せな。ケガするぜィ」
 それだけ言うと青年はバズーカを抱えて攘夷志士へと砲撃を開始した。辺りの被害状況などお構いなしだ。
「こ、こんなことが、警察が、破壊行為なんて……」
 小さな破裂音と共に脇を何かが掠めていった。それが銃弾だと気づいた瞬間、言い知れぬ恐怖が体の底から湧き上がってきた。
 刃を交え、火器を使う彼らにはきっと、理屈も何もなど通じない。その前にそんな概念すら無いのだろう。自分たちとは世界が違う。
 脳裏に死という言葉が浮かぶ。嫌だ。死にたくない。
「何ぼさっと突っ立ってんだ。死にてェのか。てめェら」
 背後からの声に背筋が泡立つのを感じた。振り返ると、黒服に身を包んだ黒い男が、殺気を隠すこと無く立っていた。パトリオット工場で見た顔だ。確か、真選組見学の時にもガイドをしていた。
 それにしても本当に先ほどの男と同一人物なのだろうか。まるで雰囲気が違う。先刻の間抜けな姿とは裏腹に、今は一本筋の通ったような緊迫感がある。
「おいそこのメガネ。テメーこないだ正義ってなんだっつってたよな。」
 名指しされて、思わず目で隣の大五郎に助けを求めた。だが、彼もまた射竦められてしまっているのか、ただ涙目で首を振った。
「何が正義だ。くだらねェ。ンなもんで何が守れるってんだ」
 正義ははっきりと定義しておくべきものなのではないか、とか、警察が正義を下らないと言っていいのか、とか、反論したいことはたくさんある。だが、できなかった。
 攘夷志士と真選組が命を張って戦っている。今のこの状況が、そんな屁理屈は無意味だと叫んでいた。
「法も正義も関係ねェんだよ。ただテメーの守るべきモンを守るだけだ。俺たちのやり方でな」
 それ以外に何がいる、と黒い男は笑って刀を抜いて戦場へと駆けていった。
 なんていい加減で、曖昧な理由。理屈もないとはなんと野蛮な人間か。
 けれど、その取り繕わない姿が、不覚にもかっこいいと思ってしまった。


 

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