いざよふ

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総悟が高1、土方が高2、近藤さんとミツバさんが高3


春の花咲く

 風に舞う桜を眺めながら、土方は大きくため息を吐いた。今日は大江戸高校の入学式である。本来なら部活動を行う生徒は午後からの登校なのだが、土方はそれよりも早く校門へと向かっていた。知り合いが入学してくるからだ。
 知り合いの名は沖田総悟。土方の幼なじみである。彼とは同じ道場に通う仲であり、母親同士が同じお茶の教室に通っていたという縁で知り合った。
 母親同士が仲がいいからといって、子どももそうかと言えばそうでもない。仲が悪いわけではないが、総悟のサディスティックな性格と土方の負けず嫌いが相まって、気がつくといつも喧嘩になるのだ。
「おぉ、トシ!来たか!」
 校門をくぐると、待ちかねたような近藤の声に呼び止められた。
「近藤さん、総悟は」
「今、あっちでミツバ殿と写真撮ってる。お、来た来た」
 おおいと近藤が大声で総悟とその姉を呼ぶ。それに対してミツバが笑顔で手を振った。「近藤さん、十四郎さん。わざわざ来てくれたの?」
「なんでィ、本当に来たんですかィ」
 似たような顔をしているくせにずいぶんと反応が違う姉弟だ。
「入学おめでとう。これで晴れて、お前はオレの後輩だな」
「ありがとうごぜーやす。これからどれだけ土方さんを竹刀でぶっ叩いても、部活って言い訳ができるわけですねィ」
「なに入学早々物騒なことほざいてんだ!」
「そうよ、総ちゃん。いくら冗談でも、言っていいことと悪いことがあるの」
 いや、恐らく本気だ。そう思ったが姉には伝えないでおく。ただでさえ心配性な彼女に不安の種を与えては体に障る。
「オレとトシはこれから部活に行くんだが、総悟はどうする?」
「見学させてもらいやす。どれぐらいのレベルか見ておきたいんで。姉上はどうしますか?」
「今日は体の調子もいいし、私もご一緒させてもらってもいいかしら」
 ミツバの言葉に呼応するかのように、総悟の顔に笑顔が広がる。普段はほとんど何を考えているのか分からない奴だが、姉が絡むとずいぶん分かりやすい。
「勿論ですよ。ミツバ殿。な、トシ!」
「好きにすりゃいいだろ」
 問題は部員が女子生徒の見学で舞い上がるのではないかという点だ。剣道部の部員は今全員彼女なし。浮き足立つこと間違いなしだ。
――いつも以上にシメねぇとな。
 彼女の姿が目に入らないくらいしごいてやる。
 そんな決意を固めながら、土方はミツバの無垢な笑顔をにひっそりとため息をついた。
 桜がヒラヒラと風に舞う。春はこれからである。
《終》



これ実は序章なんですが、続き書く前に挫折しましたorz
 
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