ホストクラブ

ホストクラブ《Infinite Void》
虎杖悠仁【源氏名:ユウジ】
伏黒恵【源氏名:メグミ】
狗巻棘【源氏名:トゲ】
七海建人【源氏名:ケント】
五条悟【源氏名:サトル】
パンダ【マスコット】

ホストクラブ《Monkey》
夏油傑【源氏名:スグル】
真人【通称:ツギハギ】
脹相【通称:お兄ちゃん】
壊相【ボーイ】
血塗【マスコット】
漏瑚【ヒーター】
花御【花の演出】


夜の帳が下りた頃、歌舞伎町では今日も熾烈な争いが始まろうとしていた。

「おーい、ユウジ。今日は指名入ってんの?」
「うっ!サ、サトルさん…!そ、それが…」
「おかかー」
「駄目かー。てか、トゲ余裕だね。君、凄いよねー。ほぼおにぎりの具しか喋らないのにNo.3って。じゃ、僕、閉店まで指名入りっ放しだから」

俺はメグミ。クラブ『Infinite Void』でホストをしている。本当は源氏名をケイにしたかったのに、サトルさんの権力でメグミにされた。恨んでる。まあ、今はそれはいい。ユウジ、そろそろ売上ヤバいんじゃないか?サトルさんがスカウトしてきたけど…。良い奴なんだがな。

「メグミくん、おはようございます」
「あ、ケントさん、おはようございます」
「ユウジくんに、私のヘルプに付くように伝えてもらえますか?」
「分かりました」

ケントさんはいつ見ても大人で常識人だ。ユウジ、上手くいけば指名客を獲得出来るかもな。

「しゃーけしゃけしゃけ」

…トゲ先輩のあの飲んでコール、いつ聞いても笑いそうになる。何でしゃけなんだよって。少しやる気無い感じがウケてるんだよな…。まあ、顔面偏差値高いから許されてるんだけど。てか、トゲ先輩の席、爆笑じゃないか。あ、ドンペリ入った。

「…ありがとう」

ああ、あれは反則だよな。あんなキメ顔と良い声でマスク外されたら、女の人はそりゃ落ちるだろう。トゲ先輩の唇が見たくて、高いボトル入れる人多いんだよな。黄色い声凄いし、またドンペリ入ったし。あ、ユウジもケントさんのヘルプに入ったな。

「こちら、ユウジくんです」
「はじめまして!元気が取り柄のユウジでっす!」

なるほど。ケントさんを指名する女性って、ユウジと相性良いのか。あ、ユウジ名刺渡せてるし、ラーセン入れてもらえてる。良かったな、ユウジ。お前の持ち味は、この世界には珍しい、その素直に喜べる性格だよ。ふ、とユウジ見て微笑んでるケントさんも、しっかりルイ13世入れてもらってる。恐るべし…だな。

「さあー!今日も始めるよー!じゃーあ、先ずは君達から。君達、ホストクラブ初めてなんでしょ?手始めに、クライナーが良いと思うんだよね。パリピパリピ!流行りの映えとバズり、僕と体験してみない?」

五月蝿い。サトルさんの席五月蝿い!あの人、酒飲めないクセに何でうちのNo.1なんだよ!容姿と喋りだけでNo.1になれるとか、不公平だろ!ゲッ!クライナー全部の色入ったのかよ!

「イェーイ!ありがとー!ん?君はお酒飲めないって?大丈夫、僕、下戸だから。そんな君が飲める物も、しっかり把握してるよ。お勧めはコチラ!」

鬼畜か!良い人風に勧めてるけど、フィリコ入れさせたのかよ!あれ、中身が水のクセにえげつない値段してんぞ?!
ああ…あんなに喜んで、サトルさん優しいんですねとか言っちゃって…。ミネラルウォーターに何万も使ってるんですよ、貴女は…。ちなみに中身は布引の水ですからね、それ。サトルさんにもだけど、ボトルの見た目にも騙されてる…。

てか、サトルさんの席凄いんだよな。特注だけど、女性がサトルさんを囲んでる。あそこだけ領域が展開されてる。しかも、女性からは触れないように、デカい円卓の真ん中に豪華なソファ置いて、サトルさん脚組んで座ってんだよな。見下ろされて嫌じゃないのか?でも女性達は、ボトル入れるとサトルさんがサングラス外して見下ろしてくれるって喜んでるし…。俺にはよく分からん。

「わーいありがとー!(むらさき)タワー入りまーす!あ、赫と蒼はラッピングしてね。僕のお客さんに配るから」

ブルーベリーのマカロンタワー入ったのかよ!あれ、凄く高いのに…!どんな人脈持ってんだ、あの人。ていうか、サトルさんの誕生日、どうなるんだ…?

「メグミー!指名のお客様がいらしたぞー!」
「パンダ先輩、ありがとうございます!」

パンダ先輩はこのホストクラブのマスコット。フロア内をウロウロしていることが多いが、酔っ払った女性を介抱してあげるため、隠れファンが多い。女性達曰く、お日様の香りがするそうだ。俺もそれには同意だ。
さて、俺も頑張って売り上げないとな…。


###


「さあ、今日も猿達に沢山お金を落としていってもらおうか」
「夏油、間違って女の子達に猿って言うなよー?」
「そんなヘマはしないさ」

私は花御。ホストクラブ「Monkey」で花の演出を任されている。基本的に裏方仕事をしているが、女性は花が好きな人が多く、私はこの仕事をそこそこ気に入っている。

「兄さん、あいつらの下で働いて本当に大丈夫なのかい?胡散臭いよ?」
「向かいのクラブよりは、こちらの方が俺達には合っているだろう」
「兄者、服、似合ってるぞ」
「でしょう?乳首を見せないのがこだわりだ」

最近、新戦力として入店した3兄弟。長男の脹相は、あまりやる気はないけれど、持ち前のルックスの良さで人気だ。壊相は独特な感性を持っているけれど、細かい所に気が付くと女性達から支持を得ている。血塗は、キモかわいいと人気だ。

「ああ、今日も来てくれたんだね。ありがとう。さあ、疲れただろう?私の隣においで」

スグルはスケコマシだ。女性を手玉にとって、お金を使わせることが本当に上手い。接客をしている様子だけ見ていたら、とても女性を猿と呼んでいるようには見えない。

「何か嫌なことがあったのかい?……そう、それは辛かったね…。そうだ、頑張っている君に、私からシンデレラをプレゼントしよう。ガラスの靴は、きっと素敵な王子様が拾ってくれるよ」

よくもまあ、あんな歯が浮くようなセリフを…。壊相がガラスの靴の形をしたボトルをテーブルに持って行くと、女性の顔がみるみる内に笑顔になった。そして早い!間髪入れずにリシャールを入れてもらっている…!安いシンデレラでこんな高いボトルを躊躇いなく入れさせるとは…!

「ねーねー!君って、酔っ払ったらどうなっちゃうの?」

真人…いや、此処ではツギハギだった。ツギハギは、少し子供っぽいキャラで人気だ。そして、何より女性へのボディタッチが多い。ツギハギに触って欲しくて、高いボトルを入れる女性がかなりいる。

「俺、君の酔っ払った姿、見てみたいなー?」

スケコマシがもう1人居たか。ツギハギも立派なスケコマシのようだ。少し天然っぽく見えて、女性には悪意無く捉えられているようだが、実際は真っ黒だ。どうすれば高いボトルを入れてもらえるか、色々と試行錯誤しているのだから。

「シェイプハートとかどう?ボトルがハートの形で可愛いし、女の子も飲みやすいよ?…ほんと?入れてくれるの?ありがとう!」

スグルに見せた今の顔、ヤバいですよ真人じゃなかったツギハギ。ハッキリ言ってキモいです。お客様には絶対に見られないようにしてくださいね。…と、スグルからサインを送られました。今日はあまり売り上がってないようですね。漏瑚の出番のようです。

「漏瑚、またチンチロリンをしていたのですか?」
「だって、夏油が獄門疆くれんし。アピールしとるだけだ」
「あんな目の沢山付いたサイコロみたいな物の何が良いのか分かりかねますが…。あれ、お高い豆腐でしょう?そんなに美味しいのですか?まあいいです。その夏油から、クラブの温度を上げろと指示がきましたよ」
「あの豆腐が入っとる箱が良いのだ!お前には分からんか。はぁ…またか。仕方無いの」

溜息を吐くと、漏瑚は立ち上がってヒーターのスイッチを押していく。ボトルの出が悪い時は、こうして漏瑚がホール周りのヒーターを点け、クラブの温度を上げるのですが…。花がしおれるので、正直私は迷惑だ。
…おや、ボトルが入り始めたようですね。壊相が忙しく動き始めています。

「ふふ、本当に?私の為にうずまきを入れてくれるのかい?」

うずまきとは、ロールケーキのことだ。ただし、長さは1mあり、クリームの中には、国産の高級フルーツがふんだんに使われていて、えげつないお値段となっている。

「…ああ、今日は君の誕生日なんだね。そうか…。ならば、君さえ良ければ、だけど。プレゼントしたいものがあるんだけど…。いいのかい?それは好かった。花御、お願いするよ」

アレか。ホールの陰に隠してあるボタンを押すと、天井から色とりどりの生花を落とす。花びらの落ちたグラスの中身を飲み干すと、スグルは花を一輪手に取り、女性の髪に飾った。

「誕生日おめでとう。とてもよく似合っているよ」

また1人、大口の固定客が増えたようですね。これもまた、えげつないお値段ですよね、スグル。花に価値を見出してくれて嬉しいのですが…。花を贈られた女性、スグルを見て、ポーッとして。その男、後で貴女のこと、猿って呼ぶんですよ。まあ…私は花があれば良いので、どうでも良いんですけど。とりあえず、落とした花は全て拾って、花束にしてお渡ししますね。


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「俺に気安く触れるな」

ん?今の、ユウジか?気安く触れるなって…声色も随分違うが…。

「ケントさん、ユウジどうかしたんですか?」
「…メグミくん、静かに。暫く静観します」

ユウジに触った女性、少し驚いてるな。ていうか、ユウジ、目付きまで違わないか?一体どうしたんだ?胡座かいて、膝に肘突いて、あの態度はヤバいんじゃ…。

「俺の為にボトルを入れろ。最低でもアルマンドだ。頑張れ頑張れ」

うおおい!あんなに態度最悪なのに、ボトル入れるのかよ?!あの女性、ドMなのか?は?他にもユウジを指名する人が出てきた…?

「そうだ、それでいい。よくやった、褒めて遣わそう」

超上からだな!…え?ギャップが堪らない…?え、あ、そんな…!俺からユウジに指名替えだと…?!

「ユウジの中には、もう1人居るんだよ」
「サトルさん…」
「あのギャップは使えると思ってね。だからスカウトしたの。ちなみに、今の彼はスクナって名前らしーよ。メグミ、本気でやれよ」

俺にデコピンをすると、サトルさんは赫蒼マカロンを撒きに円卓に上った。あんな、餅まきみたいにマカロン投げる人に言われたくないが…。あんなんでも歌舞伎町No.1だしな。

豹変したユウジに焦りを覚えながら、今日も営業時間いっぱい、女性の相手をするのだった。


2021/08/27



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