これの続きです。


「こ、れっ! 離して!」
「だーめ、離したら逃げるだろ。俺の分のお菓子を用意してなかったビヨンに思いっきり悪戯するんだからな」

 用意周到にもニースが準備していた縄で両腕を頭の上に縛って、その端をベッドの端に括りつけられる。ぐっと引っ張ってみたがびくとも動かず、むしろベッドのほうが先に壊れてしまいそうだった。

「今日はじっくりやるんだ。覚悟しろよ」

 ニースが舌舐めずりしながら見下ろしてくる。腕をもう一度ひっぱってみてやはり動かないのを確認して、ビヨンは観念してため息をついた。

「分かりました、付き合ってあげますよ……」
「よし。まあ拒否権はないんだけど」

 ニースはもう一度縄がしっかり結ばれているかを確認するようにビヨンの手首を撫でながらキスを落として来た。ちゅ、ちゅと何度も触れては離れる唇の感触を楽しむ。
 しばらくして、ニースがビヨンの胸に手を伸ばしてきた。また胸だけでなく、脇腹や下腹部にも。そうして少しずつ性感を高めて熱を上げていくのは言ってしまえば縛られている点以外はいつもの通りで、どこが悪戯になるのか分からなかった。
 いつの間にか下肢を覆っていた布は取り払われ、シャツは胸だけを露出させた状態で首元にくしゃくしゃになっている。ニースの指がビヨンのゆるく勃ちあがったものに絡んだ。

「ふ……っ」

 いや、いつもより性急かもしれない。ニースの手が事務的にビヨンの熱を高めていく。
 扱かれれば射精するように男の体はできている。例に漏れず、しばらく手の動きだけを感じていると、腰の奥から疼くものがあった。

「あ、ニース、出……っ」
「ここからが本番だな」

 限界を訴えると、それまでひたすら無言でビヨンの体をまさぐっていたニースが口端を歪めた。なにかその表情から不穏なものを感じる。が、絶えず高められていた熱はそれに構うことなく、出口を目指し腰を震わせた。

「……ぁ、う、イ……っ!」
「はい、残念」
「……!!」

 射精の寸前、ニースがその手を離した。当然出そうになっていたものは出られず、達する直前まで高まった熱が気持ち悪く腰に纏わり付いた。
 ニースは何故、と見上げるビヨンに意地悪そうな笑顔を見せた。

「ここからが悪戯のはじまりだ。今日はひたすら焦らしてやる」

 ニースの口から覗く八重歯が憎らしい。ひたすら焦らすとは、今したようなことを何度もするということだろう。一回目でもすでに腰に甘く怠く溜まった快感が気持ち悪いのに。

「さあ、何回我慢できるかな」
「馬鹿なことしないでください」
「悪魔的でいいだろ」
「低俗です、……っ」

 会話をして、少し落ちついてきたところでニースが再びそこに触れる。先程まで弄られていた上に、ニースが素直にビヨンの最も感じる箇所を攻めてくるせいで、いとも容易く喉から声が上がる。
 ついでとばかりに露出した脇腹からつんと尖った乳首まで舌が這えば尚更だ。

「は、んんっ……!」
「イかせないぞー」

 射精の快感にぶるりと震えそうになると、すぐにニースの手が離れる。そのくせ直接的な快感が与えられないような脇腹などの愛撫はやめてくれなくてじれったい。
 浅く呼吸を繰り返して目を開けるとニースはとても楽しそうだった。

「まだまだ。楽しいのはこれからだ」
「も……、嫌ですよ……」
「俺は嫌じゃない」

 身体を捩ってニースの手から離れようとしたビヨンの足を掴み、大きく開かせる。何度見られようともやはりそんな体勢は恥ずかしく、余計に身体を捻らせた。
 しかしニースは視界に入ったビヨンの足の付け根、窄まりに指を這わせ、その身体を跳ねさせた。

「あッ、っ……」

 まだ硬いそこに容赦なく指を突き入れ、ぐにぐに動かす。はじめのうちの体内で異物が動く感覚はやはり気持ちが悪かった。
 だがそれも、手慣れたニースが時間をかけて揉みほぐし、感じることのできる場所を突きさえすれば快感へと変わった。

「……あ、ん……っ」
「慣れちゃえばビヨンはこっちのほうがイイだろ?」

 茶化すようにニースがそう言ってひたすらに指を動かす。悔しいけれどその通りで、一度快感を見つけてしまえばあとは直接性器を扱かれるよりもずっと腰にきた。

「あ、あっ、はぁッ……!」
「イくなって」

 体内の動きのほうが達する感覚が分かるらしい。察知してニースは指を引き抜いた。再三熱を止められ、無意識のうちに涙がじわりと浮かぶ。

「嫌です、って、ニース……」
「まだイケる」

 ニースは全く話を聞いてくれない。少し熱が引いたところでまた指を突き入れ、本数を増やして何度も執拗に前立腺を刺激してきた。空いた手は再び胸や太股を撫で、ゆるく煽ってくる。
 いつの間にか、ひたすら焦らされているうちに絶頂が近くなり、少しの刺激でも達してしまいそうになっていた。

「は、あ、あっ」
「またか、」

 唾液を飲み込むということすら忘れ、息をするだけで嬌声になった。絶頂という出口を何度も遠ざけられて指を引き抜かれる。自分の後孔がひくひくと物欲しそうに収縮しているのがよくわかった。

「はは、俺のが欲しい?」
「う……、欲、し……」

 正常な理性などないこの状態で、ほとんど言わされたも同然の台詞だ。それでもニースは満足そうに笑い、はっきり勃起した自身をビヨンのそこに埋め込んだ。
 散々焦らしつつ十分に慣らしたそこはいとも容易くニースを受け入れる。入れられただけで達せるかと思ったがそこにも気を付けていたようで、ニースはひどく慎重に挿入してきた。

「す、ご、入れただけでぎゅうぎゅう言ってる」
「ん……あ……」

 痛みは一切なかった。その分気持ち良さが大きい。ニースの熱さや大きさが今はとてつもなく心地良く、胸を満たした。

「ちょっとだけ動くぞ」

 言って、ニースは腰を動かし始めた。ほんの少しだけ引いて、また奥へ。それを繰り返す。本当に緩やかな動きで、普段ならばそんな刺激で達することなどできないのだろうが、今は違う。
 直腸を擦る動きがとても気持ちいい。肉襞が無理矢理動かされる感覚に、すぐに達しそうになった。

「んっ、は、でる……っ」

 だが、やはりニースは達することを拒ませる。腰の動きを止め、ゆっくりとそれを引き抜いた。思わずふる、と身体が震える。また達せなかった悔しさが腰に溜まる。
 焦らされてばかりでビヨンもそろそろ限界だった。

「ニース……! もう、ほんとに……!」
「じゃあ、あと一回」

 再びニースのものが体内に入り込んでくる。すぐに絡みつくような体内の動きがニースのそれを包み、思わず息をつめた。ニースもひたすら我慢しているのだ。
 ビヨンは自らの体内の動きなど全く分からない。無意識に煽って、しかしそのことに構う余裕はなかった。
 ニースが腰を動かし始めると、すぐに絶頂まで追いつめられる。下腹部に溜まった熱がこれまで感じたことがないくらい暴れている。
 もう、とにかく達してしまいたかった。

「……っ! ビヨン、離っ……!」
「あ、あぁーっ……、は、あ……っ」

 またもビヨンの絶頂を感じ取り体内から抜こうとしたニースに、必死な思いで自由な足で絡みつく。腰を引き寄せるように力を込められれば後ろに引くこともできず、ニースは達するビヨンを阻止することができなかった。
 そして太股までびくびくと痙攣するビヨンの体内につられてニースもそこで達する。長く焦らされたビヨンが達している時間は長く、何度も全身が揺れた。
 ようやく呼吸が整うまでにはゆうに数分は要した。

「あー、もっともっと焦らしたかったのにな……」

 ニースはひたすら悔しがっていたが、もうそれに言葉を返す気も起きない。ただとにかく、次にハロウィンをこの男と過ごすことがあったら、絶対に大量のお菓子を用意しておこうと決意した。


***

ハロウィンの意味ない

2011.10.31

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