レム睡眠−1




今日は一日眠い日だ。
扇風機ではたりず、かといって冷房を付けるにはまだ早い梅雨の晴れの日の朝。
高い気温と湿度、それから目覚まし代わりにしている携帯のアラームで目を覚ます。
だめだ、起き上がれない。
ぼんやりとみえる外の明るさに嫌気しか感じられず、思わず目を背ける。
そもそも私は低血圧なのだ。
起きてすぐ立てだなんて、私にとっては理不尽以外のなんでもない。
うつらうつら、ぼやける部屋の景色にまた意識が遠のく。
あぁ、今日はダメな日。
利き手でけたたましく騒ぐアラームを止め、さらにスヌーズ機能を停止させる。
これはさぼりじゃない、休講だ。
自主的な休みだって時には必要だと思う。
だってもう高校生ではないのだから。
そうしてまた私は意識を手放す。





名前には時々、ひたすら眠たい日があるらしい。
高校生のころは気がつかなかったが、大学生になって彼女のそれを何度か経験している。
自分と彼女は違う大学に通っている。
二人とも一人ぐらしで、もちろん部屋も建物もちがう。
しかし、住んでいる場所はかなり近い。
住む予定の場所を早め早めから明かしていたこちらとしては、これは彼女の“デレ”というものだと思い、知った当時は歓喜したものだが、彼女の言い訳を聞いて考えてみたところ少しばかりがっかりしたのを覚えている。
彼女の言う通り、この東京という地の、しかも近くの大学に通っているとして、家賃や交通の便を考えるとおのずと大学生が一人暮らしに選ぶ場所なんて限られてくるものである。
つまりは偶然なのだ。

はぁ、と息をはくと、タイミングよく首筋を汗が通って行った。
雨が降ったわけではないのに空気がじめついている。
さんさんと降り注ぐ太陽は元気よくこちらの体力を削っていく。

通り道にあったファミマで一番安い2Lの水と、ハーゲンダッツを奮発して2つ買った。
スプーンも2つお願いします。

まぁ結局のところ住処が近いという事実は変わらないのだ。
そこは素直に喜ぶべきなのだろう。
さて、つきましたよっと。
オートロックのドアを開けてもらうため、部屋番号と呼び出しボタンを押す。

ピンポーン。
ガチャッ。

「あー起きとった?わしや」

ブツンッ。

「けど…え、」

1、2、3、4、5。
もう一度部屋番号と呼び出しボタンを押す。

ピンンポーン。
ガチャッ。

「そりゃひどいわ名前さ」

ブツンッ。
ウィーン、ガシャン。

「さーん…あいかわらずやな」

一言も発しず、こちらの話も聞かず。
機嫌の悪さマックスですといわんばかりの反応に苦笑する。
さきにラインをしておいたとはいえ、乗り気ではなかった彼女の意をくまなかったのが原因なのはわかっている。
開けてもらえたのでよしとしよう。
なんだかんだ、押しに弱い彼女は可愛いものだ。


鍵のしまらない内にマンションに入り、彼女の部屋のある階まで階段をのぼる。



[ 1/9 ]

[*prev] [next#]
[mokuji] [しおり]
clap
←top



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -