はくはく、と息を吸う市は、二人分の唾液が口から垂れ、頬は上気し紅色に染まり、瞳は苦しさから涙が溜まりとろりとしていた。
その姿に、水神はごくり、と喉を鳴らし、陶器のような白い首筋が目に入ると、思わず欲望のまま吸い上げた。

「ひゃあっん!」

市は普段にない感覚に、驚き身を捩じらせたが、水神にがっしりと掴まれていた為、全身に走る刺激を受け入れざるを得なかった。
下唇を噛むと、目を瞑り、じっと堪えることにした。
そんな市に遠慮することなく、白くまろい肌には、点々と華が咲き、その内、胸の突起に気付いた水神は、そこを攻めた。

「ひぅ……うぅっんっ!んっ!」

慣れない快感に声が抑えきれないくぐもった嬌声と、ぴちゃぴちゃと淫らな音が市の耳に響く。




(何で……こんな……っ)

突飛な水神の行動に市の思考は乱れ、与えられる快楽を甘受するしかなかった。

「んん……んっ……ぃあ!」

いつの間にかするり、と水神の右手が市の蕾を弄り、二本の指が同時に挿入された。
一度水神を受け入れていたせいで、難なく入り、中に放たれていた精液が潤滑油代わりになった。
二本の指は根元まで入り込むと内壁の奥を掻き回した。
するとある一点に指が触れた途端、身体に衝撃が走った。

「ひあああっ!」

腰が大きくうねり、銜えていた指を一気に締め付けた。
容赦なく、そこの一点を擦り上げられ、その律動に合わせ胸の飾りも吸い上げられた。
市はもう声を抑える余裕などなく、狂ったように喘いでいた。

「あっ!あっ!やっ……み、ずがっさまぁ!ああっ!あっ!―――――っ!!」

ほとんど初めてと言える快感の、その強烈さから市は呆気なく達してしまった。



放心状態から我に返ると、真っ先に飛び込んできたのは難しい顔をした水神と、その端整な顔にかかった白濁とした液体。
市は、自分がとんでもない失態を犯したことに気付いた。




市が固まっている一方、水神もまた、茫然としていた。
今、目の前では自分の生贄が顔面蒼白に震えているがどうでも良い。
解せないのは先ほどまでの自分自身の行動だった。

最初は、今まで来た生贄の中では割と気に入ったので、気まぐれに褒美をやろうと口吸いをしてやった。
本来はそこで終わるはずだった。
しかし、不慣れなのか、苦しげに吐息を漏らすその姿に、ぷつりと何かが切れた。
思わず喰らいついたその肌は甘く、薄紅の尖りを舌で突けば、華奢な身体が反り返り、自身の中の欲望に火がついた。
それは己の欲を満たすことではなく、もっと淫らに暴きたいという、今まで感じたこともない欲だった。



「も、しわけ……っ」


震えながら、そして失礼します、と断りを入れ、水神の頬に触れてきた。
その行為に、体の中心から大きく波打った感覚が走った。
少年の小さな手は、何かを拭いとるような動作で不思議に思った水神が自らの頬を拭ってみると、白い液状の物が手についていた。

「あ……あっ」

その行動に市は、痛々しい程怯えだした。

(こいつの……精液)

そこで、水神の理性は完全に吹っ飛んだ。
その日水神の寝室からは甘い声が止むことはなかった。




生贄として、この屋敷に来て二月が過ぎようとしている頃、水神に無茶な要求や乱暴に扱われることはなくなった。
寧ろ当初よりは幾分も良い待遇になったと言ってもいい。

今までは、水神の身の回りの世話か、伽の相手をし、不必要な時は部屋の隅に小さく纏まっているだけだった。
もちろん着物や寝具などなく、村にいた時のままのボロボロの着物一枚で、いつも床で寝起きしていた。
唯一与えられたと言えるものは水浴びの時間程度であったが、それすらもほんの一時しか許されなかった。
それが、あの失態続きのあの日を境に変わった。


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