結局炭酸飲料を全部飲むことはできず、水谷の帰るか、の一声で私はそれを鞄のなかにおさめた。水谷がサドルに座るのを確認してから、私も再度荷台にまたがる。なんなく自転車は前に進んだ。 「てかさー」 「なに」 「なんでみょうじ、今日は腰つかまねーの。いつもこしょこしょまでしてくんのに」 「…」 「危ないでしょ、ツカマリナサイ」 「…あー、うん」 「なに可愛い子ぶっちゃってんの」 「うるさーい」 「あ、怒った」 「…水谷もさあ、阿部みたいに、めんどくさいって、うざいって思ってる?」 「はあ?」 「私たち、友達じゃなかいのかなあ」 「…思うわけないだろ、てゆうか思ってたら後ろなんてのっけないし」 「…」 「遠慮しないでいいんだよ、てかされたくねー」 そうだよねえ、水谷。私もずっとそう思ってたよ。遠慮すんなよ、って思ってたんだよ。水谷は前を向いたまま、振り向かない。びくびくしながら腰に手を回す。水谷はその手を強引に掴んで、がっちり腰の周りを覆わせた。水谷は振り向かない。水谷は、振り向かない。今になってようやく目頭が熱くなった。どうして泣きそうになっているのだろう。水谷の背中におでこを押し付ける。じわじわ、白いシャツが周りの黒に溶けていく。どうして私は泣いているの。 「俺たち、友達だろ」 だって、友達でしょう? |