空高編


第1章 神子と家出



空高一族のは空高一族と結婚すべき、というのが代々伝わるシキタリである。
その理由は、もちろん空高の血筋を色濃く残す為。
神の力を代々伝承する一族には、人間離れした高潔さや、気品が求められる。
少しでも、人間に近付いてはいけない。
どのような時も、神の子たる自覚をもつように、それが空高の教え。
例えそのような力を継いでいなくとも。
自分が他の人と変わらない、ごく普通の人間でも。
人間として生きるコトは許されない。
それが空高一族だった。
純血を守る空高一族。その血筋を維持する為に、貢献した3つの少数一族があった。
荒雲一族。
卯雲一族。
卯時一族。
この3つは、元々は一つの一族だった。
それぞれの能力に合わせて、3つの一族に別れたと言われている。
そして、その根本ある一つの一族が、空高一族と言われている。


第5晶 : 師弟関係


荒雲一族は、特別戦闘能力に特化した一族だった。
自慢の腕力を駆使し、巨大な武器を使って敵を投げ払う。
その為好戦的で、荒々しい一族が多い。
荒雲雷希は、そんな荒雲一族の一人だった。
初めて雷希と翼が出会ったのは、今の時間軸からおよそ5年前。
空高一族の守護役として力を発揮することの多かった荒雲一族から、翼の将来の守護役にと声がかかったのが雷希だった。
そして、将来の守護役として、翼が雷希の稽古をつけるようになったのが始まりである。
雷希の、初めて抱いた翼への印象は。

「お前が荒雲雷希か。随分と小さい奴だな。」

最悪だった。
同年代よりも身長が小さめであることは自覚していたし、それは雷希にとってもコンプレックスだった。
まさか、初対面で堂々と人のコンプレックスを指摘されるとは誰も思わない。
それが「神の子」と呼ばれるお方からとなると尚更。
頭に来て、初めて出会った将来守護すべき男に放った言葉は。

「あんたこそ、女みてーな顔してんな。ほんとにチンコついてんのかよ。」

まさに売り言葉に買い言葉。
雷希の言葉に周囲の大人は当然顔面蒼白。
なんせ相手は神の子なのだ。
国の、世界の象徴ともいえる男、いずれは自分が守護すべき男への侮辱。
それを聞いた翼は、きょとんとした顔を浮かべると、途端にぷっと吹き出し、大声で笑いだした。

「ははは、女みたいな顔、か。正にそうだ。私もそれは酷く気にしていてな。」
「は?」
「酷い言葉を言ってしまってすまない。お前は正直な男だな。気に入った。名前は?」
「あ…あらぐも、らいき。」
「ライキか。気に入った。よし、今から稽古をつけよう。私と来い。」

清々しい程眩しい笑顔を浮かべた少年は、雷希の腕をつかむと有無を言わさず外へと引きずりだす。
呆然としていると、翼は外にかけてあった、稽古用の木刀を雷希へと投げた。

「わわっ、」

小さく悲鳴をあげながら、大きな木刀を受け取る。
ずっしりと確かな重みがあり、呆然としながら翼を見つめる。
空は快晴。
春一番と呼ばれる強風が吹きあがり、縁側に咲いていた桜の花が綺麗に舞った。
桃色の花弁に包まれる少年の姿はあまりに眩しくて凛々しくて。
なんて眩しい人なのだろうと。
それが、彼に抱いた第二印象だった。

 


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