空高編


第1章 神子と家出



世界に一番初めに降り立ったのは一人の神だった。
その神は、世界そのものを創り上げたと言われている。
神から産み出された八人の新たな神々は、神に命じられ、神が創った世界を完成させた。
一人は空気や空間を作り上げた。
一人は時の流れを生み。
一人は大地を作り。
一人は植物を実らせ。
一人は雨を降らせ、水を作り。
一人は生き物を産み出し。
一人は心を産み出し。
一人は知識を与えた。
創造神である最初の神と、その神によって産み出された八人の神々。
この八人の神々の事は、通称八代神と称されている。
その後も神により、八代神の他にも様々な神々が産み出された。
現在も、神々の力により世界は保たれているという。


第1晶 ハジマリ


ガタン、と大きな揺れを感じて目を覚ました。
昔学んでいた神暦時代の内容をぼんやりと思い出していたらしい。
元々あまりカミサマというものを信じてはいない。
その為か、夢から覚めるとその内容はすっかり抜け落ちてしまっていた。
夢の中ではその内容をしっかりと思い出していたはずなのに。

(まぁ、どうでもいいか。)

思い直して欠伸を一回。
埃っぽくてカビ臭いこの空間は、決して居心地が良いとは言えない。
それでも心地よい揺れと真っ暗な状態が合間って、非常に眠気をよく誘う。
また眠気が漂って来て、もう一度欠伸をする。
女性の声で放送が流れ、間もなく目的の地へ到着する旨が案内される。
ガコン、と大きな音と共に全体が揺れると、それを最後に今までわずかにあった揺れが停止した。
扉へ耳を傾けると、人の話し声が聞こえ始める。
今だ、とタイミングをはかりそっと扉を開けた。
数日ぶりに浴びた太陽の光が眩しく、思わず顔をしかめるが止まったままでいる訳にはいかない。
部屋から出て来た乗客の中に何食わぬ顔で紛れると、そのまま搭乗口を出た。
階段を下り、港町を抜けてから、自分が先程まで乗っていた船を眺める。
空然の地と、柳靖の地との間を行き来する船は一日のうちほんの数本だけだ。
無銭乗船は後味悪かったけれども仕方ない。
その分、カビ臭い倉庫室で数日なんとか凌いだし、だからといって倉庫のものを食べてもいない。
それで多めに見て欲しい位だ、とつい思ってしまう。
お金を払って乗りたいのはやまやまだが、そうすると目立ってしまう。
目立ってはいけない事情が自分にはあった。
街の中へと溶け込み、家電専門店のショウウィンドウの向こうに、何台かテレビが並んでいる。
テレビの中の小さな若い男は、困惑した顔で今日のニュースの内容を読んでいた。
どうやら、とあるお偉いさんが5日位前に突然姿を眩ましたらしい。
誘拐とか、神隠しとか、様々な説を豚のように肥えた専門家らしきおっさんが語っている。

「神隠しなんか…馬鹿馬鹿しい。」

吐き捨てるように呟くと、マントについているフードを更に深くかぶり直し、街の外れへと向かった。




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