探していたもの


「あ、五条悟」


「びっ、くりした。何でフルネーム?悟でいい。ていうか俺は苦手なんじゃなかった?」
「サングラス越しなら大丈夫」
「ふぅん。なら悪くないってどう言う意味?」
「呪力の波長が合わない人とは話せない。気分が悪くなる」

名前が気配もなく後ろから話しかけて来たのでここぞとばかりに疑問をぶつけさせて貰った。
成る程ね。人見知りというか、初対面だと波長が掴めないから避けてるってところかな。
俺は合格らしい。
何故か少しだけ口元が緩んだ。

「悟。傑見なかった?」
「あ?任務でいねぇよ」

結局傑かよ。話しかけられるの初めてだから何か用だとは思ったけど。
あれ?俺何でがっかりしてんの?何の用だったら良かった?
何かコイツと関わると感情がジェットコースターみたいで忙しい。

「傑に何か用事?」
「そう!見てコレ!出来たんだ!!」
「は?」

いつもの気怠げな金色の瞳をこれでもかと見開いてキラキラ輝かせながら俺を見上げている。え、めっちゃかわいい、?
は?ちょっと待て。おいおい、まじ?俺まじなの?
一旦落ち着こう。いや、今のは誰が見ても可愛いんじゃねぇの?男はギャップに弱い生き物だしな?うん。それだ。

「ーー悟?聞いてる?」
「あー聞いてる聞いてる!で何これ?」
「呪霊。私の呪力で包んでるから味もしない筈!早く傑に見せたい」
「へぇ?すげぇじゃん」

五ミリほどの球体になっているのは確かに呪霊だと六眼が告げているが俺以外が見ても誰も呪霊だとは気付きもしないだろう。
名前は華奢な掌の上に乗せた呪霊を愛おしそうに見つめていた。
ん?睫毛も瞳と同じで金色なんだな。

「名前もそれ呑み込むの?」

そうだよと笑って球体の一つを取るとピンクの薄い舌に乗せて飲み込んだ。

「やっぱり味しない!」
「え、オマエその舌…」
「舌?あぁ私蛇飼ってるの」

見えた薄い舌はぱっくりと二つに割れていた。漫画などで見たことはあったが実際にスプリットタンを見るのは初めてだった。
なんつーか本当に変わった女。傑風にいうとぶっ飛んでるだったか。あ、思い出した。そういえば。

「傑とキスしてたのは何で?」
「何で?…普通に生理現象」
「あ、うん。そうなんだ」

んーなんだろう。天然なの?倫理どこいった?
姉弟はそういう事しちゃいけないって教わらなかったのだろうか。
ん?なら受け入れてる傑の方がぶっ飛んでるよな?
こんな女可愛いと思った俺も大概イカれてるんだろうけども。
改めて見ると綺麗なんだよなぁ。
傑と同じ色の髪は任務帰りだからだろうか、緩いポニーテールにされてて白い細い首がエロい。ぱっちりとした金色の瞳にスッとした鼻、薄くて小さい唇。身長は傑より少し低いくらいでスタイルもいい。短い学ランとスカートが細い腰と長い素足を引き立てている。

「あれ?二人が一緒なんて珍しいね?」
「っ傑!お疲れ様!見てこれ!」
「お疲れ様。姉さんどうしたの?」

傑を見た名前は抱きついた後、先程の説明をしている様で傑は驚いて目を見開いている。あ、またキレるな、これは。

「姉さん無茶するなって言ったの忘れたのかい?」
「今回は怪我してない」
「はぁ。そういう事言ってるんじゃないって分かるだろう?」
「私はイカれてるからいい。傑には辛い思いはして欲しくない」

イカれてる自覚はあるのか。
でも先程のキラキラした笑顔を思い出すと少し可哀想に思えた。

「傑の為なんだから少しは褒めてやったら?」
「悟は黙ってて。姉さんは私の為だと言えば何でも許されると思ってるんだ。蛇の時だってそうだ。何度死にかけたと思ってる?その度に私が何度も後悔しているの分からないの?」
「…ごめん。でも」
「でもじゃない。もっと自分を大切にしろ」
「ん…私任務行ってくる」
「ちょっと、まだ話は…はぁ。まったく」

傑が伸ばした腕は空を切った。
するりと俺と傑を駆け抜けて行った。
蛇?さっき飼ってるって言ってたやつの事だろうか?
一瞬だけど泣いている様に見えた。そんな顔も出来るのかって思うと胸がきゅうっと締め付けられて痛い。そっか痛いのか。
この気持ちは経験は無いけど知識として何となく知っている。
傑の為にキラキラ輝く瞳もしゅんと伏せられた瞳も、俺にも向けて欲しいと思ってしまったんだから、これはもうそういう事だろ。

「傑、オマエの姉ちゃんの事好きみたい」
「は?…それ本気なの?」
「分かんねぇ」
「…本気なら姉さんがまた馬鹿な事しないように縛っておいてくれよ」
「え?口説いていいわけ?オマエ名前の事好きなんだろ?キスしてたじゃん」
「あれは姉さんの為だよ。私だって姉とそんな関係は間違ってるって分かっているよ」

訳分かんねぇ。
キスするのが姉の為なの?
なら俺が代わっても良いって事?
何にせよ、苛ついてたのも好きだからだと分かればスッキリした。俺が女に嫉妬出来るのも驚きだし、まだ今は分かんないけどきっとこの気持ちは本気ってやつだろ。

「ま、姉さんの一番は私だから頑張ってくれよ」
「オーケー。俺のもんになっても後悔すんなよな」
「出来るものならね?それと泣かせたら悟でも許さないから」
「どろっどろに愛してやるよ」
「へぇ?悟の口からそんな言葉が聞けるとはね。でも残念ながら姉さんの三番目は七海だよ」
「はあ?なら二番は…チッ。硝子かよ」
「まぁそれくらいで諦めるなら姉さんは手に負えないと思うけど?」
「上等だよ。義兄さんって呼ばせてやるよ」
「…それは飛躍し過ぎだし、話変わってくるからやめて」



  
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