考える事は一緒ですよ


「…傑もテイクアウトして来たの?」
「ちょうど名前が好きそうなお店があってね。ククッ、本当に私達は仲良しだよ」
「考える事は一緒ってワケね」

帰り道に名前が好きだと言っていた店に頼んでいた料理を受け取ってから高専に戻って来たら傑も同じ事をしていたらしい。
本当に僕もだけど傑もこんなに一途に愛を向けるなんて事があるとは夢にも思わないよね。名前が笑ってくれるなら何でも出来るし何でもしたい。

車だと二十二時過ぎそうだなと考えてまぁ今日くらいはいいかと傑と家のリビングまでトんだ。

「ただいまー!」
「悟、静かに」
「え?…かっわいい…」

ソファーにちょこんと座って背もたれに頭を預けて眠っていた。
首が少し反っているからか少しだけ開いた口が愛おしい。手には携帯を握っていて僕達からの連絡を待っていてくれたのだろう。
それにしても僕んちのソファーは眠くなる魔法でもかかってんの?連日でこんな可愛い生み出せるってすごくない?
ここでも考える事は一緒の様でちゅっと両頬に傑と唇を落とした。

「ん…あ、おかえりなさぁい」
「え……」
「名前、それ…」

ゆるゆると瞼を開けた名前に愕然として言葉が出てこない。
彼女の蒼く輝く瞳は紛れもなく六眼だった。

「あ、コンタクト外したんだった。びっくりするよねぇ。私も驚いちゃったよ。そうだね、ご飯の前に先に話してもいいかな?」
「ごめん、ちょっと衝撃すぎて…先に話してもらっていいかな」

名前が眠っている間に亡くなった両親と話した事を説明してくれた。
彼女の両親は間違っていなかった。その力は危険過ぎる。封印していなかったら今頃、胎として使われているか、呪詛師の手に堕ちているか、どれにしても地獄だったろう。

「結か…悟何か知っているかい?」
「…聞いた事ない」
「そうか…名前は私の呪霊操術も使えるの?」
「流石に傑のは試し様がないから解らないけど、多分使えるよ」
「ねぇ、僕のは試したって事?!」
「うん。この瞳のお陰で呪力の流れっていうのかな?何となく使い方が解るの」

名前は手のひらを僕に差し出して触ってと言った。恐る恐る手を乗せると間に確かに無限がある。あぁ、何て事だ。これはあってはならない。

「っ!名前これは絶対使わないって約束して!!」
「悟、落ち着けよ」
「ごめんね…私が勝手に縛りを二人と結んでしまったから」
「…代償は?」
「え?」
「こんな力、何の犠牲も無く使える訳ないだろ!縛りの代償は何かって聞いてるんだよ!!」
「悟!少し落ち着けって言ってるのが分からないのか!」

ハッとして名前を見ると悲しそうに微笑んで蒼い瞳がゆらゆらと揺れていた。

「あ…名前、僕…ごめん」
「…代償は私の命。二人にもしもの事があった時は私が代わりに死ぬだけ」
「そんな…今すぐ解いて」
「それは無理なの。この命を懸けた結は一度しか使えないみたい。ごめんなさい…私が二人を愛してしまったから…私今日は帰、いや自分の部屋に行くね」

バタバタと走り去った名前の背中を呆然と見つめるしか出来なかった。
彼女を地獄に巻き込んでしまった。
六眼と無下限呪術の抱き合わせがこの世にもう一人いると知れたら?間違いなく名前は普通の生活なんて出来ないだろう。これを背負って生きるのは僕だけでいいんだ。
…こんな事になるなら好きにならなければ良かった。愛さなければよかった。

「悟が考えている事は解るし私も同じ気持ちだよ。でもそれが無理だから私達は付き合ったんだろう?」
「んなの分かってる!!」
「…名前は初めて愛してるって言ったんだ。私は何があっても彼女を諦めないし守るよ」
「愛、か。こんな事になるなら知らないままでいたかったよ」

そうだ。こんな思いをするくらいなら知らない方が幸せだったよ。知ってしまったからもう元には戻れないって解ってんのに。
僕もどうしようも無い程に愛してるんだ。諦めれる訳がない。それでも名前には綺麗な世界で笑っていて欲しかった。

「私は死なないようにもっと努力する。それで名前も守る。悟はどうする?君にしか出来ない事があるだろ。…ごちゃごちゃ考えるのは辞めろって君が、私に教えたんじゃないか。しっかりしろよ!!」
「傑……俺はいつまでたってもオマエがいないと何も出来ないままだな」
「大丈夫。二人なら何でも出来るさ」
「…僕がする事分かるよね?傑はそれでいいの?」
「それが一番だろう?それに名前に何もなくても遅かれ早かれそうしていた筈だよ」

名前が危険に晒されるとか、狙われるとか死ぬだとか、そんな事はもう考えない。
僕と傑がいるんだからそんな未来は絶対有り得ないんだ。名前、傷付けて泣かせてごめん。
居なくならないって"約束"したもんね。


僕も決めたよ。二度と悲しい顔はさせない。





  
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