デートしよう!


「おぇーさん、一人?俺らと遊ばない?」
「私、芸能事務所の者なんですがーー」
「めっちゃ美人ですね!よかったら連絡先教えてくれないかな?」

伊地知から電話が入ってちょっと離れたらこれだよ。危うくスマホ握り潰すとこだった。
いつもロングドレスが多いからミニスカート姿見たいなって思って勝手にクローゼットから選んだ服を着てもらったのはいいけど、男共の視線がうざい。伊地知後でマジビンタ。
名前も慣れているのかあしらい方は完璧で相手にもしてないけど、ああやって囲まれてるの見たらイライラするよね。
スーツの男が近づいてきて他の男共が散っていった。

「名前さんじゃないですか!お久しぶりです!相変わらずお綺麗ですね。そろそろ移店する気にならないですかね?」
「あ、久しぶりだね。残念ながらその気はないよ。寧ろ私、来月いっぱいで夜あがる事にしたから勧誘しても無駄だよー」
「え!!そう、なんですか。残念です。来月中にーー様とお店伺わせていただきますね!」
「ありがとう。私もママに会いに行かせてもらうね」
「名前」
「あ、悟。電話もう大丈夫なの?」
「うん、終わったから行こう」
「待ち合わせでしたか、お邪魔してすみません。名前さんまた今度ー!」

とこかのクラブの黒服かスカウトであろう男は手を振って去って行った。
え?夜あがるって、辞めるって事だよね?
今まで名前がプライドを持って頑張って来ていたのを知っているから複雑な気持ちになる。僕達の為なの?

「…辞めちゃうの?」
「うん。年齢的にもそろそろかなって思ってたし、一番いい時に辞めたいなって。悟と傑には凄く良くして貰ったからありがとうね」

金額考えたらゾッとするよねーとケラケラ笑った名前。お金なんてどうでもいい。
名前がキラキラと輝いているところを見るのも好きだったから他の客に着いても頑張れってこの僕が嫉妬しなかったくらい。
どんな人にでも何を言われても仕事に一生懸命向き合う彼女は強くて美しかった。

「…僕達のせい?」
「え?違うけど…あぁ。やっぱり彼女が夜の職業だなんて嫌だったよね。でも来月まで、待ってく」
「嫌なんて言ってないでしょ?僕は名前が頑張ってるの知ってるから、僕達の所為で辞めるなら考え直して」
「悟……すき」
「え?今、なんて?」
「あっ!私ここの新作気になってたんだー」

顔を真っ赤にした名前は足早にショップに入って行った。
今、好きって言った?よね?
かっっっわいい。なにその不意打ち、どこで覚えて来たの?営業トーク?
まぁ、名前は色恋で引っ張る営業スタイルじゃないのは勿論知ってるけど、今のは最高級のボトル秒でおろしてるよね。
手で顔を仰いでる彼女がガラス越しに見えて可愛いが止まらない。
辞める理由は傑がいる時にちゃんと聞こう。
今は名前との初デートを楽しまなくちゃね!



「…ねぇ?私が言うのも何だけど、金銭感覚大丈夫?」
「え?これを着た名前と一緒にディナー行くの良くない?」
「どんな高級店に行こうとしてるの。私が夜の仕事してるからって気を遣わないでね?なんなら私ご飯作るよ?」
「んーそれも魅力的だけど、今日はだぁめ!夜は三人でご飯行くよ。やっと付き合えて僕も傑も浮かれてるんだよ」

記念日だよ?とサングラスをずらして上目遣いで名前を見ればふいっと顔を逸らして耳を赤く染めた。チョロ可愛い。
あ、傑から連絡だ。
"終わったから、そっち向かうよ"
流石傑、仕事が早い。なし崩しというか押し切った感じでお付き合い始まっちゃったからさ、ちゃんとやり直させてよ。

試着室から出て来た名前はまるでモデルか女優のようだった。
名字様!素敵です!と彼女の担当も興奮気味に言っている。僕のセンスが良過ぎて自分が怖いよ。
繊細なレースのドレスは彼女の曲線を拾ってスタイルの良さを際立たせている。
はぁ。鎖骨舐め回したい。

「んー私胸あんまないからもう少し、」
「いや、これにしよう。似合ってる」
「悟が言うならそうなんだろうけど、ちょっと」
「お姉さん、コレ着て帰りまーす!」
「名字様本当にお似合いですよ」
「もう…分かった。これにする」
「私もそれが良いと思うな。凄く綺麗だよ」
「え?傑?仕事終わったの?」
「会いたくて早く終わらせて来たんだ」
「ふふっ、お疲れさま」

ふわりと微笑んだ名前の周りには花が舞っているように見えた。何そのお疲れ様。明日僕も絶対言ってもらう。
ちょっと待っててと彼女に伝えて広い試着室に傑と入った。

「お疲れー!スーツありがとね」
「どういたしまして。あぁ、何か緊張するな」
「僕もだよ。ま、でもちゃんとしときたいしね」
「そうだね。喜んでくれるといいね」




  
back
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -